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恥ずかしい話ですが・・・ |
今年になってから、俳優山崎努さんのエッセイを読んでいたら、下にあ |
げた3冊のエッセイの単行本のことが取り上げられていて、まるで座右 |
の書といった扱い。何度読み返しているかわからん・・・なんていうじゃ |
ない。 |
①決められた以外のせりふ(昭和45年) |
②肩の凝らないせりふ(昭和52年) |
③憶えきれないせりふ(昭和57年) (いずれも新潮社) |
このうち①と②は昔なぜか単行本で読んで、面白かったので、ずっと実 |
家に置いていたんだけれど、昨年末わけあって戻ってきたら、住む場所 |
が優先だろ!ということで、本もせっせと二束三文で処分。その中にこれ |
らも入れてしまっていた。今ごろはどこぞの古本屋に並んでいるいるか、 |
もう買われて、誰かの書架におさまっているか。箱入りの立派な装丁本 |
だった。 |
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ああチクショー、こんなに面白い本だったんだ、とまあ処分した張本人 |
のくせしてよく言うワ、と勝手なもんで、なんと、またぞろ読んでみたくな |
ってしまった。 |
で、探し当てたのがこれ。 |
上記3冊から選んで編みなおし、文庫本で出されたもの。 |
だからおおよそ三分の二は読んだことがあるわけだけれど、実はほと |
んど覚えちゃいないのは、いつもの通り。 |
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さらにまた恥をさらせば、御父君の本は、この2冊分ほども読んじゃい |
ない無教養者なんですが、そんなワタシでも、この息子さんの文章、余 |
計なものを入れ込まない清潔さや、教養のひけらかしには絶対にならな |
い自然な語彙による読みやすさ、等々、ジャンル的にもワタシ好きなん |
でしょうが、とまれはっきり言って抜群じゃないですかね。それでいてに |
じみ出る演劇への情熱。40歳代後半から50歳代前半のよう。 |
丸谷才一さんが編まれたというのもむべなるかな。(丸谷氏にとっては、 |
やむなくというほどでもないが、実は個人的理由が少しあったようでし |
た。) |
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父君の文学関係ならばさもあろうが、演劇系については特にそうで、友 |
人知己や付き合ったり会われたりされた方々が、綺羅星のごとくで、読 |
んでいる文科系の無教養オッサンであるこっちはくらくらするほど。ご本 |
人はいたって落ち着き払って書かれていますがね。まあ、多く病床にあ |
ったりなどして、思いだし思いだしという感じの文章なもんだから、冷静 |
であるように読めるだけで、リアルタイムではそうでもなかったのかもし |
れません。(そんなことはどうでもいいことです。) |
内容は巻末の「解説的対談」に詳しい。 |
人となりも結構わかるが、面白かった一つは、新劇の衰亡のわけ。どう |
やらこの対談によれば著者はほとんど絡むことはなく、大きくかかわっ |
たのは、福田恆存、杉村春子、三島由紀夫ら。そのいくらかいきさつと |
いうか理由というか。 |
もう一つは、著者の文章のうまさのことで、ひょっとしたら父君よりもう |
まかったのではないかなどというのね。さらりとしていて含蓄があり、毒 |
味の隠し方なんかが巧み・・・ |
メインは やっぱり「Ⅳ 自伝の材料」かなあ。 |
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ワタシにゃなんの権威もなく、井の中の蛙のただの好みであることは断 |
わるまでもないけれど、やっぱりオモロイやん! |
傑作エッセイだと思います。 |
(ただし、ごく普通の‘厚み’の文庫本にしては、その倍ほどの定価なん |
で、ちょっとびっくり) |