休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

ツェムリンスキー:管弦楽伴奏つき合唱作品および歌曲

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20191009(了)
ツェムリンスキー Alexander Zemlinsky(1871-1942);
 管弦楽伴奏つき合唱作品および歌曲全集
 Complete choral works and orchestral songs

〈CD1〉オケ伴付き合唱作品 78:01
①. 詩篇 13 Op.24 (1935)           13:11  
②. 詩篇 23 Op.14 (1910)           10:15  
③. 詩篇 83    (1900)           14:07  
    ソプラノ(M・Mainke)、コントラルト(A・C・Schlüter)、
    テナー(Y・D・Park)、バス(Stefan・Kohnke)
④. Frühlingsglaube               4:25
   「春の信仰」(ルートヴィッヒ・ウーラントの詩による)
⑤. Geheimnis                   1:29
   「秘密」 混声合唱弦楽合奏
⑥. Minnelied                  5:04
   「愛の詩」(ハイネの詩による) フルート(2)、ホルン(2)、ハープ
⑦. Hochzeitsgesang               3:20
   「婚礼歌」(ユダヤ教典礼による) テナー(Lothar Blum)、オルガン
⑧. Aurikelchen                 1:12
   (デーメルの詩による) 女声合唱〈Mülheimer Kantorei〉
Frühlingsgräbnis (1896/97、1903)       24:14 
   「春の埋葬」パウル・ハイゼの詩によるカンタータ (Live recording)
 ⑨. Horch! Vom Hügel, welch sanfter Klang
 ⑩. Schöner Jüngling
 ⑪. Wie lieblich er ruht
 ⑫. Stumm in Wehmut schaut der Mond herab
 ⑬. Und ein Specht klopft
 ⑭. Als so weihevoll der Alte sprach
 ⑮. Horch! Vom Hügel, welch ein wilder Klang?
     ソプラノ(Deborah Voigt)、バリトン(Donnie Ray Albert)、

   混声合唱〈Chor des Städt.Musikvereins zu Düsseldorf〉

〈CD2〉オケ伴付歌曲 72:57
①. Waldgespräch                7:25
     アイヒェンドルフによる/ソプラノ(Soile Isokoski)
②. Maiblumen blühten überall(1902/03)      9:07 
     デーメルの詩による/ソプラノ(Soile Isokoski)、弦楽六重奏
バリトンとオーケストラのための2つの歌曲     17:16
 ③. 1. Der alte Garten
 ④. 2. Erdeinsamkeit
     ピアノ版からの編曲(A・Beaumont)/バリトン(Andreas Schmidt)
6つの歌 Op.13(1913/21)            20:53 
 ⑤. 1. Die drei Schwestern
 ⑥. 2. Die Madchen mit den verbundenen Augen
 ⑦. 3. Lied der Jungfrau
 ⑧. 4. Als ihr geliebter Schied
 ⑨. 5. Und kehrt er einst Heim
 ⑩. 6. Sie kam zum Schloss gegangen
     メーテルリンクによる/メゾソプラノ(Violeta Urmana)
交響的歌曲 Op.20(1929)            17:21 
 ⑪. 1. Lied aus Dixieland
 ⑫. 2. Lied der Baumwollpacker
 ⑬. 3. Totes braunes Mädel
 ⑭. 4. Übler Bursche
 ⑮. 5. Erkenntnis
 ⑯. 6. Afrikanischer Tanz
 ⑰. 7. Arabeske
     アフリカ系アメリカ人詩人のアンソロジー『歌うアフリカ』による/
     バリトン(Michael Volle)

 

     ケルン・フィルハーモニー・ギュルツェニヒ管弦楽団
     指揮;ジェイムズ・コンロン
     録音:1997、1998、1999/Rhilharmonie,Cologne
     CD/2枚組/合唱&歌曲/ⓒ 2004 EMI/Ⓟ1997・1998・2000 EMI
     〈CD1〉〈CD2〉共に<★★★★>

 

