休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

『犬たちの礼節ある社会生活』/エリザベス・M・トーマス

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20180915(了)

『犬たちの礼節ある社会生活』

                   /エリザベス・M・トーマス

     The SOCIAL LIVES of DOGS(木村博江/訳)
 
 序章  人は動物の心を理解できるか
 1章  サンドッグとの出会い――異種混合集団の発端
 2章  サンドッグ、老犬たちと出会う
 3章  サンドッグの闇の部分
 4章  人間を真似る犬
 5章  サンドッグ、ビーンに出会う
 6章  黒い犬ミスティ加わる
 7章  ミスティ、自立を知る
 8章  序列へのこだわり
 9章  パールのデビュー
 10章  パールの不思議な能力
 11章  くせものルビーの登場
 12章  ルビーをしつける
 13章  狼からの道のり
 14章  犬たちの集団意識
 15章  コヨーテとの対決
 16章  犬はなぜ人間を選んだのか
 17章  ミスティとビロード張りの椅子
 18章  犬にネズミを運ぶ猫
 19章  ルビーと猫たちの集団
 20章  子猫の死を悼む猫たち
 21章  サンドッグの死
 22章  夢の犬シーラ
 終章  帰ってきたオウムのヴィヴァ
      訳者あとがき
 
     2000年9月/科学的エッセイ/草思社/単行本/中古
     <★★★★☆>
 
(カバー)
  犬はどのようにして家族にとけこむのか。
  人間、猫、オウムの住む家族に新しく加わってきた犬たちは
  どのようにしてそこにとけこみ「社会生活」を築いていったのか。
  人類学者が自らの犬を観察して犬の心を克明に描く。全米
  でベストセラーになった『犬たちの隠された生活』『猫たちの
  隠された生活』に続く三部作完結編。
 
ずいぶん久しぶりにこの方の本を読みました。
犬、猫と続いて、3冊目はまた犬。これで三部作が完了。
今更あまりかかれないようですが、訳文がとてもこなれていてよかった。
前の2作もそうだったんだろうな。
ひとしきり描かれた犬が代替わりする。
4匹の犬との出会いが描かれる。一頭一頭がだんだん加わって家族の一
員になってゆく。それぞれがめちゃめちゃ個性が違って、面白いのはもちろ
んだけれど、唸らされる。どう言ったらいいのか、やはり「犬の歴史」かな。
頭目は出逢いが変わっているんだけれど、あとの3頭なんて、ワタシだっ
たら、まずもって飼おうなんて考えない。
 
犬のことを述べるにあたって、合わせてオオカミやコヨーテのことも多く出て
来るのもわかりやすい。猫のことも多いですね。2冊目は猫のことばかり語
られたが、ここでは猫好きもかなり驚くに違いない「群れ」の形成のことが
みっちり描かれてます。ワタシは猫を飼ったことはありませんが、けっこうシ
ョックを受けました。
前の2冊でも、感想文に「擬人化」しすぎではないかと、きっと少し否定的な
ことも書いたんじゃないかとと思います。でもここではワタシは否定的な感
覚は持つことなく読んだ気がします。これでいい、このようにしか書けないよ、
と。
 
 犬にとって群れのメンバーであることは、なににも増して重要である。セッ
クス、食べ物、自分の身の保全が、動物行動の推進力だとする人もいるが、
犬かぎっては、これはあたっていない。群れの要求の前では、その三つとも
影が薄くなる。犬は高位の犬から威圧されたり、飼い主から禁じられれば
食べ物に口をつけないし、犬橇の御者は犬のチームの中で雌犬が発情期
を迎えても気にしない。雄が近づいても、発情した雌犬は、高位の雌からに
らみつけられると尻を地面につけて坐ってしまうのを知っているからだ。重要
なのは群れ。個としての存在は二の次。個は集団の繁栄のために存在する
もの。手の指と同じように、一頭だけ切り離された犬は、ほとんど意味を持た
ない。手の一部となったとき、はじめて機能をはたせるのだ。
 
