休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

クナッパーツブッシュ/ワーグナー名演集

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20190401(了)
クナッパーツブッシュワーグナー名演集
楽劇「神々のたそがれ」
 ①夜明けとジークフリートのラインへの旅             12:36
 ②ジークフリートの葬送行進曲                                      7:27
舞台神聖祭典劇「パルジファル
 ③幼な子のあなたがおかあ様の胸に抱かれていたのを見た 5:48
楽劇「ヴァルキューレ
 ④ヴォータンの別れ(さようなら勇ましいわが子)               17:35
楽劇「トリスタンとイゾルデ
 ⑤前奏曲                                                               10:12
 ⑥イゾルデの愛の死(優しくかすかな彼のほほえみ)           7:01
  ハンス・クナッパーツブッシュ指揮/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
 キルステン・フラグスタート(ソプラノ)③
 ジョージ・ロンドン(バス・バリトン)④
 ビルギット・ニルソン(ソプラノ)⑥
 録音:①②=1957年10月、③=1956年6月、④=1958年6月
     ⑤⑥=1959年11月
 1997年/CD/オペラ&管弦楽/Decca Record/キングレコード/邦盤/中古
 <★★★★△>
カラヤンの「パルジファル」の時に、クナッパーツブッシュに‘武骨’という言
葉を使ってしまった。今更ながらちょっと後悔気味・・・
ここでのワーグナーはまったく世評の通りで、まさに“自家薬籠中の物”。
(なーんてね。こんなの、借り物言葉)
この古めのCDはこれだけのレコーディング・セッションものなのか、全曲録
音からのピックアップなのか、よくわかりませんが、とにもかくにもものすご
い演奏。
ちょっと悪い予感がして、解説者の名を見て、ああやっぱりか。宇野功芳氏。
褒めるのはいいんだけれど、オーバーなんだよな。フルヴェンとこの‘クナ’
を天才と呼ばずして誰を天才というんだ!なんていう話から入ってくる。フル
トヴェングラーのベートーヴェンと‘クナ’のワーグナー・・・
これに毒されないように、下手でもアホでも自己流で書きます。
いや、天才に異論はないのです。これこそがワーグナーでしょう、理屈やな
いね、感性としか言いようがないんだが、この音楽のでかさ!!! 完全無欠とし
か言いようのない嵌り方。武骨なんてとんでもない。テンポは確かに若干遅
いかもしれないけれど、これがきっと正しいんだよ。しかしながら継げる人は
いないし、真似する人も多分もういないから、時代に取り残されるように録
音だけが残っていく。カラヤンさんもかなわない。
このCDでは、特に④⑤⑥の音(音質の意)がいい。
④では、宇野氏は不満のようだけれど、ワタシはロンドンさんの声も歌い方
も結構気に入りました。バスだと思ってましたがバス・バリトンショルティ
‘リング’にも入っていた気がする。印象はよくなかった。なのに、何十年も
たったらこれだもんなぁ。若い時、なに聴いてたんだろう。
ウィーン・フィルも色っぽくもパワフル。長いトラックもあっという間に終わる。
⑤⑥になると、音もぐんとよくなる。「トリスタンとイゾルデ」は全曲をちゃんと
聴いたこともないんですが、この2曲はさすがに知っております。そしてこう
いう音楽の柄の大きさ、巨大なセクシーさを何と表現していいものやら。ニ
ルソンさんもほんとに素晴らしい。
今、いいと思えるのを良しとしなきゃしょうがない。こんなのに20歳代で恍惚
とする感性はワタクシメにはなかった・・・
③が、カラヤンの「パルジファル」と比べてみる気になったもの。そもそもこの
CDを手に入れてみる気になった理由。
名歌手の誉れ高かったフラグスタートさんもやっぱりワーグナー歌手やね。
カラヤン盤のヴェイソヴィチの声質がぜんぜん違うし、カラヤンの演出なん
でしょうが、わりと襞のある(≒悩みのある)歌い方に対して、フラグスタート
さんのは思った以上にストレート(悪い意味じゃありません)、かつ力強い。
ワタシはヴェイソヴィチさんの声のほうが好きなんじゃないかな。
ただし、④⑤⑥ほどオケの音が良くない。
①②なども宇野氏はべた褒めなんだが、ワタシはそうはいかない。以前にも
何度か書いていることだけど、1957年~1958年に録音技術がグンとばかり
にあがっているので、その前のものと相当差がある。
 (確か、ショルティ「リング」の『ラインの黄金』は1958年の録音だったん
  じゃなかったか)
全体にパワーは感じるものの泥んこで、低音が特にボワーとして何が何だ
かわからない。管では、オーボエチャルメラ度がひどく、ホルンの古臭さも
我慢するのが大変。弦などすごくよく歌っているのがわかりますけどね。だ
からとても共感しているというか、とても気持ちの入った演奏であることなら
わかる。聴きなれましたけどね。ちょっと残念。

始めに使った“自家薬籠中の物”なんて言葉、やっぱり気色悪い。要するに
ワーグナーやって、こんなに様になる指揮者はいない、まさに空前絶後なん
だろうってことを言いたい。その確信、そのゆるぎなさ・・・
先月、長い時間をかけて聴いたカラヤン盤「パルジファル」が色褪せるかとい
うと、そういうことでもないんだ。