素敵な合唱曲と歌曲、オケ伴で聴きました。高密度。

ちょっと前のオペラの影響です。オケ伴付きの合唱と歌曲の2枚組。
決して、メジャーじゃないでしょうね。
そんなんでいいのかと言われる向きもあるでしょうが、歌詞はまったくわか
りません。
〈CD1〉
共にユダヤ系で関係もあったために、どうしてもマーラーと比べてしまうツ
ェムリンスキーです。マーラーでは一見宗教的でも実はあまり宗教色が強く
ないというのが多い。それに比べりゃあ、ツェムリンスキーのほうが宗教的
だろう、と思っていたところ、実際のところはたいして変わらない(歌詞も
わからずによく言う)という感じでしたね。
まずは聖書の中の詩篇詩篇に音楽を付けたくなる人は多いんだ。
少しとんがった曲調から始まる①、牧歌的な始まりの②、ロマンティックな
始まりの③、書かれた順は逆だろうと思ったら、まさにその通り。でも3つ
とも、ロマン派の音楽の感じに変わって行き、おしまいは非常に荘厳で熱っ
ぽい盛り上がりを迎える。オケも合唱も高密度! たまにですが聴きたくな
る類の分厚い音。非常にイケてます。

この3つ、③と②が近くて古く、うんとロマン派っぽく、①が明らかに感覚
的に新しいことがとてもよくわかる。この感覚の新しさは1枚目のCDを通
して言えましてね、①が一番素敵だったかな。それに結局これがマーラー
通じるものを最も多く含んでもいたように思う。

④ゆったりとして幸福感のある曲、⑤非常に軽やかな“秘密”
⑥たいそうロマンティック。室内楽のバックも非常に効いている。
⑦オケでなくオルガンのバック。素朴な美しさだけれど、実際の典礼ではこ
んなに俗っぽい美しさなんてありえない。否定しているんじゃありません。
まるでフォーレのように美しい。 ⑧1分ほどの掌曲。無伴奏・・・
⑨-⑮カンタータ。大きく盛り上がるのは⑬と最後の⑮。バリトン独唱と一緒
に盛り上がる⑬はまるで「フィンランディア」みたい。⑮はワタシの経験か
らではブラームスっぽい分厚さが素晴らしい。そのほかは、ほとんどが穏や
かで夢のように美しい。

和声的に少し新しい感覚なんかは感じたのですが、①以外はロマン派の音楽
そのものと言っていい。
ロマン派が好きな方は絶対に聴くべきですね。オケ伴はシンドイと思われが
ちでしょうが、全くそんなことはないです。(ワタシは逆にオケ伴だから聴
きたいというほうですけどね)

 

〈CD2〉
歌曲を正しく聴けるリスナーではないので、この2枚目など結構びくびくも
のでした。
合唱相手だとオケも対抗できるし強く盛り上がれるが、独唱だけだとオケも
抑えがちになり、細かいニュアンスに拘ることになる・・・なんてつい思っ
てしまいますが、ともあれ、〈CD1〉同様バッチリ、ドイツロマン派。
繊細なニュアンスといえば、その最たるものは室内楽伴奏の②でした。

超真面目なんだけれど、映画音楽のような俗っぽさをのぞかせる。③④なん
かまさにそう。アメリカの第2次世界大戦前後の映画音楽に関して、ドイツ
オーストリア系の作曲家が多かった逆の証拠みたいなもんじゃないか。想
像ですけどね。もっともこれらのオーケストレーションはご本人じゃないん
だ。それにしてはえらく感じが出ている。

マーラーの歌曲や合唱部分などの、ユダヤ臭さや俗っぽさや官能性が、どう
いうものか宗教性をも想起させるのと、意外に好対照かもしれない。
そしてもっと違うことといえば、マーラーのメロディの覚えやすさ。民謡な
どの引用が多いこともあるかもしれない。しかしそれだけとは思えない。と
もあれ、ツェムリンスキーには捉えやすいメロディなどがひどく少ない。聴
き慣れるしかない。これじゃあ人気や知名度に差が出て当たり前。
⑤~⑩も美しかった。

変わり種は⑪-⑰。
音色は相当新しくなった。その中になんとなくエキゾティシズムがふっと匂
ったり、大昔のニューヨークの感じが想像できたり、ストラヴィンスキー
たとえば新古典に近いとこころもあるんだ、なんて思わせたりね。こんなの
マーラーにはない。ちゃんと新しい音楽に興味を持って取り組んでいたんで

すね。

 

だらだら書くばっかりで、捕まえた感じがない鑑賞記になりました。
間違いなく好きな音楽なのになぁ。
まあこんなもんです。