休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

映画『パリに見出されたピアニスト』

「駅ピアノ」の先にこんなドラマ

 

20200912(了)
 映画『パリに見出されたピアニスト』
  監督;ルドヴィク・バーナード//ジュール・ベンシェトリ/ランベール・
     ウィルソン/クリスティン・スコット・トーマス/カリジャ・トゥーレ
  2018年製作/106分/フランス・ベルギー合作/
      原題:Au bout des doigts/DVDレンタル
  <★★★☆>

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《映画.com解説から》・・・パリ、北駅に置かれた1台のピアノ。マチューの
楽しみは、自分を追う警察官の目を盗んでそのピアノを弾くことだった。そこ
へ通りかかった音楽学校のディレクター、ピエールはマチューの才能に強く惹
かれ、ピアニストとして育て上げたいと声を掛ける。乗り気ではないマチュー
だったが、実刑を免れるため無償奉仕を命じられた音楽院で、ピエールや厳し
いピアノ教師エリザベスの手ほどきを受けることに。生い立ちに恵まれず夢な
ど持たずに生きてきたマチューは、周囲との格差や環境の壁に直面しながらも、
本気で音楽と向き合うようになっていく・・・
 
これは、なんといっても「駅ピアノ」らしいからというので選択。
NHK-BS1(-プレミアムのほうでもやってたかも)で「駅ピアノ」という番組
がありまして、世界じゅう、あちこちの駅や空港に置いてあるピアノを、思い
思いに弾く人を映す。結構好きな番組。再放送をよくしている。二度目ぐらい
なら観ちゃいますね。三回目ぐらいになると替えるかな。
随分いろんな「駅」編を観たけれど、「パリ編」てのは記憶にない。
 
友人である小悪党とつるんで軽犯罪で警察に追われる身の主人公の若者が、パ
リ駅の駅ピアノを弾いている。べらぼうに上手い。彼をパリのコンセルヴァト
ワールの男(ディレクター?)が見初める。事情の一部は解説にあるとおり。
ピアノとは無縁の家族や悪友たちの社会の底辺の側と、彼を見出したいわば上
流社会の音楽関係者の側との間で、彼が問題を起こしたり、彼のかたくなな心
が抵抗したりするさまを、描いてゆきます。
 
子供時代から見始めてくれた老先生が、いかに優れた教師だったかということ
は、彼の練習量&内容と共にほとんど想像するしかないのですが、20歳過ぎぐ
ぐらいになっている彼はすでに天才レベルに近い。しかも、老先生の薫陶よろ
しく、テクニックのみならず「心」も優れているらしい。
 
お話が収斂してゆくコンクールというのは、そんなのがあるかどうか知らなか
ったのですが、音楽学校の対抗戦みたい。
で、課題曲は独奏曲はなくて、協奏曲。ここではラフマニノフの超有名なピア
ノ協奏曲第2番の第1楽章。
ドラマ上、中盤近くまでは独奏曲も出てきたものの、後半はこの協奏曲ばかり。
ワタシ自身では普通聴こうなんてことはまず考えない曲なんですが、ここでは
部分的にだけれど何度も何度も出てきたのに、飽きなかったですね。
 
彼が弾いたことがないこの曲を、コンクールに出せるように仕上げる役目を請
け負う先生は女性ピアニスト(クリスティン・スコット・トーマス・・・フランス語をきれい
に喋っていました)とのシーンがどんどん増えます。当然オケ伴で弾いたこと
も、満員の聴衆の前でだって弾いた経験もないのですから、短期間のうちに学
ばねばならないことは、「常識」を含め、山ほどある。その中でラフマニノフ
がこの協奏曲を書いた時の状況を、彼に説明してあげるシーンがあって、要す
るにこの曲の「心」の面を伝えるわけです。なんてこともないシーンというか、
むしろ一般的に言えばくどいととられそうな部分だったかもしれないが、ちゃ
んと彼に沁み込んでいくみたいで、ワタシにはなんだかいいシーンでした。
 
上記レッスン以外に細かく描かれて記憶に残ったのは、彼を見出したディレク
ター氏の家庭の秘密のこと、彼といい仲になるアフリカ系の学生(件の音楽学
校生でチェロ奏者・・・残念ながら彼女だけは弾くフリがまるでダメでした)
とのこと、ぐらいかな。
 
カミサンと気楽に観ました。リアリズムやシリアスさはさほどなかったと思う
んですけどね、ワタシ、おしまいのほうでは涙腺が緩んじゃった。奏でられる
音楽のせいではないと思うけれど、でも、関係はある。まさかまさか、でした。