休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

ライナー/R・シュトラウスの歌劇

やっと聴きました 超名演じゃないでしょうか

20210504(了)

FRITZ REINER conducts ・・・ 

 リヒャルト・シュトラウス(1864-1949);

(1)歌劇「エレクトラ作品58より

 ①エレクトラのモノローグ:ひとりだ! たったひとりだ 9:32

 ②エレクトラとオレストの再会:なんの用なの、見知らぬ人よ? 21:31
 ③フィナーレ:エレクトラ!ねえさん! 9:40

(2)楽劇「サロメ作品54より

 ④7枚のヴェールの踊り(サロメの踊り) 9:01

 ⑤フィナーレ:ああ!わたしに接吻させてくれなかったわね 17:04

(3)歌劇「ばらの騎士作品59より 

  ⑥ワルツ(R・ライナー編曲) 8:34

 
  インゲ・ボルク/ソプラノ(エレクトラ、サロメ)、パウル・シェフラー/バリトン(オレスト)
  フランシス・イーンド/ソプラノ(クリソテミス)、シカゴ・リリック・オペラ合唱団
  フリッツ・ライナー指揮/シカゴ交響楽団
  ①-③;1956年4月、④;1954年3月、⑤;1955年12月、⑥;1957年4月
  Orchestra Hall,Chicago Tot.75:49
  CD/1993年/オペラ/BMG/邦/(RCA)/中古
  <★★★★☆>

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音楽は続いてフリッツ・ライナー指揮のもの。

オケの団員から尊敬はされても、慕われたなんて世辞っぽい話は読んだこと

がない。実際はどうだったんでしょう。

   前回、「悲愴」の時に、ショルティともどもハンガリー系の指揮者がシ

  カゴ響を振っての「悲愴」がよかったが、ショルティのほうはユダヤ

  だと書き加えた。調べたら、ライナー(1888-1963)もユダヤ系なんだ

  そうな。  

ライナーのR・シュトラウスはCDでは4枚目。この前に聴いたのは「家庭交
響曲」と「町人貴族」のカップリングで、その前が知られたオーケストラ曲を
集めた2枚組。
曲によって音の良しあしはあったけれど、大いに気に入って、確かダラダラ
と感想文を書いたはずです。気に入ったのは『英雄の生涯』『ドン・キホー
テ』、そして『家庭交響曲』の3つ。
 
(1)「エレクトラ」から
古代ギリシャ時代の話で、父でもある王が、妻と不倫相手に殺される。これ
を恨んだ娘エレクトラの錯綜した復讐譚。
ホーフマンスタールの、このおどろおどろしいストーリーが、実にピッタリ
R・シュトラウスの音楽は、いわばワーグナーの進化系であることがめちゃ
くちゃよくわかる。

サロメ」同様、凄まじくきびしく、かつゴージャス。いやもう、唖然茫然

の演奏で、ビックリしました。特に①③はすごかった。

インゲ・ボルクも、普通歌手の良しあしなんかには、拘る素地も能力もない
ワタシではありますが、太く強く、且つ柔らかいその声は、気に入りました。
まさに適役。ワーグナー歌手として活躍されたかたなんでしょうねぇ。
全曲を録音されなかったことを、口を極めて惜しがるコメントがありました。
納得です。
ひずみはあるけれど、これなら音質もなんとか我慢出来る。
なんでこういう中途半端な抜粋録音になったのでしょうか。ライナーの体力
的な問題でもあったのでしょうか? 
40分も残されたんだから、もちろんのこと、喜ぶべきなのでしょうね。
安くなって、ようやくその気になった。すごいもの、聴いちゃった。
 
(2)「サロメ」から
キリスト前夜といった時代(BC.30年ごろらしい)のシリヤ。ヘロデ王
義父に持つ娘サロメの、ある男に狂ってしまった行状と、男好きのする彼女
が周りに引き起こしてしまう混乱の物語で、構成上いろいろと問題が指摘さ

れているが、なんたって過激なストーリー。

いわゆる「ファム・ファタール」やね。

タイトルロールは、少女の初々しさと狂気の淫蕩さ、可憐な声と強靭な声と
いった、両立困難な歌唱と演技が求められ、おまけにエロチックなソロのダ
ンスまである。(代理のダンサーが立てられることもある。それが④で人気
のある管弦楽曲)。ということで、ドイツ・オペラきっての難役と言われる。
・・・なんてね、なにも解説役まで引き受けることはないんですが、つい。

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      (14世紀、フランツ・フォン・シュトゥック画)

      (歌手にこの格好は無理やろ!)

その④は、さすがにライナーの恐ろしく厳しい音楽ではエロティシズムは後
退し、狂気のほうが強く出ている感じだけれど、それだけにと言っては矛盾
も孕みますが、聴くほうの興奮度はかえって上がったんじゃないでしょうか
ネ。⑤の低く鳴る不気味な和音なんて、まるで『エイリアン』・・・失敬!
④と⑤の録音年月日が違っていたりするんだけれど、音質は「エレクトラ
と遜色なし。ただし、インゲ・ボルクさんの⑤の声質が「エレクトラ」とは
ちょっと違って聞こえる。録音のせいか、声の調子か、意図的に変えていら
っしゃったか。とにかくわずかだけれど声に豊かさが乏しい気がします。も
っとも、これも絶唱です。終りのオケは凄まじいかぎり。
 
(3)「バラの騎士」から
超有名曲ですけどね、細かく覚えているわけではないので、手元に比べるも
のがなくて、ライナー編曲がどんなもんなのかわかりませんが、演奏は通常
期待する豊麗さや色っぽさ、化粧っけがかなり少なく、物々しいかな。
この演奏だと、まあ・・・ちょっと・・・シュヴァルツコップのような伯爵
夫人は連想しにくい。
 
車の中の音場も決して悪くなかったのですが、最終的には、自室の装置のヘ
ッドホンで(古くてチャチなものですが)聴き直すことになりました。
(1)と(2)の録音は貴重というか不世出というか、たいそう誉れ高いもの
じゃないでしょうか。
前回の「悲愴」に関する愛着とは違いますね。途中でも書きましたが、すご
い録音です。聴けて良かった。
(DECCA録音も探したくなったし、バルトークの「弦・チェレ」なんかも
聴いてみるかな・・・)