休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

ヘンツェ : 交響曲 第9番

20200602(了)
ヘンツェ : 交響曲 第9番
      混声合唱とオーケストラのための
Hans Werner Henze(1926-2012)/Sym.9
       〔テキスト:ハンス=ウルリヒ・トライヒェル~アンナ・ゼーガースの小説『7番目
        の十字架』に基づく〕
 ①第1楽章:Die Flucht (脱走) 5:56
 ②第2楽章:Bei den Toten (死と共に) 5:44
 ③第3楽章:Bericht der Verfolger (迫害者の告白) 1:52
 ④第4楽章:Der Platane spricht (平凡な木が語る) 7:41
 ⑤第5楽章:Der Sturz (突入) 7:31
 ⑥第6楽章:Nachts in Dom (大聖堂の夜) 16:37
 ⑦第7楽章:Die Rettung (救済) 7:46

       マレク・ヤノフスキ(指揮)/
       ベルリン放送交響楽団/ベルリン放送室内合唱団
       録音:2008年11月、フィルハルモニー・ベルリン Tot.53:06
       CD/現代音楽/管弦楽&合唱/ⓒ&Ⓟ2009 WERGO/輸入
<★★☆>

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CDの帯紹介文:
「ヘンツェが1996年から97年にかけて取り組んだ交響曲第9番は、ゼーガ
ースの小説に基づくテキストに作曲された、ほぼ休みなく歌い続ける合唱
を伴う大規模な交響曲。・・・内容は、7人の囚人が強制収容所から逃げ
出そうとして失敗。士官たちは他の囚人たちへの見せしめとして、収容所
の7本の木を切り倒し、十字架を作り、7人を磔にしようとします。しかし
7本目の十字架に乗るはずだった囚人は、脱走に成功。誰もいない7本目
の十字架が、抵抗の象徴。独裁者への勝利のしるしとして描かれる物語で
す。・・・不安で焦燥感いっぱいの「脱走」から始まり・・・「7」の楽
章から成ります。最後は「救済」と題されていますが、終わり方は極めて
不安げなまま。独裁による人道の危機が終ることはない、というヘンツェ
のメッセージがこめられているようです。

 

誰が信用できるのかという疑心暗鬼が大きく、家族・友人・収容所長など
色々な立場から立体的に描かれ、人間の弱さと希望を伝える・・・
とまあだいたいこんな感じだそうな。ゼーガース自身の体験に基づいてい
る。ドイツの抵抗文学の代表格。それをテキスト化したものを歌う合唱つ
きの大交響組曲
もっとも、ゼーガースの本の文言はまったく使われていないんだって。

なんてね、外枠のことを長たらしく書いてしまうのは、聴くのがしんどか
ったからです。でかい編成のオケと合唱でもって、ガンガン来ます。
10年前なら楽に聴けたかもしれない。それより前なら投げ出した公算大。
7番をちょっと齧って、その猛烈な(≒おどろおどろしい)音楽に撃退され、
しばらくヘンツェをお休みしていたのに、安かったから(!)つい、仕入
れてしまった。
ところが、なんとも苛烈なこと!映像を補う感じ。補い過ぎ・・・ ある
いは映画にしたものを音楽的に圧縮しちゃったとか・・・
始めは怒りのようなものを強く感じた気がしてたじたじ。馴れるまでにし
ばらくかかりましたね。そして、どうやら怒りではなかった。

①サスペンスフル。巨大な音塊。
②死があっけらかんとしていない。陰気。
③テンポはあるが、気持ちのこもらない音。
④これも一聴美しい部分もあるが、気持ちのこもらない恐ろしい事実の
 羅列・・・
⑤不安な調子が続くも、だんだん激しい感じに。サイレン、呼子。おしま
 いは弦だけの一聴美しい、でも不安の勝った音楽。どこかレクイエム。
⑥長い楽章。オルガンが加わる。大仰。合唱だけになったりオルガンだ
 けになったり。
⑦「終わり方は極めて不安げなまま」と紹介文にあるが、美しいところの
 少ない音楽の中では、ワタシは終わりは美しい、抒情を感じました。弦、
 合唱、ホルンなど。ぎりぎりだけど、不安はなんとか通り越したみたい
 な。でも宗教的ではないように思う。

物語に基づいている曲なんだからしょうがないけれど、わくわくするとこ
ろのない音楽。ま、ヘンツェはだいたいそうか。
ベートーヴェン(の9番)を意識しなかった作曲家みたいね。ちがうかな。