20240119(了) |
映画『ザ・ホエール』
ダーレン・アロノフスキー監督/ブレンダン・フレイザー/ホン・チャウ/ |
セイディ・シンク/サマンサ・モートン/タイ・シンプキンズ |
2022年製作/117分/米/原題:The Whale/DVDレンタル |
<★★★☆> |
デブ(巨漢)なってしまった男の後悔まみれの最期の一週間。贖罪の物語とい |
うか、しんどい会話劇でした。 |
はっきり言って、こんな身動きが取れないまでに太ってしまう必然は、普通は |
ない。だんだんわかって来るには来るんだけれど、わかってはみても、あくま |
でこの男の場合ということでしかない。確かに切実ではある。「命」の状況も |
鬱血性心不全のために逼迫している。 |
なんとかトイレに行くのと玄関先のピザを取りに行くのがやっとという男。従 |
って彼の部屋の中だけが舞台なので、ほとんど舞台劇同然。 |
もともと大学の講師だったのだが、今は覆面講師として学生に文学だか文章だ |
かを教えている。教養は高い。エッセイのネタに『白鯨』を使っていて、それ |
が話の進み具合や収斂するべき場所にも、うだうだと絡んでいる。 |
彼が、おしまいのほう、ある激したシーンで、体のあちこちの不調や不都合を |
一気に述べ立てるところがありました。そりゃあ、さもありなん。骨付きチキ |
ンをほおばりつつ、それらを我慢し続けているというだけでも、暗澹とさせら |
れちまう。 |
すべての始まりは大学教師である彼が、ある男子学生と恋をし、家庭を(妻と |
当時8歳の娘を)捨ててしまったこと。 |
恋の状況や行方、妻との約束事、娘の育ち方、などが徐々に明らかになる。 |
彼とコミュケーションを採っている、あるいは採ることになるのは、まずはモ |
ンゴロイド顔の介護系ナースの女性(自死してしまった彼の同性の恋人の妹)。 |
彼の現在の体の状況を最もよくわかっている。次は「ニューライフ」とかいう |
キリスト教系新興宗教の若い宣教師。彼はたまたま布教に訪れた。宗教と出自 |
に関係ある談義が中心。そのあとは、男の頭の中の大半を占める「娘」。16歳 |
だったかな。頭はいいが、父を求めつつも激しく憎み、こっぴどい問題児で皮 |
肉屋。会えば父を詰り続ける。 |
最後に出てくるキャラは、妻。そうだ、ピザの配達人がいました。あれだけピ |
ザ(と鶏)ばかり喰えば興味も持たれる・・・ |
さあ、しんどい会話はどんなふうに進むのでしょうか、、、 |
やっぱりねぇ、救われて(≒赦されて)ほしいと思っちゃいました。 |
すごいメーキャップと熱演もあってオスカー(主演男優)を獲ったものだから、 |
すっかりメジャーな作品になっちゃった。観た人も多いはずなのに、鑑賞記が |
少な目なので、なんだかアップしづらくって。気にしてもしゃーないですが。 |
(百貫というと375㎏か。あの男は、そこまでではないとは思うが、いや |
いやすごいメーキャップでした。最後は巨大なシロナガスクジラが海から |
半身を突き出して、空にでも昇らんとするかのごとき感じ、そんなイメー ジがありました・・・) |
オシマイ。 |
以下は付録。音楽ネタです。茶化しているつもりではありません。 |
「デーブーデーブー 百貫デーブー 電車にひかれてペッチャンコー」なん |
ていうひどい歌詞のわらべ歌がありまして、子どもの頃に聞いたことは |
ありました。それが、中学の終りか高校の始め頃ころだったと思います、 |
間宮芳生の歌曲集『子供の領分』に入っていて、ラジオでまた聞くこと になった。 |
しかも聴いてめちゃくちゃファンになり、テープに録音までしてよく聴 |
きました。むろん長じてはLPも手に入れた。ドビュッシーとも吉行淳之 |
介とも関係ありません。オケ伴付きのわらべ歌を集めた歌曲集です。 |
誤解されちゃうかもしれんが、いじめふうな感覚は持っていなかったで |
すね。素材としての単なるわらべ歌(の一つ)で、コラージュふうな巧 みなアレンジを、サウンドを、単純に楽しんだ。 |
子どもの世界というのはだいたいこんなふうに、まま明け透けで露骨に ストレートなものだと思っていただけでした。 |
ところが、魅力的なサウンドでしかもわかりやすかった(付いている和 |
洋折衷ふうオケ伴が繊細でことのほか素敵だった!)のに、何故か人気 |
曲にはならなかった。通俗かもしれんが、あんないい曲(ゴジラよりよ っぽどいいって、較べ方が違いますね、ゴメンナサイ)本当に勿体ない。 |
もっとも、作曲者自身が評価しないと語ったことを、随分前のことなの |
に何故だかワタシ、ちゃんと覚えています。理由は通俗性だったように 思うが、そっちは覚えていません。今なら、差別用語が入っているとい |
うことで、話は簡単、そのままでは当然表に出せないでしょうね、と考 えるだけ・・・ |
連想してしまったんで、ここぞと品なく書き足してみました。 |