休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

「フェルメール 全点踏破の旅」

イメージ 1
 
20150213(了)
朽木ゆり子/「フェルメール 全点踏破の旅」
序章 フェルメールの魔法
1  ベルリン 《真珠の首飾り》《紳士とワインを飲む女》
2  ドレスデン 《取り持ち女》《窓辺で手紙を読む女》
3  ブラウンシュヴァイク 《二人の紳士と女》
   ウィーン 《絵画芸術》
4  デルフト 《小路》
5  アムステルダム 《牛乳を注ぐ女》《恋文》《青衣の女》
6  ハーグ 《真珠の耳飾りの少女》《デルフト眺望》《ダイアナとニンフたち》
7  ロッテルダム 《手紙を書く女》《窓辺でリュートを弾く女》《地理学者》
8  ロンドン 《ギターを弾く女》《ヴァージナルの前に立つ女》
           《ヴァージナルの前に座る女》
9  パリ    天文学者》《レースを編む女》
   エジンバラ 《マルタとマリアの家のキリスト》
10  ワシントン  《天秤を持つ女》《赤い帽子の女》《フルートを持つ女》
   フィラデルフィア 《ヴァージナルの前に座る若い女
11  ニューヨーク
   ●フリック・コレクション:
       《兵士と笑う女》《稽古の中断》《女と召使》
   ●メトロポリタン美術館
       《窓辺で水差しを持つ女》《眠る女》《少女》《信仰の寓意》
終章 深まるフェルメールの謎
       《合奏》《聖女プラクセデス》《手紙を書く女と召使》《音楽の稽古》
    あとがき
    主な参考文献
    2006年9月/エッセイ/集英社新書ヴィジュアル版/ネット/中古
    <★★★☆>
税吏でもホントはなんとか食って行けたはずなのに、現役画家としては評価され
ることもなく、極貧のうちに亡くなったのアンリ・ルソーのミステリーの後は、いま
だブームが去らないフェルメールのお勉強・・・
真筆かどうか怪しいものも含めて、全部で37枚という少ない枚数、しかも欧米だ
けで済むということで、この筆者は、出版社の一気踏破の企画に乗っかった。あ
るいはその逆。日本人だけがやたら好きで騒いでいるというわけでもないようで、
欧米ではもともと人気があるんやね。
真筆かどうかの真贋だけでなく、これまでいろんな事件に巻き込まれてきた作品
がいくつもあり、かつご本人にも、デルフトという町をほとんど出なかったわりには、
わからないことが山ほどある。
ミステリアスな方が人気が出るものなんだ。
美術館ごとに、その作品の来歴、画家とその周辺の事情、巻き込まれた事件や
出来そのものなど、思った以上に詳しく書かれているし、筆者自身の考え方や好
みまでも加えてある。
観たらさっさと次へ行くのかと思っていたら、意外に読みごたえあった。
絵の写真、大きいとは言えないものの、新書なんだからまずまず。
著者はこの本のための取材では4枚が残ってしまったものの、観たことがあると
か、その後観たとかいうのを含めると、「合奏」を除いた36枚は観終わっている。
(「合奏」は盗難に遭って行方不明なんだってさ。)
ワタシは37枚、写真で一応全部観ることができましたヨ! 
著名画家の作品、全部観たなんて初めてだよ。文献的にはあと10枚、描かれ
たとわかっているものがあるそうで、でもおそらくもう見つかることはないんでしょ
う。それとも、代々隠し持っている人間がいるんだろうか。
レンブラント展なんていうのに、ずいぶん前に行ったことがあった。
けっこう印象深い。巨人レンブラントが1606-1669年、フェルメールが1632-1675
年、同じオランダなんだから、面識ぐらいあったんじゃないの? そんなこと書いて
なかったけど。かたや‘肖像画’、かたや‘トローニー’。
(モデルになった女性は、限られたごく少数のかただったみたいに見えた。)
似たタイプの絵のインパクトでは、カラヴァッジオ展というのを、岡崎へ名古屋か
ら車を飛ばして行ったことがある。気まぐれだったんです。これがね、レンブラント
展よりすごかった。なんで行ったのか覚えてない。NHKテレビか何かで紹介して
いる番組を観たんじゃないか。
だいたいねぇ、美術なんてワタシには中学校までだった。高校受験時には科目
としてあったなあ。その教科書にカラヴァッジオなんて画家の名前はなかった! 
その後一般教養としても知る機会もないまま、、、と脱線。
その、なんです、“カラヴァッジオ様式”との関係を書いているところがあった。影
の扱いのことやったか。
さてさて、真贋の怪しいものは特にそうだけれど、出来のいいものとそうでないも
ののギャップがけっこうあるみたいだった。宗教性が薄いのは好ましいし、寓意が
少ないのもいい。その独特の光と影の個性的としか言いようのない扱い方!
美術館単位で観ていくので、時代を追うようなスタイルではないものの、晩年の
作に近づくほど壊れていく(狂っていく)みたいな感じが、解説でよくわかり、悲し
くなっちゃいましたねえ。
一番気に入ったのは『デルフト眺望』。
二番目は、どれと決めにくく、「牛乳を注ぐ女」とか、大味だと書かれている「女と
召使い」あたりだろうか。「真珠の首飾り」や「青衣の女」、勿論超有名な「真珠の
耳飾りの少女」もいいけど・・・
 
イメージ 2