休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

ピーニョ・ヴァルガス/レクイエム他

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20141201(了)
ピーニョ・ヴァルガス(1951- )  Pinho Vargas
(1)レクイエム(2012)  22:49 詞:ミサ典礼
    ①Intoitus
    ②kyrie
    ③Dies irae
    ④Confutatis,maledictis
    ⑤Lacrimosa
    ⑥Offertorium
    ⑦Sanctus  
    ⑧Agnus Dei
    ⑨Libera me
(2)ユダ(ルカ・ヨハネ・マタイ・マルコ伝による)(2002) 31:38 詞:新約聖書
    ⑩Dies festus
    ⑪Ecce manus
    ⑫Domine,quis est?
    ⑬Christus apprehenditur
    ⑭Prodotoris finis
    ⑮Se suspendit
    ⑯Scripturae(canone aeternum)
    グルベンキアン管弦楽団、合唱団
    指揮:ジョアナ・カルネイロ(1)、フェルナンド・エルドーロ(2)
    録音:2012年11月(1)、2004年5月、Grande Auditorio 
        da Fundacao Calouste Gulbenkian, Lisbon, Portugal
        世界初録音
    2014年/CD/現代音楽(宗教)/NAXOS/輸入/ネット
    <★★★★>
 
(紹介文) このレクイエムの作曲家である、アントニオ・ピーニョ・バルガス(1951-)
は実はポルトガルでも有数のジャズ・ピアニストとして知られている人です。彼の
ジャズ・アルバムは世界中で高い人気を得ていて、その音楽もアルデッティ四重
奏団をはじめとした、様々な演奏家によって演奏されています。しかし、この「レク
イエム」は極めてシリアスな音楽であり、これまでのキリスト教に基づいた過去の
作品だけでなく、もっと人間の根源にあるもの…これは先史時代の恐怖と畏れな
ども含めた「死」というものへの畏敬の念が込められた作品と言ってもよいのかも
知れません。曲は捉えようによっては、素晴らしくドラマティックであり、まるで映
画音楽のような迫力をも有していますが、これも受け入れるべきものなのでしょう
か。悲しみの中を漂うかのような「涙の日」、語りかけてくるかのような「サンクトゥ
ス」などに独自の美を見出すことも可能です。「ユダ」はもっと現代的な響きを持っ
た音楽で、テキストは4つの福音書から取られています。普遍的な言葉を音楽に
載せながらも、幾多の理由から、ソリストを使わずに合唱のやりとりで物語を進め
ていく様子は確かに見事としかいいようがありません。
宗教ものに抵抗があるくせに、つい聴いてしまう。なんか、因果・・・
(1)①~③くらいまでは何の宗教というより、キリスト教だけでなくユダヤ教、イス
ラム教、ヒンドゥー教、仏教等でも共通して感じることのできる、どこかおどろおど
ろしい面を音にしたような、もっというと、底なしの悪魔の領域を音にしたような感
じすらうける。キリスト教イスラム教などがきっと混在しているであろう、ポルト
ルの土地柄?なんだろうか。
⑤⑥は悲痛。⑦⑧ではきわめて密度の濃い美しさに充ちている。
⑨は①に似た音色なんだけど、もっと大仰だ。あるいは大仰な昇天という感じ。
(2)ユダというタイトルから受けて当然のような、暗く激しく、鋭い音楽。合唱だけ
の箇所も多い。
ユダが、聞き知っているような人間なら、イエスと他の弟子たちを裏切ることで深
く懊悩する人物像を想像するわけで、まさしくそういう不安な音楽になっているの
ではないか。ところどころでハッとする美しさが現われるものの、不安の途切れる
時はない。一部ではリゲティの音楽みたいに聞こえるところもあった。
幕切れは唐突。
有名なジャズ・ピアニストだそうだけれど、このオーケストレーション、この合唱を
聴く限りでは、しかるべき教育は受けていたに違いない。古めかしさはなく、粗削
りな印象がありつつも、あくまで現代音楽。
とはいえ、なかなか特徴のある和音や音色だよね。ジャズと関係があるのかど
うか、どう表現したらいいのかよくわからない。油気があるとでもいうような和音、
ティンパニの多用できわめて劇的で悲劇的、そして全体として色彩が濃い。様式
美みたいなものは感じない。
ポルトガルの作曲家、まだまだちゃんと聴きたい人がいる。
ブラガ=サントス、フレイタス=ブランコ、フレイタス、グラサなど。彼らをすっ飛ばし
たけれど、すごくはなくても、なかなか沁みて来る音楽で、癖になりそうな気配も。