20210816(了) |
映画『博士と狂人』
P・B・シェムラン監督//メル・ギブソン/ショーン・ペン/ナタリー・ドーマー/ |
エディー・マーサン/ジェニファー・イーリー/スティーヴ・クーガン |
音楽;ベアー・マクレアリー |
2019年製作/124分/英・アイルランド・仏・アイスランド合作/DVDレンタル |
原題:The Professor and the Madman |
<★★★> |
(エディ・マーサン、ナタリー・ドーマー)
The Oxford English Dictionary
習いましたねぇ、英語の超権威OED。つまり、オックスフォード英語(大)辞典。 |
この編纂にかかわる大事業の裏話です。 |
ノンフィクションの原作があるというのだから、この通りかどうかはともかく、似 |
たようなことがあったんでしょう。 |
なにやら怪しげないきさつで編纂の責任者に抜擢される博士は、さまざまな言語に |
非常に詳しいが、箔や権威に乏しい子だくさんの貧乏先生。 |
そしてこの大変な任務に、不思議な縁で絡んでくるのが、もともと教養はとても高 |
いんだけれどトラウマを抱える元軍医で、そのトラウマが原因で引き起こしてしま |
った失敗(殺人)によって更にトラウマを背負いこんでおかしくなり、精神病患者 |
専門の牢獄のような施設に入れられている。この「狂人」。 |
この二人の運命的交錯を中心に、殺された男の妻や子供達の一家、施設の怪しげな |
ボス、狂人にいつもよりそう優しい看守、博士の首根っこを抑えているオックスフ |
ォードのお歴々、もちろん博士の家族、そしてしまいには政治家(え?と驚く人物 |
が出てくる)。彼らが絡むドラマ。20世紀のはじめごろからのお話。 |
堂々とした大芝居でした。 |
辞書というと『舟を編む』だったかな、日本のも楽しみましたっけ。こっちは基本 |
的に現代語の辞書なので、古語まで遡ったりするようなところはほとんどなかった |
ような記憶があります。「神去なあなあ・・・」は読んで面白かったが、映画は観 ておらず、こっちは小説のほうは読んでません。 |
OEDの場合は、16世紀の用例みたいなものまでチェックしてましたね。英語の辞 |
書ってそこら辺まで遡るものなんだ。これがすごい。そうそう、英語って三割近く |
まで(いや、四割だったか)ドイツ語系の言葉が入り込んだりしてたんじゃなかっ |
たかなぁ。 とにかく途方にくれずに済むお仕事じゃない。 |
先生、始めは7年でやるなんて豪語してしまうんだが、あの小人数じゃ、何十年か |
かるやらわからない。映画のエンディングにいたってはじめて、ではその後どうな ったか、一応わかる。 |
当初から工夫はいろいろしているみたいなんだけれど、遅々として進まない。そこ |
に強力な助っ人(狂人)が現れて、しばらくはドラマティックに進捗する。映画は |
その頃のいきさつが中心というか、ハイな部分として描かれる。 |
言葉はいろいろ例こそ出て来ましたが、それほどたくさんというわけでもない。あ |
まりにも地道で長い作業なので、映画の尺じゃあ無理がありますからねぇ。あれく |
らいの紹介が限度なんでしょう。 |
主役二人は共にラビっぽくひどい髭面なので、表情が読みづらく、そのためだろう、 |
往々ドアップになる。しょうがないが、ちょいと鬱陶しかったかな。 |
それに比べると、『ゲーム・オブ・スローンズ』で強く印象に残ったN・ドーマー |
さんは、微妙な役柄にも拘らず受けにくいだろうなあとは思うものの、さほどアッ |
プにならないで、それでもなかなかの存在感だったよう。 |
でも、ホンマにこんな逸話あったんかいな・・・ |
映画にしたくなるのはわかります。 |
言語に関わる話は、よくはわからんくせに、ワタシはなんやかやと気になる世界で |
す。この映画の表現では言語というものに大上段から切り込むような面は避けてい |
たわりに、逆に細かい面も伝わり切れていない気はしました。例文へのこだわりは 当たり前とはいえ、よかった。 |
とかいいつつ、けっこうのめり込んで観たので、映画自体の出来は果たしてどうだ |
ったのでしょう。よくわからない。 |
ああ、音楽は、可もなく不可もなく。機械的にではなく鳴らしてはいたものの地味 |
で、もう少し主張する余地はあったように思うんですけどねぇ、あまり冴えた感じ |
じゃなかった。 |