休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

映画『NO』

 

映画『NO』

  パブロ・ラライン監督//ガエル・ガルシア・ベルナル
  2012年製作/108分/チリ・アメリカ・メキシコ合作/原題:No
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  <★★☆>

1988年のチリの実話。
1973年、軍部がクーデターでもって時のアジェンデ政権を倒し、ピノチェト
軍が大統領になったら、それがひどい独裁政権で、という、世界ではいたって
ありふれた話。その独裁のひどさを世界が知るところとなって批判が高まった
ものの、野党もメディアも手をこまねいていた。
国際的にも風当たりが強くなったために大統領の任期延長の是非を問う国民投
票の実施が決まった。
賛否両派が27日間、毎日テレビでのアピールという形でキャンペーンが出来
ることになった。といっても一日15分のみ。
政権側も同じ条件だと謳うが、実際はこっちは終日自由にプロパガンダを垂れ
流せることになっていた。露骨。
 
なんとかしようと立ち上がったのが共産党で、リーダー格の男が相談を持ちか
けたのが友人(たんなる知人?)である若く優れた宣伝マンのレネ。
このレネ、自分の手法(CMの手法)でやっていいならと相談に乗る。内容や
手法の打ち合わせの紆余曲折もドラマになっている。
彼の家庭の事情も通奏低音で、奥さんは過激な政治活動をして別居中で、男も
作っているので、彼が一人息子と暮らしている。一応裕福そうではある。
 
彼は所属する会社の仕事もしつつなのだが、あろうことか、彼の上司が政権側
プロパガンダ番組を担当するという、ねじれ構造も出来てしまう。
番組のオンエアが始まってもいろんなことが起きる。
軍部の邪魔だては当然ある。わりと音無し目だけれど。
さあ、投票はどうなるのか。
 
まあこれはとっくに終わっていることですから、結果はわかっているわけです
が、どんな具合だったんだろうというのを、世界に知らしめると同時に、こん
なことにならないようにと特に自国民への戒めのようなものでもあるんでしょ

うか。とりあえず民主主義の扉は開いた(取り戻した)が、民主主義はアホに

はできない、続かない、先は長いぞ・・・!

実際の映像もいくらか使いながら、でもそんなに突っ込んだ表現はなくて、再
現ドラマ化してみたというだけのような気がします。
無血革命と言ってもいいような独裁政権打倒の舞台裏を、チリ国民は興味深く
観たのかどうか。ワタシには切実感があまり感じられなかった。後半はそれな
りにサスペンスがあって、緊張感をもって観ることができたのですが。
むしろ、軍事政権がよくも暴れずに引っ込んでくれたもので、これは極めて幸

運だったんじゃないか、なんて思っちゃいました。だから、、、あまり教訓的

ではないのかも。

 

  現在は立憲共和制。大統領は4年制で再選不可。