休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

杉浦日向子/『合葬』

20230802(了)

杉浦日向子/『合葬』

 ハ・ジ・マ・リ
 一~七、了、長崎より
 あとがき
  解説 小沢信男
 1987年/漫画/ちくま文庫//1982-83「ガロ」掲載/1983青林堂(章追加)/
 中古
 <★★★△>

 

江戸好きだった杉浦日向子さん(1958-2005)の初期の漫画で、「上野戦争

(前後)の話。
彰義隊が中心にあって、その構成員になるかならないか、などがいたって身
近な市民生活のレベルの中で描かれる。
三人の10代の若者の考えかた、感じかたを集約すると、
 
 バカげた戦だという大局観/主君に殉じる決意/所詮は時流の渦に
 巻かれる境遇
 
こういったもの。
庶民生活の中では、
 
   「……このきせるはちょいと面白いね、アノー上野の戦争の時分にゃ随分
 驚いたね、ェェ!? ウン、雁鍋の二階から黒門へ向かって大砲を放した

 時分には、のそのそしてられなかったァな、ウン、買いたくねぇきせるだ

    な。」

 
これは志ん生の「火焔太鼓」のまくらからの引用で、始めに書いてあるので
す。道具屋での世間話で、多分「大砲」がぶっぱなされるところなんだろう、
関係あるのは。確かに上野戦争のことがひょいと挟まっている。
「その感じ」をずっと念頭に置いて書いたんだと作者は言う。
 
解説には滅びゆく江戸の風俗や情緒がわかりやすく書かれているとある。
それが主眼なんだろうという気はするものの、歴史的人物の顔はともかくと
して、メインのキャラクターとその周りの何人かが妙に似ていて、しょっち
ゅう混乱したこと、セリフや説明の文字が小さくて、えらく困った(本当で

す!)こと、なども併せて印象に残ってしまいました・・・残念。もう小さ

い文字はアカンな。

いや、二十歳前の若者の国に関する信条の、あるいは信条のなさの、痛々し
さは、市民感情ともども、とてもよく描かれていたとは思っていますよ。
 
 維新は実質上維新(コレアラタ)なる事はなく、末期幕府が総力を挙げて改革
 した近代軍備と内閣的政務機関を明治新政府がそのまま引き継いだにすぎ
 ない。

 革命(revolution)ではなく 復位(restoration)

 である。 (最終章の頭)

 
『合葬』の意味は、小沢信男氏が最後に解題している。もっとも、そうされ
るべきものはほかにもたくさんあったように思えました。

小沢信男さんて、なんか読んだことがあるなぁ、もう忘れちゃいましたけど、

確か東京という町の話だった・・・
 
始めは「ガロ」への連載だったんですね。ワタシもむかし「ガロ」を時々読
んだが、手塚の「火の鳥」(始めのほう)のために、「COM」のほうを多く

読んでましたっけ。懐かしい。1982~83の掲載と載っているので、「ガロ」

はそのころはまだ出てたんだネ。