休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

映画『あの日の声をさがして』

20240201(了)

映画『あの日の声をさがして』

  監督:ミシェル・アザナビシウス /ベレニス・ベジョアネット・ベニング
  原案:フレッド・ジンネマン監督の「山河遥かなり」(1947)
  2014年製作/135分/仏・ジョージア合作/原題:The Search
  <★★★△>

第二次チェチェン紛争の始まり(1999年)からしばらくを、1947年のジンネ
マンの映画を下敷きにして映画化したものらしい。
 
話は二筋。
ひとつは、チェチェン領内に攻め込んできた狂気のロシア人兵たち(といっても
おそらく近隣の小国から招集されたやくざ者の集まりか)に、父と母がいたぶら
れたうえ、無残に殺された9歳の少年ハジの話。
この時、姉も殺されてしまったと思いこんだハジは、赤ん坊の弟を抱いて逃げ出
す。しかし自分では育てられないことはわかって、国境近くのある家に弟をおい
て先へ進みさまよう。そこでEU赤十字のような女性職員キャロルやNGOのよう
な組織(ひょっとして国連?)の職員と接触し、キャロルの思い付きから同居を
を始める。一方ハジの姉は赤ん坊を見つけるとともに、ハジを探し始める。
女性職員の懊悩などもあるけれど、姉弟の再会に収斂するのかどうか。
もうひとつの話は、ロシア国内もしくは近在小国内で、つまらないことで掴まえ
られ、軍隊に放り込まれた19歳の男が、低劣至極ないじめや暴力に耐えるうち、
それに馴染み、ろくでもない兵士に変貌してゆく様を克明に描く。
 
この二筋の話は、直接絡むことはしないまま終わるのだが、このような兵士を多
く含んでいたであろう軍隊がチェチェンに攻め込んだということでは、関係性は
あるという程度。
一番最初のハジの両親の殺戮が、あまりに真に迫っていたので、こりゃあドキュ
メンタリーかと一瞬どぎまぎしたほどだった。そうでないとわかってホッとした
もんね。やがて19歳の男の変貌ぶりとつながったし、現実のロシアによるウク
ライナ侵攻における戦争犯罪をもろに想起することにも繋がってしまった。
原案だというジンネマンの映画はまったく知りません。

まあそんな映画。
時のロシアの大統領はエリツィン、首相がプーチン
足りない気がしたのは、チェチェンの軍隊のこととか、EU内の組織やNGOっぽ
い団体のやっていることが今いち見えにくかったことなどでしょうか。気にはな
りました。観直せばいくらかわかったのかもしれません。
北オセチアなどというめったに聞くことのない国名(国でなく単に自治が認めら
れているだけの一地方なのかもしれない)が出てきましたっけ。景色を見てい
て、去年観た『コーカサスの虜』をちょっと思い出しました。山並みや平原。

     (言葉・民族・宗教がいかに複雑に絡み合っているか)

毎度のことですが、邦題はこんなんでええのって言いたくなる。
音楽は、ギターをポロポロッと流す程度。これでよかったと思います。