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カラヤンの「パルジファル」の時に、クナッパーツブッシュに‘武骨’という言 |
葉を使ってしまった。今更ながらちょっと後悔気味・・・ |
ここでのワーグナーはまったく世評の通りで、まさに“自家薬籠中の物”。 |
(なーんてね。こんなの、借り物言葉) |
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この古めのCDはこれだけのレコーディング・セッションものなのか、全曲録 |
音からのピックアップなのか、よくわかりませんが、とにもかくにもものすご |
い演奏。 |
ちょっと悪い予感がして、解説者の名を見て、ああやっぱりか。宇野功芳氏。 |
褒めるのはいいんだけれど、オーバーなんだよな。フルヴェンとこの‘クナ’ |
を天才と呼ばずして誰を天才というんだ!なんていう話から入ってくる。フル |
トヴェングラーのベートーヴェンと‘クナ’のワーグナー・・・ |
これに毒されないように、下手でもアホでも自己流で書きます。 |
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いや、天才に異論はないのです。これこそがワーグナーでしょう、理屈やな |
いね、感性としか言いようがないんだが、この音楽のでかさ!!! 完全無欠とし |
か言いようのない嵌り方。武骨なんてとんでもない。テンポは確かに若干遅 |
いかもしれないけれど、これがきっと正しいんだよ。しかしながら継げる人は |
いないし、真似する人も多分もういないから、時代に取り残されるように録 |
音だけが残っていく。カラヤンさんもかなわない。 |
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このCDでは、特に④⑤⑥の音(音質の意)がいい。 |
④では、宇野氏は不満のようだけれど、ワタシはロンドンさんの声も歌い方 |
も結構気に入りました。バスだと思ってましたがバス・バリトン。ショルティの |
‘リング’にも入っていた気がする。印象はよくなかった。なのに、何十年も |
たったらこれだもんなぁ。若い時、なに聴いてたんだろう。 |
ウィーン・フィルも色っぽくもパワフル。長いトラックもあっという間に終わる。 |
⑤⑥になると、音もぐんとよくなる。「トリスタンとイゾルデ」は全曲をちゃんと |
聴いたこともないんですが、この2曲はさすがに知っております。そしてこう |
いう音楽の柄の大きさ、巨大なセクシーさを何と表現していいものやら。ニ |
ルソンさんもほんとに素晴らしい。 |
今、いいと思えるのを良しとしなきゃしょうがない。こんなのに20歳代で恍惚 |
とする感性はワタクシメにはなかった・・・ |
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③が、カラヤンの「パルジファル」と比べてみる気になったもの。そもそもこの |
CDを手に入れてみる気になった理由。 |
名歌手の誉れ高かったフラグスタートさんもやっぱりワーグナー歌手やね。 |
カラヤン盤のヴェイソヴィチの声質がぜんぜん違うし、カラヤンの演出なん |
でしょうが、わりと襞のある(≒悩みのある)歌い方に対して、フラグスタート |
さんのは思った以上にストレート(悪い意味じゃありません)、かつ力強い。 |
ワタシはヴェイソヴィチさんの声のほうが好きなんじゃないかな。 |
ただし、④⑤⑥ほどオケの音が良くない。 |
①②なども宇野氏はべた褒めなんだが、ワタシはそうはいかない。以前にも |
何度か書いていることだけど、1957年~1958年に録音技術がグンとばかり |
にあがっているので、その前のものと相当差がある。 |
(確か、ショルティの「リング」の『ラインの黄金』は1958年の録音だったん |
じゃなかったか) |
全体にパワーは感じるものの泥んこで、低音が特にボワーとして何が何だ |
かわからない。管では、オーボエのチャルメラ度がひどく、ホルンの古臭さも |
我慢するのが大変。弦などすごくよく歌っているのがわかりますけどね。だ |
からとても共感しているというか、とても気持ちの入った演奏であることなら |
わかる。聴きなれましたけどね。ちょっと残念。 |