| 20231104(了) |
『我が友、スミス』 石田夏穂
| 2022年1月/集英社/小説/単行本/中古 |
| <★★★☆> |

| 変わった小説、読みました。帯には「筋肉文学」という言葉。 |
| そもそもボディ・ビルのことなんぞ全く知らないもんで、鍛え方(あるいは種 |
| 目)やそのための道具、器具の用途がどういうもんだかまるで分らない。だか |
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ら、始めはネットで調べてみるなんてことも少しやりました。すぐやめちゃい ましたけど。 |
| スミスというのは、人の名前じゃなく(いや勿論開発者か開発会社の名前では |
| あるんだろうけれど)、スミス・マシンという結構大きくて値の張る筋トレ器 |
| 具の名前なんだ。そのスミス。 |

| 30歳前の会社員の女が、体を鍛えること(≒自己流の筋トレ)に嵌り、その |
| 方面の専門家の目に留まる。いわば「業界」からのスカウトを受けた形。 |
| 別のジムに移ってグループにも所属し、筋トレからボディ・ビルに変わる。 |
| それの代表的な大会の一つに出るまでの鍛錬の数々、大会やその世界の諸々 |
| の習慣などを学びつつ体を仕上げて行く過程を独特の硬い漢字の多い文章で |
| 描いています。専門用語があるから硬いってのもあるんだろうけれど、彼女 |
| 自身に男っ気がなく、男に媚びを見せるような性格でもないせいで、こう言 |
| ってはヘンかもしれないけれども、ストイックで水分が少ないからこその硬 |
| さ。で、帯にも本文中にもあるように、「女らしさとの闘い」という面が結 |
| 構強調される。最終的には、ずっとわだかまりっぽく抱かえこんでいたもの |
| のいくつかから、いわば解放される。まあそれに繋がる成長譚風な面もある |
| お話。これって、今風といってもいいんでしょうね。ワタシにはそう思えた。 |
| 女性のボディ・ビルのコンペティションには(そりゃあ男性のものにもだろ |
| うけれど)、けっこういろいろな決まりごとがあるんですねえ。女らしさと |
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言われるものを、この期に及んでも捨てない。ほとんど珍奇。「女らしさの 闘い」の面も大きいみたい。 |
| でも本当のところ主人公には(≒作者には)元々はあまりそういう発想はな |
| かったんじゃないか。 |
| 「女性は大変だね」というような言葉も折に触れて出てきます。 |
| あとのほうに引用したい言葉がたくさん出て来ました。 |
| でも、本筋からちょっと外れるかもしれませんが、始めのほうで見つけた、 |
| ‘その’関連の言葉をちょっと写してみましょうか。 |
| ・・・そうした傾向は新規大会の審査項目にも表れていた。曰く「過度 |
| 達に発した筋肉は減点対象」「女性らしい丸みは加点対象」。世間的に |
| は、がちがちに鍛えた人間は嫌厭されがちだ。さらに最近の大会には、 |
| 総合芸術だとばかりに鍛え方とは異なる審査項目が多かった。曰く「肌 |
| の美しさも審査対象」「表情も審査対象」「ステージ上の所作も審査対 |
| 象」「来年度からはイブニングドレスの着こなしも審査対象」「知性・ |
| 人格・誠実さも審査対象」等々。「知性・人格・誠実さ」は一体どう審 |
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査するんだという感じだが、出場選手のSNSを随時チェックすることに より評価を下すらしい・・・ |
| 驚きました。まさに「女性は大変」。この錯誤感。 いったい誰が決めてんだ |
| ろうと思わずにはいられない。まさかとか思うが、案外女性が決めてたりし |
| て。いや、そうでしょう? わかりませんけどね。主人公は、ボディ・ビルデ |
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ィング以外の上記のような事柄にもこっぴどく煩わされます。「ミスコンの 亜種」なんて表現も出て来ました。 |
| ステートメント・ピアス、脱毛、タンニング、12センチのハイヒール、 |
| ハイビスカス色のビキニ・・・・・・ |
| かなり飛んで、大会の最後において彼女が取った行動は、しかるべき目覚め |
| という感じでした。狂騒は終わり、自分なりの筋肉とのつきあいかたを見つ |
| けたみたいでした。 |
| この作者のデビュー作は、自身も当然筋トレをやってきているから書けた話 |
| のようです。そうでないと書けないディーテイルの生々しさだったと思いま |
| す。「業界」側としては微妙なお話になってしまったのかもしれません。 |
| 強く印象に刻まれたので、★4つでもよかったかも。 |
| 著者の次の本の評がよかったもんだから、他のいろんなものと一緒に、読み |
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もしないで娘に贈りました。感想は聞いてません。読んでないかもしれない な。覚えていたら、彼女の帰省時に訊いてみよう。 |