休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

ケクラン:セヴン・スターズ・シンフォニー

  もっと知られるようになってほしい管弦楽曲です

20241108(了)

ケクラン:セヴン・スタ-ズ・シンフォニー

     &星空の詩

CHARLES KOECHLIN(1867-1950)/

(1)セヴン・スターズ・シンフォニー(7大スターのための交響曲Op.132(1933)
  ①第1楽章 ダグラス・フェアバンクス           6:12
  ②第2楽章 リリアン・ハーヴェイ             2:17
  ③第3楽章 グレタ・ガルボ                4:14
  ④第4楽章 クララ・ボウと陽のあたるカリフォルニア    6:10
  ⑤第5楽章 マレーネ・ディートリッヒへのオマージュ       4:48
  ⑥第6楽章 エミール・ヤニングズ             4:30
  ⑦第7楽章 チャーリー・チャップリン            15:08
(2)星空の詩 Op.129⑧(1923-1933)                13:13
 
  アリアーヌ・マティアク指揮/バーゼル交響楽団
  録音;2021年1月、スイス、バーゼル、Stadtcasino
  CD/クラシック/Ⓟ&ⓒ 2022 Capriccio/ドイツ製/輸入/中古
  <★★★★☆>

Naxosの惹句的解説から)
フランク、フォーレドビュッシーらの影響を受けながらも、伝統的なハーモニ
ーと作曲技法を独自に拡大し、時には無調の作品も書いたフランスの作曲家ケク
ラン。200曲を超える作品を遺しました。演奏・録音の頻度は高いとは言えないも
のの、『ジャングル・ブック』やピアノ曲をはじめとして根強い人気があります。
夜になると望遠鏡で星を眺め、宇宙の神秘を解明しようと試み、またある時は神
話や旅行記、未知の国についての書物を熱心に読んでいたともいうケクラン、こ
のアルバムに収録された「セヴン・スターズ・シンフォニー」は、 同時収録の
「星空の詩」とともに天体にまつわる曲かと思えますが、実はケクランお気に入
りのハリウッドで活躍したスターたちへの思いを綴った作品で、シンフォニーと
題されているものの、自由な組曲形式を採っています。ケクランが各々のスター
に抱いていたイメージがそのまま表現されているため、曲調は現代的で、時には
オンド・マルトノまでが登場する不思議な響きが横溢しています・・・
 
 
ケクランという作曲家を知らない方は、これらむかしの俳優名を見て、「なんじ
ゃ、これは!」ときっと思うでしょうねぇ。
多い室内楽を中心に楽しんできましたが、元々はオーケストラ曲の2枚組を聴い
て、そのカラフルさ、鮮やかさが気に入ったのがスタート。 その中に実はこの
「セヴン・スターズ」も入っていました。久々の再聴。どうせ聴くのなら、別の
演奏で聴いてみたいと探したものです。いいものに当たりました。
 

(1)セヴン・スターズ・シンフォニー

ダグラス・フェアバンクス・・・

エスニック風味が基調かしらん。中東風ないでたちのフェアバンクス? 木管
物静かにリードする、ちょっと渇き気味の、余韻たっぷりの風景画。
リリアン・ハーヴェイ・・・
やはり木管がリードする、かわいいに近い美しさ。最後はヴァイオリンソロで
静かに終える。えらく短い。
グレタ・ガルボ・・・
なんと、オンド・マルトノで導かれる楽曲。こんな素敵な使われ方をするなら、
この楽器も侮れないねぇ。ガルボ、こんな神秘的なイメージ?ホルストの『惑星』
の最後の「海王星」に似ている。
クララ・ボウと陽のあたるカリフォルニア・・・
前半はミヨーの調子でキラキラ。後半はトリッキーに、でも幸せそうに跳ねるよ
うなキラキラした感じに盛り上がる。カリフォルニアと結び付いた女優さん、か。
マレーネ・ディートリッヒへのオマージュ・・・
クラリネットやフルートで導かれる叙情的な楽想。憂いが少々。ウーン、これが
ケクランのディートリッヒのイメージなんだ。
⑥エミール・ヤニングズ・・・
ぶ厚く不穏なオケの音色。美化されてはいる(みんなそうだけど)が、「不穏」
は重要なテーマだろう。「無調」が紛れ込む感じがなかなかいけてます。
チャーリー・チャップリン・・・
この管弦楽組曲ふうな作品のトリはチャップリン
15分かかるだけのことはあって、盛りだくさんの曲想。例えばピーター・パン
のような妖精という感じからスタート。ミヨー風オーケストラ音のあとには、密
やかになり、少し意外な翳っぽさものぞく。曲調は勢いを盛り返すものの、笑い
を取るためのひょうきんな表現が逆効果。ややアンニュイな感じが続き、さあや
っとぱぁーと明るく終わるかと思ったら、ひっそりと消えそうになる。最終的に
は強引にジャーンと鳴らところまでじわりと持ち込んで締めてくれました。
 
