4、あなたの人生の物語 |
福岡伸一先生が朝日のコラムで、アメリカで観たこの映画の印象を面 |
白おかしく紹介しておられ、俄然本を読んでみたくなったわけです。 |
その中では異星人の姿形がなんたって笑えました。こりゃあ昔の火星 |
人の想像図に近いじゃないか・・・。 |
まだDVDで観られるのは半年以上先のことでしょう。 |
楽しみです。映画のサントラはすでに聴いていまして猛烈におどろおど |
ろしい。そのジャケットに映画の写真が載っていて、ジェレミー・レナー |
やフォレスト・ウィテカーがえらい深刻な顔つきをして写っているのを見 |
ると、相当重々しい感じに仕上がっているのかな。 |
ところが、この中編小説を読んだ限りではねぇ、この未知との遭遇は、 |
「宇宙大戦争」とは中身も雰囲気も、言ってみりゃまるっきり逆。 |
地球中にどっと訪れた異星人は、どうして地球なんぞに来たんだか、 |
地球人にはトンと合点が行かない。各地で防衛の中枢や物理学者や |
言語学者が対応するお話。この奇妙なコミュニケーションが、アメリカ |
における女性言語学者の苦労や感性、そして彼女の‘人生’を通して |
描かれる。半分は研究、半分は彼女の娘に語りかける形。なんで人 |
生なんだ・・・とこれが難物。 |
映画じゃ、なんか暗そうなのに、、、異星人が来襲したにしては、小説 |
に漂う雰囲気は、ある種のんびりとし、おかしみや軽みがある。国防関 |
係が当然持つシリアスさとは実際は無縁。まぁ、彼女は言語学者として |
責任重大なものだから、言葉や言語の解明にシャカリキではあるのだ |
けれども、その言葉というのはたいそう変わったもの。時間の考え方が |
入っていて、それがなんともとらえどころがない。実はこのお話のミソ。 |
(福岡伸一先生の言い方だと、アルファベットより漢字に近い。) この |
作者、ここまででわかっているようなものながら、説明をぜんぜんして |
くれない。物語には長ーい時間が伴っているようでいないこと~ この |
エイリアンの言語の成立の仕方にかかわっていること~ が徐々にわ |
かってくる。上にこの女性学者先生の人生を通して、などと書いたが、 |
実はそうじゃなくて・・・ と、新聞の解説のようにはいかないが、こんな |
ところにしましょう。自信を持って書けます、「まるで不十分にしか理解
していません!」
|
<★★★☆>(7/14)
|
※(朝日の本の解説の最後のところが引っかかります。上将?
中国性? この辺り映画を観ないとわからないわけだけれ
ど、映画の自分なりの解釈に影響があるかも・・・) そもそ
も、こんなものよくも映画にしたもんです。
5、「七十二文字」
|
馬車が出てくるなど、近世風な道具立てながら、過去のものとも未来 |
のものともつかない、深読みを強いる‘空想科学’。 |
「名辞」というものがあって、何かそのものを規定する文言付きの名前 |
のようなもの。それを貼り付けるというかセットするなりすると、無機物 |
は‘作られているように’動く。オモチャや作業用ロボットなんかは、名 |
辞の力がもっとも端的に利く。完璧に正しい名辞は“真辞”という。 |
ここにそういう名辞を専門に作る命名師なるものがいる。 |
彼が王立のなんとか協会とかいうところから呼ばれてみれば、人類が |
数世代後には生殖能力を失い、滅びてしまうとわかったという。ついて |
は命名師(他にはその道の指導的立場のお歴々が呼ばれている)とし |
ての能力を‘有機物’にも発揮し、人類の存続に寄与してほしいのだが |
・・・ と続く。 |
現代の生物学上の知見を想像力豊かにデフォルメ(かなり徹底してい |
る)して見せてくれる感じですかねえ。 |
「名辞」というものがとにかくふるっている。 |
単純化された人工的なDNAのようなもの、かつエンジン付き。 |
「性小名辞」となると、文字通り性の区分で、発達することで、人間でな |
い娼婦などはすぐに発想される・・・ |
なんてのは枝葉でね、人類はどうなるのだ! |
ここまでしての仮想世界に、今のワタシたちが感じ意識し続けなければ |
ならないアイロニーや寓意にどんな意味があるんだろう、ややこしくて |
読んだ感覚なんて維持できないではないか・・・ |
なんて野暮は言うまい。 |
深読みを強いると始めに書いたものの、あくまで著者の発想や表現を
我々は享受すればよろしいのであって、難しくても悩む必要はないの
|
かもね。 |
発想の性質が、最初の「バビロンの塔」の延長線上にあるような気が、
ちらっとしました。
|
<★★★△>(7/18) |
6、「人類科学の進化」 |
超人類? なんじゃそれは・・・、例えば(5)の後にでてきたような? |
新聞とか雑誌の記事のような体裁を採ったもの。これも作品なんだ。 |
英国の「ネイチャー」誌用に書かれたとか。ホントに載ったの? |