上記引用は「14章 犬たちの集団意識」の出だし。
例えば3頭目のパールはこんな風・・・
 
・・・パールは誰にでも吠えたがったが、スティーヴ(著者の夫)と私は例外
だった。そして彼女を育てた私たちの息子とその家族にも吠えなかった。彼ら
はパールの心の中に住んでいて、一年に一度しか訪ねてこないにもかかわらず、
かならず狂喜して熱烈にむかえた。家を留守にした私たちが帰宅したときのよ
うに。これを書いているいま、彼女は私たちと十年暮らしているが、相変わら
ず年に一度、彼らを忘れることなく歓迎し続けている。
 パールは実際に会わないときでも彼らにかんする情報がえられたので、記
憶が消えずにたもたれたのかもしれない。 ワタシは息子一家をひんぱんに訊
ね、そのたびに犬には感知可能な匂いの雲にとりまかれたはずだ。そして私
が帰宅すると、パールは人が手紙を読むときのように、その匂いに神経を集
中させた。吸いとらんばかりに私の服に鼻を押しつけ、かかとからはじめて
徐徐に脛から膝の上まで調べ上げた。私の靴とジーンズの布地に、彼女は
見つけたのだ――自分の父親、自分を育ててくれたほかの犬たち、ビーン
ッグ・チェアのような体型の猫のマナス、リス狩りをするウサギ、私の息子
夫婦に孫。彼女にとっては夫も私もその延長線上にいる、元の集団の懐かし
いメンバーたち。調査を終え、動物と人間についてすっかり情報を集めると、
パールはくしゃみを一回して、私にすばやく意味ありげな視線を送った――犬
同士がするように。自分が読みとった情報を、相手も理解したかどうか確認す
るために。
 犬は遠く離れた群れのメンバーを感知したとき、心が動くだろうか。パール
はなにかを感じた。くしゃみがその証拠だった。犬は人間のように埃や花粉な
どを吸い込んでくしゃみをすることは、それほどない。そのたぐいのくしゃみ
をするときは、たいてい激しく何度もくり返す。だが、一回だけの意図的なく
しゃみは終止符のようなもので、多くの場合、犬がなにか強い感情を抱いたあ
とにだす。罰を与えられたあとや、愛情や承認をあらわに表現したあと、 そ
してボールダーの愛する者たちの匂いからパールが経験したような感情のあと
に。
 
 
 
この匂いを嗅ぎとろうとする行為は思い出しましたねぇ。確かに‘アイツラ’は
やってたなぁ。オレをボスと認めてくれていたヤツもいたかもしれんなぁ・・・
なんてね、思い出した。くしゃみもそう、、、こういう意味もあったんだ。
 
この後、一頭目のボス、サンドッグの際立った集団意識のことが述べられる。
パスしますが、びっくり!
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                       (シートン動物記の著者の優れたペン画をちょっと思い

                         出しましたが、こっちの絵は著者でなく別人のスケッチ

                         だそうです)

 
 
紹介したいものばかりで、どうしようか悩んじまう。
 
今から犬なり猫なりを飼うと、そのうちに夫婦どちらかがへたっちまう可能
性が小さくない。そうなると飼われたほうが迷惑を被るからねえ。飼いたい
と思いはじめてから、じりじり時間がたっているところです。
世界中が猫に席巻されてしまったみたいな‘猫ブーム’のなかで、日本じゃあ
世話はたぶん犬のほうがいろいろかかるんじゃないか。さあ・・・どうする・・・。
犬の感性が著者が書くような敏感極まりないものだったら、そもそもこんな
ところで飼うのは、犬に失礼だという気すら起きます。
いや、今考えているのはいわば捨てられた犬なので、子犬とは限らないし、
出遭いと、共同生活の集団形成の経緯が強烈なインパクトを残す本書の4
頭も、子犬ではなく、恵まれない環境のせいから形作られた特異な性格を
持つ。ウチは老インコがいるぐらいだから、集団形成云々にドラマは生じ
ないわけだけれど、それでも置かれていた環境のことは思わずにおれない。
あんまり客観的に読んでないかもしれませんね・・・
とまれこの集団意識に関することこそ、この本の白眉といっていいでしょう。
 
(hisa24さんが、著者の小説を取り上げたはりましたね。面白そうです
けど、手ェ出えへんやろうなぁ)
 
おととい日がな動物を触っている娘がやってきたとき、話題になったのでひ
としきり宣伝したら、3冊まとめて持って行ってしまった。自分も読むつも
りなんだろうが、むしろ、職場の後輩に読ませたいらしい。
そうそう、娘からは、犬を紹介してもらう予定・・・
もし飼うことにでもなったら、生活がかわってしまうだろうと、戦々恐々。
 
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