20260729(了)
『奪回』/ディック・フランシス
ミステリー/菊池光訳/早川書房、単行本、昭和62年2月、 4版/再読
(THE DANGER Ⓒ 1983 by Dick Francis)
<★★★☆>

偶然読み始めた『奪回』。ほんとに何気なく古い単行本を手に取ってその
まま読み始めてしまった。あとが詰まってるのに。
フランシスの多くは文庫本で読んだのですが、7-8冊ぐらいは単行本
もあった。まっ茶色の文庫本よりはまだ字が大きくて読みやすかった。
ある種の経験を買われてだったと思う、誘拐に対処する会社の社員であ
るアンドルーが、イタリアでその任に当たっている。官憲との距離を保
ちつつも協力もするスタンスで、誘拐された者の命を取られないように
すること。誘拐犯との交渉方法の教授や指図を、状況を見極めつつ臨機
応変にやる。特に身代金を払う側に。犯人側にとっては秘密の人間。
このイタリアのケースでは、誘拐された娘(若いジョッキー)の富裕な
父親の専属運転手として、絶対に注目されない形で、関係者のすぐそば
にいる。
さすがの対応力が発揮されるも、これは前哨戦みたいな感じ。娘が戻り、
身代金はちゃんとは戻らなかったが、ひとまず解決。不完全な終わり方
なのは、この仕事ではごく普通。
さて、舞台はアンドルーの国イギリスに移る。 ランボーンへ。
どこが「競馬」ミステリー? ウーン、この話、思い出さない。
イタリアで誘拐された富豪の娘が、ん?何歳だっけ、彼女が将来を嘱望さ
れたジョッキーらしい。アンドルーは長く誘拐されていた彼女となんと一
緒にロンドンに戻る。
精神的に極めて不安定な娘アーレッシアはもとの厩舎に戻るも、なかなか
騎乗できない。アンドルーは、会社で事務的な業務に携わりつつ、聞き出
したいことがあることもあって、アーレッシアとの接点はもったまま。
一見穏やかな日々が続くようだが、競馬ミステリーはこれからだよな。
フム。でもアーレッシアの動向を引っ張っているから、彼女も絡むに違い
ない・・・なんてね。アンドルーには競馬の知識はゼロだが・・・競馬で
有名なニューマーケットあたりで何か起きるのだろうか。
場所は違うが、勿論起きる。誘拐されるのは3歳半ほどの男の子。
アンドルーは仕事としてその誘拐にもかかわるんだが、一緒にいたアーレ
ッシアの言葉で、競馬絡みらしいということがようやく匂ってくる。
この特殊な仕事としか言いようのない会社に所属するアンドルーは思った
以上に若く、落ち着いていて、頭脳も明晰・・・
ここで発生した誘拐事件がもとで、アンドルーの所属する会社は、アーレ
ッシアつながりから、競馬界にコネのようなものができるきっかけとなる。
さて、舞台は英国を離れ、アメリカへ。アーレッシアとアンドルーの恋の
芽生えのようなものもちらつく時もあるが、アメリカで事件が起きること
によって、ようやく、これまでわからなかった前二つの誘拐の関連や意図
がストーリー中にも立ち現れてくることになる。(なに、読者は競馬ミステ
リーを読んでいるんで、さっさと進んでくれ!)
英国のジョッキィ・クラブの委員長(フリーマントルという名、結構普通
の名前なんだね、つい、オッ!と思ってしまった)がアメリカの競馬場に
招かれて到着した翌日、誘拐されてしまった・・・
このストーリー、やっぱり完全に忘れていました。
誘拐を扱う不思議な会社で働く主人公を描くために、フランシスはこの本
来ダークな世界をかなり詳細に調査したようで、その結果彼の競馬ミステ
リーの中でも、他作品にはない特異な緊張感のある表現(ダークではない)
になったんじゃないかと思いましたね。
競馬については殆ど説明がないが、フランシスのばあい、競馬と言えば障
害馬レースのことで、日本では多分ないよね。そうしたことに全く触れら
れないので、彼女が若くて美しいジョッキーだということはわかるものの、
トラウマでちゃんと騎乗することがほとんどできない。よって、「競馬」の
部分は薄味。アンドルーはちゃんと興味を持つんだけれどね。
イタリア、イギリス、そしてアメリカ、と、競馬つながりがちゃんとあるし、
むずかしいロマンスもなんとかなったし、官憲中にいた優れた脇役たちが結
構魅力的だったし、、、いや、ちょっと「いい人」すぎたか・・・
初期の傑作群とは相当違うけれど、これは一皮むけたフランシスだったのか
もしれない、なんて思いました。
始めこれを読んだ昭和62‐3年(1987-1988年)ごろは、きっと出来が悪いと
思ったろうなぁ(もうわからないけど)。
初期の傑作(初めの3作のうちからでしょうか)は読んでみたい気が起きま
した。もちろん読めても1作か2作。
それと、字が大きいものにしないとつらい。「その後」この文庫本のシリー
ズの活字は大きくなったんだろうか。
この古い単行本・・・
ローカルの宝くじの半券と三重県四日市市の本屋のレシートも挟まってい
た。昭和62年のもの。4刷だがどうも新刊書として買ったらしい。職場が
名古屋だった時のようだけど、四日市なら間違いなく仕事中やね。そんな
ことしたっけか・・・ まったく覚えてません。








