休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

映画『コーカサスの虜』

20230803(了)

映画『コーカサスの虜

 監督・脚本;セルゲイ・ボドロフ/オレグ・メンシコフ/セルゲイ・ボドロフ Jr.
 音楽;レオニード・デシャトニコフ
 1996年製作/95分/ロシア&カザフスタン
 原題:Kavajazski Plennik/Prisoner of the Mountains/DVDレンタル
 <★★★☆>

ロシアとカザフスタンの合作映画。
でも場所はというと、「トルストイの原作を、現在のチェチェン紛争に舞台
を置き換えた本作の撮影は、チェチェンに隣接するタゲスタンの集落で行わ
れた」とあって、チェチェンの紛争がモデルなんやね。
 
よくある捕虜同士の交換のために生きたまま連れ帰られたロシア兵2人。一
人しか要らないが、片方は死にかけてるんで、と殺さないまま二人とも連れ
帰ったのが、死にそうなのも元気になっちゃった。
恨みや紛争や殺戮は、いたってのんびりして見える普段の生活の中に、あた
り前に存在している。捕虜である状態も然り。
死生観も妙に割り切ったものに見える。
 
ロシア領の中にチェチェン人が入るのは、かなり「まなじりを決して」行く
感じはあるが、いっぽうロシア人のほうは、なんとなく平然とチェチェン
内にずかずか入り込んでくる感じか。
でもまあ、上下関係は厳然としてあるが、隣り合わせの感覚ではあって、い
かにも皮肉や諧謔に満ちている。この辺がこの映画の面白さ、と言っては失

礼だろうか。長い諍いのただ今現在、という表現。イスラエルパレスチナ

の関係とは違うとは思うが、でもどこか似てない?

 
顔なんぞ違わない、言葉も通じる
‘人は争うものである’としか言えない世界中の紛争地のひとつというだけ。
こういうもので悩まないと人じゃない、みたいに争いがないとならない人の
本質には、別に暗くなることもない、そんなもんだよ、運が良けりゃ宇宙時
代に生き延びることもあるかもしれないけれど、なかなか難しいよねぇ、き
っと、といった感想で終わる。掘り下げはしてくれない。当然だけど。
 
おしまいは、せっかく人情というものを見せてくれたその瞬間、やっぱり!
という皮肉にちゃんと戻して締めくくってくれている。
日本人には理解しにくいが、乾燥しきっているものの、どこか不思議と叙情
味は感じられる。人間性の一部と言っていいかどうかはわからん。

 

ところで、この紛争の裏では、その後関連的にポリトコフスカヤやリトビネ

ンコが暗殺された、その紛争のことと考えていいのだろうか。それとはまた

別の世界の(紛争の)ことと考えていいことなんだろうか。

何を観たことになるのか、幻想味の強い不思議な映画世界でした。

音楽担当は、クレーメルとの(ピアソラ作品などの)作曲や編曲の共同作業
で非常に有名になったであろうデシャトニコフ。
といってもデシャトニコフさんが印象に残ったわけじゃなく、何曲かあった
中の最初のソース・ミュージックがこれのみ英語の歌で「Go down Moses」。
歌っていたのがどうやらまだジジイでないやや若い声のルイ・アームストロ
ング。キリル文字でわかりにくいが、歌手名はそう思ったからだけど、、、

そう読めた。だからどうなんだ、と言われても困ります。それだけのことな

んで・・・