休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

リヒャルト・ワーグナー;序曲集/クナッパーツブッシュ指揮

20240212(了)

RICHARD WAGNER ; OVERTURES

 CD1

(1)歌劇『リエンツィ』序曲 13:27

(2)楽劇『さまよえるオランダ人』序曲 12:14

(3)ジークフリート牧歌 18:58

(4)歌劇『リーエングリン』

     第1幕への前奏曲 7:18 

                           以上<★★★☆>

 CD2

(5)楽劇『ニュルンベルクのマイスタージンガー

     第1幕への前奏曲 10:44

(6)歌劇『タンホイザー』序曲 15:59

(7)楽劇『トリスタンとイゾルデ

     第1幕への前奏曲と<愛の死> 15:24

(8)舞台神聖祝典劇『パルジファル

     第1幕への前奏曲 11:42 

                         以上<★★★★>

    ハンス・クナッパーツブッシュ指揮

    ミュンヘンフィルハーモニー管弦楽団

    録音:1962年11月、バイエルン・スタジオ
    CD/2枚組/管弦楽曲/Ⓟ&Ⓒ MCA Records/中古

古いが「大物」です。
 
中古屋で偶然見つけた代物。Westminsterレーベルの、昔っから

名盤の誉れ高い2枚のアルバムで、1枚づつ出たり2枚組になったりしてい

ました。

日本では、ワタシの記憶では、始めは日本コロンビアで、次がキングレコ
ドだったかな。音はあまり良くはないだろうけれど、偉そうな評論家がほめ
ちぎるものだから、いつかちゃんと聴いてみようと思っていたのですが、色
色好みも変わってきて、放置してきました。
ジジイになってから思い出して、「ほしいものリスト」に入れていましてね、
まあいつかネ、なんて思っていたんです。それがなんと、時間調整のために
入った中古屋で見つけちゃった。アメリカのMCAレーベルなもんだから、は
じめわからなかった。曲名を見ていて同一内容だとわかった。しかもセット
なのにうんと安い!(調べると、現在はドイツグラモフォン/Universal Musicに移っ
ているそうな。) 音質は聴いてみなきゃわからないが、一応ちゃんとデジタ
ルリマスターされているようだから、ひどい失敗さえしてなきゃいいと購入。
ジャケット写真はいささかチープ(じゃない?)。

  (上の写真は、現在の(多分MCA盤より前のもそうだったと思う)の、

    2枚のアルバムの片方。普通にみて、やっぱりこっちのほうがいい感

    じだと思うなぁ)

 

期待は、カール・シューリヒトというヘンな名指揮者と対極なのに、「どっち
もすばらしい!」と感じられること・・・
 
よかったですよ。シューリヒトとの比較なんていう少々バカげたことについて
も、実にくっきりとした面白い違いがありましたしね。
シューリヒトのテンポが速めですっきりしているが、あちこち小粋な絶妙のテ
ンポの動かしなどがあって、それが曲全体を豊かなものに思わせてくれるとい
う感じ。なんでもそうというわけじゃないですけどね。
クナッパーツブッシュは、逆にテンポが遅く、悠揚として迫るところがない。
いやむしろそこまで遅くして大丈夫なのか?と言いたくなる時すらある。テン
ポをちょっと早めたり、表現を繊細に弄ってみたり、なんてことがない。
シューリヒトのワーグナー(序曲集)も「意外に」よかったのですが、このク
ナッパーツブッシュの指揮によるワーグナーは、歴史的ワーグナー演奏という
か、これが直伝のワーグナー演奏なんだというような(実際にはそうじゃない
わけですが)有無を言わさぬ説得力のようなものがみなぎっている気がしまし
た。そして派手さとか外連味なんか、ワタシには全くと言っていいほど感じら
れませんでしたね。昔からの擦り込みかもしれませんけど。
 
ミュンヘン・フィルの演奏水準はとても高かったように思います。
ならばなんでこの点数なのか。何が悪かったのか。
ひとえに録音ですね。
この後、ユニバーサルミュージックに移ってデジタル・リマスターされたでし
ょうが、どれだけ良くなったか疑わしい。つまり・・・ ホールでなくスタジオ
録音で、しかもホールトーンがまったくなく、響きの工夫もしていない。トス
カニーニNBC交響楽団ほどじゃないけれどね。なんで響きのいいホールがた
くさんあるでしょうに、そうしたコンサート会場を使わなかったんだろう。ヘ
ンなの。にもかかわらずこの2枚が名盤扱いなのは、ただただ演奏がいいから
でしょう。ワタシもいい演奏であることは疑わない。ですが、この残響がほと
んどない音には困惑しました。残念この上なし。
 
ワーグナーの名曲がずらりと並んだものですし、演奏のほうは甲乙なくすばら
しいので、曲ごとに書くのはパスします。
小細工することはほとんどなく、ほとんど朴訥といってもいいような音楽の進
めみ方なのですが、それがなんというか、神聖さのようなものと不思議に見事
に結びつく感じ、とでも言えばいいでしょうか。
 
あえて、ワタシの好みの度合いで言うなら、2枚目が粒ぞろいでしょうか。
特に、官能的というのとはちょっと違う感じの「トリスタンとイゾルデ」あた

り。また神聖さというなら勿論「パルジファル」。ドーンと来るのは「マイス

タージンガー」。

それにしても、テンポが遅いというイメージがありますが、言われるほど遅い
ですかねぇ。ブルックナーやウィンナ・ワルツなどのレコードも聴いたことは
あるが、ウィンナものがいささか重かったという記憶以外はほぼ忘れてしまい
ました。いやつまり、今回は聴いているうちに、だんだんそんなに遅いという

わけでもないんじゃないかという感覚になってきたということなんです。ワタ

シ自身の年齢のせいということはあるかもしれません。

 
ま、やっとこの2枚、聴くことができて、やっぱり、よかったというしかない。
積年の懸案をクリヤしたような、ちょっと、ほっとしたみたいな感覚です。
さっぱり系なのに独特の味を作るシューリヒトとは対極のようなアプローチで
あって、しかも共に優れものであると確認できたこともよかった。

  追記;
 ロンドンにウィーン・フィルとの一枚ものの「ワーグナー名演集」というの
 がありましてね、オケの魅力のみならず、フラグスタート、B・ニルソン、G
 ・ロンドンの名唱もちょっとづつ聞けるという名盤。今回、ほんとに久しぶ
 りに引っ張り出して聴いてみました。上掲写真。まさに絶品。録音も50年
 代なのにこっちの方がいい。ウェストミンスター盤、せめてこれぐらいのホ

 ールトーンがあればなぁ・・・とまたもやしつこく、激しく残念がってしま

 いました。

 (4年前に、感想文書いてました)