当然のこと、きわめて美しい、シックにキラキラしたとでもいう感じの管弦楽曲
として楽しめばいいだけのことなんですが、少しはね、俳優のイメージにもひっ
かけたくなります。つまり、引っかからなかった。何一つ。まだ「宇宙」のほう

が近いぐらいだ。歴史的なスターで、ろくに知らないのだから、それでいいんで

しょう。見事な組曲だと再認識しました。

 

(2)星空の詩

音色は前曲と似て、同時期の曲らしい。叙情の塊みたい。最後はしっかり盛り上

がります。地味ですがとてもいい曲。初めて聴きました。
ちょっと遅れてきたフランス近代というふうですが、色彩感のみならず音楽のバ
ランス感覚の良さは天才的だと思います。
キャッチーなメロディこそありませんが、全体としてはある種のメロディーを感
じさせるとでも言いますか・・・
なんてね、独自路線で、どんなグループにも組しなかったケクラン。その素敵な
いさぎよさを、まとめて書いてしまったようなものになりました。
大好きな作曲家です。

つぶやき・・・
骨格の太い理屈が得意なドイツ人が、けっこう観念的な音楽を作ったのに対し、
どこか屁理屈っぽいフランス人が作る音楽が、とても感覚的なものが多かったの
は、面白い現象だなぁ。ま、過去形でしょうけどね。現代ではそんな言い方は通
じなくなっていると思います。
無調を含めても、この煌びやかなオーケストレーションはなかなか聴けるもので
はありません。知らない人は可哀想。
 
CPOというレーベルでいくらか聴いたオーケストラです。CAPRICCIOというレ

ーベルのせいか、録音がすごいのか、まるでCHANDOSみたいに美しい録音でし

た。ホールもきっといいんじゃないでしょうか。指揮者は女流。初めて聴きまし

た。

 
初めてケクラン(の管弦楽曲)を聴いた2枚組のCDを、また一通り聴き直してみ
たくなりました。(1)やキップリングの「ジャングルブック」を題材にした管
弦楽作品集などを。こんなふうな聴き方、よくしてしまいます。記憶力が落ちて
いるのかもしれませんけどね。

 

 非常にすばらしい演奏でした。なにも別の演奏にする必要なかったですね。
 ところで、この2枚組、1枚目にキップリングの「ジャングルブック」に触発
 された交響詩集のようなもの(歌入りは苦手だけれど、これが素晴らしい)が
 入っているのですが、最後の一曲が入りきらずに二枚目に入っている『バンダ

 ー・ログの・・・』*、これがまたすばらしかった。以前聴いた時には触れて

 いたかなぁ・・・

                 *バンダー・ログは物語中の猿の群の名前

 ストラヴィンスキーの『春の祭典』その他の有名バレエ曲、オネゲルの『パシ
 フィック231』、ウェーベルンの『パッサカリア』(だと思う)等々、あく
 まで似ている気がするなぁというレベルの有名曲の曲調や音色を実に上手く使
 っていて、まったく違和感なくおどろおどろしい調子のオリジナルに溶け込ま
 せている感じなのです。(合ってるかなぁ・・・) 傑作だし、もしワタシが
 感じた通りだとしたら、これはもうケクランさん天才!
 
ハイ、なに言ってんだか・・・ (ハハハ)
長くなってしまいました、ご容赦。