休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

マタチッチ/ブルックナー 8番 ライブ

20220924(了)
  マタチッチ/NHK交響楽団 ライヴ・エディションⅠ
  Matačić/NHKso. 1975 Live

ブルックナー交響曲 第8番 ハ短調

Anton Bruckner(1824-96) Symphonie Nr.8 c-moll
  ①14:04 ②14:06 ③26:22 ④19:39

  ロブロ・フォン・マタチッチ指揮/NHK交響楽団
  収録:1975年11月26日 NHKホール N響定期公演より
  CD/交響曲/Ⓟ&ⓒ 2002 Tomei Electronics“Altus Music”
               /NHK-CD/キング/邦盤/中古            
  <★★★★>

 

しばらく聴いていないブルックナーをリストアップしてるものから選んだのが
これ。
ロブロ・フォン・マタチッチ(1899-1985)。 日本語の語呂としてはいささ
かヘンテコリンですよね、昔っからそう思ってるが、言えないのです、、、
オーストリア=ハンガリー帝国生まれ。ユーゴスラヴィアを経て、今でいうと
クロアチア出身ということになるそうです。
レパートリーは決して狭くない指揮者で作曲もした。歌劇場が主戦場の方だっ
たのに、日本では何故か断然ブルックナースペシャリストとして有名になっ
た。レコードはいろいろなジャンルが出てました。
いったい誰のせいでそんなことになったんだ? なんてね。(ハハハ) なぜ
だか、いくらか覚えていますけど、まぁそれはここではいいでしょう。
 
この録音は1975年のライブですから、テレビで観た可能性はありますが、
これとは限らない。後年(最晩年)にもN響と演奏している(録音も残って
いるそうな)から、そっちかもしれない(記憶は映像込み)。レコーディン
グ・セッションものとしては、チェコ・フィルとのものがスープラフォン/
日本コロムビアから出てました。この録音は多分聴いたことはありません。
ワタシのブルックナーの8番の基本は、始めこそフルトヴェングラーの疑似
ステレオ(偽ステと言ってましたっけ)でしたが、結局繰り返し聴いたカー
ル・シューリヒトという指揮者のもので出来上がりました。7番も9番も。
この方、ところどころで独特の小節をきかせたとでもいうような表現を採る
割には、全体としてはテンポが速くあっさりとした印象で、押しつけがまし
くない。えもいわれぬ音楽的喜びに満ちた演奏になることがある。それは残
念ながら、いつもというわけじゃないんだけど・・・という感じ。
シューリヒトに比べれば、フルヴェンもクナッパーツブッシュも大仰。「大
時代」を地で行く感じ。悪いという意味ではありません。でもこれもはまる
とすごい。特にクナッパーツブッシュのスローテンポたるや、、、 で、始

めはマタチッチもそういう古い巨匠タイプ、と想像してましたねぇ、ワタシ

は。

前置きが長くなりました。非常に評価が高いこのライブ、どうでしょう・・・
 
それは、オケがN響だったからかもしれませんが、全然「大時代」なんかじ
ゃありませんでした。
落ち着いたサウンドながら、録られている音が概して軽く、ブルックナー
厚みとしては乏しいぐらい。それに音楽の流れもしつこさをほとんど感じず、
一種爽やかなほどだったし、そもそもスピードだって普通(と思う)。やは
りいろいろと、N響NHKホールのせいはあったんじゃないかなぁ。
もっと、こう、腹にズドーンと来るんじゃないかなんて思っていました。
予想とは違ってしまいましたが、悪くはなかった。それに、おしまいに行く
ほど燃えてましたなぁ。結構あちこちでN響のトチリは聞こえました。でも
ね、ライブです、この程度はままあることなんじゃないでしょうか。
84年のN響ライヴやチェコ・フィルとの録音にも興味は湧くものの、やは
り、7番と9番だけは、マタチッチでも聴いてみたい気がします。
 
さて、ここまで書いたことと矛盾することもあるかもしれません、長くなり
ます。蛇足、でもないのですね、これが。
 
特に第4楽章って、こんなだっけ。版のせいじゃないのかなぁ、今までの感
じとちょっと違ってたぞ・・・ で、
 
カール・シューリヒトの録音(1963年)、聴いてみました。録音はいまいち。
例によって、ミスっていても音楽を壊してない場合は、そのまま!
やっぱり、シューリヒトのもの、すいすい速く、かつ音楽がくっきりしてい
るというか、どこかすっくと起立したたたずまいで、しかも、独特の勢いが
ある。それにウィーン・フィルがどっしりと底力を発揮しているんだよな。
それに比べりゃ、N響はホンワリしているといってもいいほどで、こんな強
い音は出ない。どっちがライブだかわかりゃしない。
もっとも、こりゃあ、マタチッチとは明らかに「版」が違うね。ブルックナ
ーじゃしばしばあることで、しょうがないんだが、別の曲みたいに聞こえち
ゃった。ワタシにゃ、特に第4楽章。
 
以下、受け売りです、シューリヒトのは「1890年版」《第2稿》《ハース校
訂版》というのが基本。ただしアダージョの一部は《ノヴァーク版》に従っ
たカットをし、細部にはノヴァーク版による表情付けを採用。
また終楽章もほとんどノヴァーク版を採用し、一部小節をカットしている。
 
けっこう複雑な版の採用方法だね。
これに馴染んだために、別の曲みたいに感じたのだろうか。
 
一方マタチッチのほうは、基本はノヴァーク版ながら、あちこちで、他の改

訂版も採用しているそうな。(それじゃ、第4楽章は似たようなもんじゃな

いか!)

第4楽章はシューリヒトのほうが、わかりやすくスッキリ突進しているが、
マタチッチのほうは、なんとなくワーグナーの舞台神聖祝典劇『パルジファ
ル』みたいな神聖さを存分に含んだニュアンスでもって終っている。なーん
て、ちょっとオーバーだけど、特に最後なんか、感極まった客が一斉に「ブ
ラヴォー」を叫んだのは、珍しく、わかる気がしたなぁ。(あの「ブラヴォ
ー」、好きではないというか、ほとんど嫌いなんだけどね)
 
(ハァ、実は元々こうしたうだうだが好きで、第3楽章もこんなふうなこと
を書いてみたかったのですが、少し疲れました。だからブルックナーはたま
にしか聴かない)

(「神々の黄昏」、ちょっと聴いてみたい)

(ともあれ、もう語りつくされたであろう演奏についてのうだうだでした。)