| 20200909(了) |
| バイロイトの長い坂道 ワーグナー物語/ ひの まどか作 |
| *プロローグ |
| 1.逃亡者 |
| 2.黄金のミュンヒェン |
| 3.ビューロー夫妻 |
| 4.ミュンヒェン追放 |
| 5.トリープシェン、内と外 |
| 6.バイロイトへの道 |
| 7.バイロイト部隊 |
| 8.リハーサル |
| 9.《ニーベルングの指輪》 |
| 10.ベニスの落日 |
| 11.その後のドラマ |
| * そして、いま |
| 1984年(昭和59年)/伝記/子供用/単行本/リブリオ出版/中古 |
| <★★★★> |

| 職場であるコミュニティセンターの片隅に本棚があって、要らなくなった本 |
| が2000冊かそこいら置いてあります。小説が多いが、種々雑多。古いも |
| のが多いけれど、わりと新しいものも少しはある。コミュニティ・スペース。 |
| 自由に読んでいいし、欲しけりゃどうぞお持ち帰りください、というもの。 |
| これはその本棚で見つけて、持ち帰って読み始めたものです。裏表紙の内側 |
| にシールが貼ってあって、〇〇町立(市立じゃない!)図書館/リサイクル |
| 図書(昭和59年)と書いてある。 |
| ひのまどかさんはヴァイオリニストで音楽系のライター。 |
| リブリオ出版なんて知らない。 |
| 児童書では初めての 音楽家による全巻現地取材 |
| 「作曲家の物語シリーズ」(小学校上級以上向) |
| その第6巻がこれで、次はまだ出ていなくて、予定がブラームス。 |
| 既刊は、チャイコフスキー/バッハ/ベートーヴェン/ドボルジャーク/シューベルト。ドボルザークだけ |
| があのメキシコに行かれたヴァイオリニストの黒沼ユリ子さんが書いていて、 |
| そのほかはこのひのまどかさん。 |
| どれもタイトルを見ると単純な伝記じゃなく、それぞれの作曲家の「ミソ」 |
| に当たるものを集中的に描いている「伝記小説」のようで、児童書にさほど |
| 拘っていないよう。意図があってヨロシイ。 |
| 本作に取り掛かかるときはそこまではわからずに、単純な伝記だと思ってい |
| いました。 |
| で、読み始めたら、ワーグナーはもう50歳になっており、とっくに我儘の |
| 限りを尽くしているじゃないですか。 |
| おぉ、いきなりかい!・・・でした。 |
| 偉大なる自己中天才たるリヒャルト・ワーグナー以外の主な「出演者」は、 |
| フランツ・リスト(パトロン的。のちに義父になる。年は近い) |
| ルートヴィヒⅡ世(バイエルン王国の君主を嫌々やっている) |
| ハンス・フォン・ビューロー(妻のワーグナーとの不倫を知りつつの大指揮者) |
| コジマ(リストの娘、ビューローの妻、のちワーグナーの献身的妻) |
| ハンス・リヒター(ワーグナーの徒弟兼指揮者) |
| ウィルヘルムⅠ世(プロイセンの皇帝) |
| 我儘とは聞いていましたが、ここまであきれた贅沢好きだとは知らなかった。 |
| まあ作曲家のことなんて、少数を除いて伝記は読んでいないし、人となりも |
| 案外知らないです、ワタシは。 |
| ひのまどかさん独自の考え方や想像によるものがどんだけなのかわかりませ |
| んが、パトロン、ルートヴィヒⅡ世自身のことや、彼とワーグナーとの付き |
| 合い方、ワーグナーとビューローの関係やワーグナーとビューローの妻コジ |
| マとの付き合い方などなど、史実がもとになっているんでしょうが、とくに |
| この二人にゃ仰天。恥ずかしながらロクに知らないことばかり。 |
| 今まで聞いたことはあったような気はしてましたが、みんな絶句ものの関係 |
| だったんですね。勿論、「ここまであきれた」なんて書き方はされていませ |
| んけどね。 |
| そう言えば、、、ブラームスの作品を聴く中で、確かハンス・フォン・ビュ |
| ーローの名が大物指揮者として何度も出て来ましたっけねぇ・・・ |
| ルートヴィヒⅡ世もビューローもコジマも、この大仰な楽劇の世界に、ある |
| 意味ピッタリというか、みんなそう、そろいもそろってヘンテコリン。 |
| 神々の世界を引きずり下ろして、目の前で人間同様にジタバタするのを描く |
| 「リング」、あっけにとられるようなストーリーを、ほぼほぼ変人たるワー |
| グナーがまず本に書いた。 |
| 書かれた当時はとても上演できるような代物じゃない、遠い夢だとご本人す |
| ら考えていたものが、バイエルンの問題大ありの若き皇帝がワーグナーの熱 |
| 烈なパトロンになるに及んで、じわり動き出す。 |
| バイロイト祝祭劇場の建設と畢生の大作『ニーベルンクの指輪』4部作(俗 |
| にいう「リング」)の上演に漕ぎつけるまで、さまざまな(苦労と贅沢に彩 |
| られた)紆余曲折がある十数年が「長い坂」。 |


(舞台になんだか変なものがある。これが大きなミソの一つ)
| 当時としては斬新なライトモチーフに彩られた複雑で大きなオーケストレー |
| ションを伴わせ神々の世界を描いた巨大楽劇と、ワーグナーの超変人具合が、 |
|
ワタシの頭の中で、結局のところうまく合致しない ― 筆の速さなんぞ驚異 |
| 的でこれを天才と呼ばずしてなんと呼ぶ ― 融け合わないままでしたが、こ |
| ればっかりはしょうがないっスね。 |
| そうそう、手紙魔!何千通! |
| これ、いまなら、まあ強引な情報の押し付けであって、LINEなんかあっ |
| た日にゃあ、エライ大変なやり取りだったはず・・・(無意味な空想です) |
| ラスマエの章では、ワーグナーが急死したあと、妻コジマが、まるで夫の意 |
| 思を継いだかのような働きをしたことが語られます。これなども全く知りま |
| せんでした。 |
| おしまいは著者が由来の場所(ルートヴィヒⅡ世ゆかりの有名な城なども) |
| 訪ねてまわり、さまざまの感慨を付け加える。1983年、ワーグナーの没後、 |
| ちょうど100年。 |
| 続きの章として並んでいるこの部分を読んでいると、やはり伝記部分に力が |
| 入っていて、小説部分は目立たないようにしたんだと考え直しました。 |
| 祝祭劇場の継承や演奏の変遷の歴史なんかにも少し触れられています。 |
| ちかごろったって大分前ですが、変わった(現代的)演出も観たことがあり |
| ます、ちゃんとじゃないですが。神々がネクタイをして出て来たりしていた。 |
| ワタシは「ワグネリアン」ではありませんが、この「超」が付く時代錯誤的 |
| 世界観(あまりいい言葉ではないですね)にハマる人びとが、いまだに相当 |
| 数生まれ続けていることには、今までの一定の理解がもう少しだけ深まった |
| 気がしないでもありません。著者も実はワグネリアンなのだとあとがきで |
| 「告白」しておられます。 |
| 一方、ワーグナーの音楽を聴いたことも観たこともない小・中学生にとって、 |
| この伝記の変人たちの生き方や世界観はどう映ったのかな。楽劇を少し見聴 |
| きすればどうなんだ・・・ ま、あまり興味はありませんけどね。 |
| 面白かったです。 |
|
ワタシがよく知らなかったからですけどね、誰かに薦めたくなりました。も っとも、現在では出ていないような気がします。 |
