シリーズ第15巻。これでこのシリーズもおしまい。 |
随分長いことかけて、こっちも付き合いました。 |
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(裏表紙解説) |
江戸市中あちこちで起きる厄介事は、なぜかこの男の許に持ち込まれる。 |
南町奉行所の窓ぎわ同心の藤木紋蔵。今日もまた難事件に奔走する。 |
紋蔵の養子の文吉は、御家人になり、ある縁から大名家に日参、そこで六百 |
五十石取りの娘に見初められる。しかし婿入り前に、京都で修行しているは |
ずの文吉に江戸で出会した紋蔵は、大名家への対応に頭を悩ます。 |
一方、紋蔵に邪魔されたと逆恨みする火盗改役が、紋蔵の鼻を明かそうと思 |
案に暮れていた。 |
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(他の意見) |
a)他には「小説現代2017年4月号」に掲載された1編を残すのみ。本シリー |
ズは江戸で起きる世間のゴタゴタと解決を、ユーモアと人情と救いのあるフ |
ァンタジー的な内容で描いた傑作 |
b)江戸時代の法律と判例を、この作家ほど徹底的に研究して捕物帳を書く人 |
はもう現れないかも |
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なるほどね。 |
ワタシは今回の最終作は、連作としての繋がり具合はやや弱い感じで、一篇 |
一篇に違った魅力があるように思います。これで終わるおつもりはなかった |
んでしょうね。新しい魅力のあるキャラクターが何人か出てきたりしますし。 |
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(4)「底抜けの出来損ない」を少し詳しく紹介します。 |
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ちょうど真ん中頃に置いてある一遍。 |
人畜無害で身持ちの悪そうなやさ男清次郎に、つい体を許してしまった働き |
者の「なか」。こうなった以上夫婦になるしかなかろうということになる。 |
しかし、この清次郎という男、なんにもできないやくざ者で頭はいいし人も |
悪くないのだが、人別がない。これは大問題。当然秘密めいたやつで、どう |
やらわけあって「正式に」勘当されているらしい。才はあり自堕落に遊び回
れているも、住む家もない。
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清次郎はなかの住まいに転がり込むと、そこは母子家庭。奇妙な3人の生活 |
が始まる。子どもは10歳の正太というが、これがなかなかの「利かん気」で、 |
清次郎のことが気に入らず、二人は狭い住まいのこととて、ひたすらぶつか |
り合う。このやり取りがいちいち長く、当シリーズではめずらしいほどムー |
ドやテンポがよくて、この作者にしてはめずらしいほどに楽しい。ま、清次 |
郎の受け流し方が上手いとも言えるんだが、徐々に正太もこのやり取りを嫌
がっているばかりではない感じも出てくる。
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最終的には清次郎の正体や勘当の理由などがわかる。そしてこのユニットの |
行く先には一転かなり明るいものが待っているのだが、実は清次郎の出自で |
ある「家」が、この作品全体の流れになんとなく絡んでいるという感じ。 |
この一篇では紋蔵はこのユニットのために知恵は出しますが、目立った働き |
はしません。 |
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(6)も面白かったですね。誰が殺人鬼なのか、なぜそんな大勢の殺戮がな |
されたのかは、読んでいる人はみなわかっているのだけれど、紋蔵たちには |
あまりわかっていない、といった終わり方。このシリーズでもままあったエ |
ンディング。こっちにはまったく不満はない。 |
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(8)はややこしいが人情もの。元夫婦が奇妙ないきさつからよりを戻す。 |
ちょっと想像のつかなかった(ほんとうです!)さりげないエンディングに |
ほっこり。 |
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連作という感じじゃありませんでしたね。 |
紋蔵の出番も少な目だったし、今さらかもしれないけれど、持病のナルコレ
プシーなど全く出なかったし。
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次があるべきなんだけど・・・
これでおしまい。
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