20230521(了) |
『怖い絵』/中野京子
まえがき |
作品1 ラ・トゥール『いかさま師』 |
作品2 ドガ『エトワール、または舞台の踊り子』 |
作品3 ティントレット『受胎告知』 |
作品4 ダヴィッド『マリー・アントワネット最後の肖像』 |
作品5 ブロンツィーノ『愛の寓意』 |
作品6 ブリューゲル『絞首台の上のかささぎ』 |
作品7 クノップフ『見捨てられた街』 |
作品8 ボッティチェッリ『ナスタジオ・デリ・オネスティの物語』 |
作品9 ホガース『グラハム家の子どもたち』 |
作品10 ゴヤ『我が子を喰らうサトゥルヌス』 |
作品11 ベーコン『ベラスケス<教皇インノケンティウス十世像>による習作』 |
作品12 アルテミジア・ジェンティレスキ『ホロフェルネスの首を切るユーディット |
作品13 ムンク『思春期』 |
作品14 ライト・オブ・ダービー『空気ポンプの実験』 |
作品15 ホルバイン『ヘンリー八世像』 |
作品16 ジョルジョーネ『老婆の肖像』 |
作品17 ルドン『キュクロプス』 |
作品18 コレッジョ『ガニュメデスの誘拐』 |
作品19 レーピン『イワン雷帝とその息子』 |
作品20 ゴッホ『自画像』 |
作品21 ジェリコー『メデュース号の筏』 |
作品22 グリューネヴァルト『イーゼンハイムの祭壇画』 |
解説 逢坂剛 |
2013年(H25)/角川文庫/美術エッセイ/(単行本2007年)/中古 |
<★★★★> |
(作品1)
今年1月の朝日の夕刊にあった特集記事が面白く、シリーズの第一巻も安か |
ったので、読んでみることにしました。 |
始めに書いておくと、絵の写真が小さいのが玉に瑕。文庫じゃあページ跨ぎ |
も苦しいけど、この小ささよりはましかも。 |
22枚を観、読み終わって、絵自体が怖いというのはほとんどありませんで |
したね。凄惨なもの⑩⑫、漫画風な恐怖表現の⑪、強い猜疑心の①等々。 |
で、わかったのは、こういう絵だけで感じ取れるものより、作者の状況や性 |
格、描かれた人物の性格や置かれた状況、当時の社会的あるいは歴史的背景 |
などをちゃんと調べると、絵が違って見えてくるよ、ということなんですな。 |
加えて、中野先生、独文ではおさまらないいろんな知識を動員してしっかり |
妄想を加える。時には物語までひねり出す。 |
だから面白い。オーバーに言うと、絵の見え方が変貌するとでもいうか、、、 |
ま、そんな感じになったものもありました。 |
音楽ではなかなかこんな感じ方ができるケースはありませんが、それに比べ |
りゃあ絵画は観るだけでも情報が多いのに、背景で更にガラッと変わるなん |
てのは絵ならではの感覚でしょう。(要はね、背後にあるさまざまな闇のほ |
うがなんぼかコワイねんでぇ・・・ と先生がニターッとしているみたい) |
後ろの、ミステリー作家逢坂剛さんの解説によれば、美術の専門家とは切り |
口が異なり、ユークで斬新な絵画エッセイで、なんとミステリーまで書いて |
いた文章力も半端でないって。(ワタシははじめは、文章がしつこいなぁな |
んてメモしてました。採用しませんでしたけど。) |
逢坂さんは意外やドイツロマン派のファン。E・T・A・ホフマンやハインリ |
ッヒ・フォン・クライストのおたくらしい。そのことでも中野先生とは接点 |
があったことが触れられている。文学史で習ったクライストの『壊れ甕』の こともちょっぴり。 |
有名な絵ばかりなのでしょうが、ワタシには知らないものが多かったです。 |
個々の絵にもいろいろメモったのですがアップはやめ。 |
楽しかったですよ。 |
またいつか続編、読みたくなりそう。ただなぁ、この本の絵は繰り返すが、 |
やっぱり小さすぎる、って、くどいか。(拡大鏡、大活躍) |