|
小説にこんなことができるんやねえ、というような意味のことを解説の池澤夏樹 |
が書いている。 |
感想文、ムズカシー。 |
|
(カバー裏惹句などから): |
日本の学校になじめずアメリカの高校に留学したマリ。だが、今度は文化の違い |
に悩まされ、落ちこぼれる。そんなマリに、進級を賭けたディベートが課される。 |
それは日本人を代表して「天皇の戦争責任」について弁明するというものだった。 |
16歳の少女がたった一人で挑んだ現代の「東京裁判」を描き、今なお続く日本 |
の「戦後」に迫る、、、 |
第23回紫式部文学賞受賞! |
第66回毎日出版文化賞(文学・芸術部門)受賞! |
第16回司馬遼太郎賞受賞! |
ダカーポ「今年最高の本!」(「dacapo」)第1位! |
|
戦争を忘れても、戦後は終わらない…… |
“文学史的”事件 |
|
* |
物持ちがいいでしょう、新聞の広告の切り抜き。 輝かしい新聞の広告の切り抜 |
き。同業者の賛辞がすごい。 |
‘文学史的事件’かどうかはともかく、‘文学的事件’であったのではないか。 |
あるいは、、、超がつく「怪作」かも。 |
* |
ひどいもんでね、戦後のどさくさに生まれた団塊の世代たるオレたちのみならず、 |
その後の今の今までも(ホントかよ!)そうらしいじゃないか。高校までは現代史 |
を学ばなかった。歴史の教科書にはおよそ載っていたけれど、明治の終わりくら |
いまでで、授業はストップしてしまった。入試に出ないんだから“ほっとけ!” |
こんなこっぱずかしい国、ある? |
ご近所の国々のことを論評する以前だもんなあ。高校までは、学校の中でだけ |
学べないなんて。 |
* |
山である最終章に行き着くために、さんざっぱらイライラさせられる。 |
なんたって落ちこぼれ的な日本人の女子高生が、アメリカの高校でも孤立し、な |
んとなんと「天皇ヒロヒトの戦争責任」をネタに賛成反対に別れてディベートしな |
きゃならなくなる。 |
いわば語り部的な45歳になった作家である本人ともども、ダダ漏れ状態の妄想 |
と迷走を挟み込みつつ、戦争や日本と日本人、憲法のこと、天皇制そして特に |
現人神たる天皇ヒロヒトのことを、まあいわばたった一人で認識してゆこうとす |
る。告白すれば、ワタシはこのある種生理的だとしか思えない妄想に、どれだけ |
イライラしたことか。 |
最終章だけでいいんじゃない? |
それが、そうじゃない、この少女と一緒になって考えなきゃこの小説の意味はな |
いということなんですね。 |
イライラしてもあれ(ディベートの準備以外のいろいろ)は意味のある道草だった |
んだと。 |
* |
何かが解決したなんてことはないんですが、これが日本では経験しないアメリカ |
で行われたディベートの形を取っているものの、アメリカ人のことでもないし(まあ |
関係はめちゃくちゃあるけどね)、ましてや世界のことでもない、他でもない日本 |
人のこと、「毎日無意識に生きるあんたのことでっせ」、という感じがしましたねえ。 |
ばれなきゃどうってことないようなものですが、オレはこんなにモノを(歴史を)知 |
らなかったんだという気持ちはちいさくないですな。 |
それに天皇制の(そしてもちろんヒロヒト天皇の)といってもいい、その不思議な |
空気のような存在、力があるようでなんにもない透明な器のような存在、のイン |
パクトは絶大。 |
そんな存在でありながらの「終戦(≠敗戦)宣言」は、いったいどんな思いでなされ |
んだろうねえ、めちゃめちゃ辛そうで、ほとんど笑いたくなる。 |
ただその存在のインパクトはあくまで感覚的なもの、具体的に言葉にするのは無 |
理なものであって、捉え方がちょっとばかり深まってはくれたという程度やね。 |
そんなんだから、アメリカ人なんぞに理解できるわけもない。ましてや全米ライフ |
ル協会の主張に同調しているような人においておや。 |
それに、常々意識し続けられるようなものじゃない。その必要があるとも・・・思い |
にくい。なんてね。日本人がこれだぁ。 |
* |
ここまで反応したんだからもっと点数高いかというと、星4つは無理です。 |
認めてはいるんですが、ひとえに、女性の感性が猛烈に濃いから。ワタシには濃 |
すぎる。いや、読んだことを決して徒労と思ってはいませんよ。締めくくりのディベ |
ートなんざ意外に快哉。でもでも、この小説の‘女性性’って、問題視しなくていい |
とは思えない。 |
この居心地の悪さみたいなもの(スミマセン、個人的で結構!)を否定したら、こ |
の小説、成り立たない。よく言えば‘文学臭さ’の一端を担ってもいるかも。 |
むずかしいところじゃないんでしょうか。
(ワタシには、最後に 天皇さんの姿がぼーっと残っちまった気がする・・・)
|
|
脈絡なく沢山メモったところ、あとがきの池澤夏樹さんが数行にまとめたものに |
てんでかなわないとわかって、端折りまくった。それでもこれだけ残って、、、
|
アホだねえ。
|
|
|
|
|