休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

山田風太郎/「警視庁草子」

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20140810(了)
 
山田風太郎/「警視庁草子」 上・下
  (上巻)
   明治牡丹燈籠
   黒暗淵(ヤミワダ)の警視庁
   人も獣も天地の虫
   幻談大名小路
   開花写真鬼図
   残月剣士伝
   幻燈煉瓦街
   数寄屋橋門外の変
   最後の牢奉行
            解説            関川 夏央
  (下巻)
   痴女の用心棒
   春愁 雁のゆくえ
   天皇お庭番
   妖恋高橋お伝
   東京神風連
   吉五郎流恨録
   皇女の駅馬車
   川路大警視
   泣く子も黙る抜刀隊
            解説            西 義之
            亡びゆくものへの郷愁 木田 元
            編者解題         日下 三蔵
   2010年/小説(ミステリー系)/上下2冊/角川文庫/
       底本;ちくま文庫/山田風太郎明治小説全集/古本
   <★★★★>
 
いきなり西郷隆盛や、岡本綺堂のあの半七親分が出てくる。いやー、特
に半七はここまで出演していただいてヨロシインデスカイ!てなもんで、
驚くも何も、うれしくなっちまった。
この時代の有名人が物語を横切るようにいろいろ登場するが、こんな風
に説明的な記述になっているところも時々ある、その例・・・
  ――この元お城坊主の倅鉄四郎がのちに露伴となる。兵四郎の頭に
 もう記憶にもないが、いつか新宿女郎屋町の格子の奥にいた男の子、
 すなわちのちの漱石がやはり同じ年である。
  そしてまた、この物語から離れて、別の天の視点から見れば、同じ東
 京の芝神明町に、のちに紅露と並び称された尾崎紅葉が、象牙彫刻師
 赤羽織の谷斎の子徳太郎として同年で遊びたわむれていたはずだし、
 また遠く四国松山では、後年漱石の親友子規が、松山藩馬廻り役の遺
 児正岡升(ノボル)としてやはり同年で学んでいたはずだ。すなわち彼ら
 はすべて徳川最後の年の慶応三年生まれで、のちに文学史家が明治
 文学の水滸伝的現象だと感に打たれたのもむりはない。
                                  (「幻燈煉瓦街」)
むりはないって書いているが、まあここでの子規のことともなると本筋の
ストーリーとは何の関係ないわけで、浮いている。上記など結構無理無
理だよという気もするものの、もともと常套的で許されちゃうってのが、ワ
タシなんぞの山田文学のイメージ、かな。
漱石なんざ、ここまでに二度ばかり出て来たんじゃなかったか。夏目家と
樋口家のかかわりもあったことからの創作として子供の漱石と一葉が一
瞬口をきくシーンまである。こんな風に有名な歴史上の人物が、時にちゃ
んと登場人物としてセリフまで与えられて登場しては消えていくというあし
らい(Special Guest Starring!)が楽しく、“むふふ”もの。
森林太郎君の絡み方も素晴らしい。
(ホントはきらきら出て来るゲストのみならず、レギュラークラスの出演者
についても、たいてい実在の人物をアレンジしているんだそうです。)
時は、維新から数年たっている。5年から10年の間ぐらいかな。
中身はその時代背景におけるミステリー。頓智の物語であったり、密室殺
人であったり、幻想譚だったりもする。
まあ、ジャンルはいろいろながら、まさに連作短編集。然るべく煮詰まる。
南町奉行のグループと警視庁のグループとが、併行、対立、あるいは
騙し合い、交差し合って活躍する。
忍法怗シリーズなどでもふんだんに出てきたエロっぽい場面もちゃんとあ
ります。ありますが、むしろなんだか懐かしいような感じ・・・、ワタシが単に
干からびただけなのかもしれません。
上巻解説者の一人関川夏央は、
 「一行を読めば一行に驚く」
 「・・・まさに文芸の最高峰につらなる偉大な小説である」
とかなんとか、べた褒め。特に「幻談大名小路」。
下巻解説の西義之(東大独文関係の有名な先生のはずで、知ってます。
翻訳したものを読んだことがある、多分ヘッセ) の解説では、司馬遼太郎
の文学(「坂の上の雲」「翔ぶが如く」あたりのことやね)が明治初期のポ
ジの写真だとすれば、風太郎のものはそのネガフィルムだと説いて、いろ
いろな説明を整然と書きつつ、涙ぐませもすると絶賛する。どちらもたいそ
う愛読者。
ミステリーの傑作という括りで、ちゃんと扱えば、もっともっと読者を獲得で
きるんじゃないでしょうか。
ワタシもミステリー関係の紹介から見つけてリストアップしていたように覚え
てはいます。もう当然古典としての扱いにはなるのでしょうけど、そんなに必
読ミステリーといった風に紹介されたものじゃなかったなあ。
アイルズ、クロフツヴァン・ダイン、クィーン・・・などのような正統的謎解き
とは基本的に違うし、乱歩や横溝正史とも全く違うけれど、日本人の感性に
は猛烈に訴えかけてくるものがあるミステリーじゃないでしょうか。
ま、いわゆる‘謎解き’部分なんかうんと変則で、だからやっぱり伝奇小説と
いうのが妥当なんでしょう。
ジジイには読んだことのある人もそこそこいると思う風太郎作品だが、若い
人にぜひ読んでほしい。驚天動地のエンタテインメント。
絶対古くない。
いや、新しくてびっくりした。
(ヴァイオリンを触る長男の本棚にも、まだ同居している頃だけど、風太
の忍法怗が何冊かあったっけ。これは読んでないだろうなあ。風太郎の本
はヤツにとってエロ本だったり「ヰタ・セクスアリス」ふうなものだったりした
のだろうか。風太郎のことなんか話題にしたこともない。)
台風11号が通過しているころ、読了。
雨台風でしたねぇ。
次に読むつもりの本(子供の本です)へのこじつけ・・・
 ※西義之
  小説家・詩人・歌人俳人著作家・作詞家・脚本家・作家・劇作家・放送
  作家・随筆家/コラムニスト・文芸評論家
  1922年5月20日 - 2008年10月9日 日本のドイツ文学者、東京大学教養
  学部名誉教授。
  ヘッセ、ツヴァイクなど翻訳多数。60年代から70年代にかけて、進歩的知
  識人を批判、論争し、相手方から「ファシスト」と呼ばれた。
  1975年の『誰がファシストか』では、西欧のファシズム研究を紹介しつつ、
  進歩派こそファシストではないかと批判した。このあり方は、東大教授の
  先輩に当たる竹山道雄を継承するものである。云々
  前記山田風太郎の本だけでなく、芥川比呂志のエッセイを読んでいた時
  にも出てきた西義之先生の名だけど、東大の先生としては竹山道雄が先
  輩で、しかも接点大あり(ファシズムに関する研究などもろもろ)だったん
  だそうな。というつながりで・・・ その竹山道雄終戦記念日も近いことだ
  し・・・
  嘘です。単に未読で手近にあったから。