休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

ルーセル : 管弦楽作品集 2&3/3

20220804(メモ了)

ルーセル管弦楽作品集  2&3/3

Albert ROUSSEL(1869-1937)

      /ŒUVRES POUR ORCHESTRE

(CD2)
〈3〉バレエ《エネアス》 Op.54(1935)
   ①-⑬ 39:39
〈4〉組曲  Op.39
   ⑭-⑯ 13:07
(CD3)
〈5〉バレエ《くもの饗宴》 Op.17(1913)
   ①-⑬ 31:43
〈6〉交響曲 第2番 変ロ長調 Op.23(1919-21)
   ⑭-⑯ 39:21
 
  ジャン・マルティノン指揮
  フランス国立放送管弦楽団/フランス国立放送合唱団(バレエ〈エアネス〉)
  録音:〈1〉〈2〉〈3〉〈6〉1969年12月、〈4〉〈5〉1971年1月
      ラジオ・フランス 103スタジオ
  (3)(5)<★★★★>、そのほかは<★★★☆> 

(CD2)

(3)『エネアス』

その昔、ローマを築いた英雄的な男の話で、単純な物語だけど、バレのくせ
してコーラスが入るし、途中で切りにくいし、主題などがいかにも地味。し
かも書かれたときにはナチスの台頭で中身の具合が悪かった。
人気の交響曲第3番と地味で人気の乏しい第4番との関係が、それぞれの交
響曲のすぐ後に書かれた有名な『バッカスとアリアーヌ』と当『エネアス』
との関係に、上に並べた理由によって、そっくりで、人気がないんだって。
交響曲第4番はそれなりに知られてるけどね、『エネアス』は一旦はほとん
ど忘れ去られてしまった・・・ フーン・・・
 
確かにコーラスがあっては演奏上ハンデだろうが、バレエ音楽『ダフニスと
クロエ』だって合唱がはいるんだし、特色でもあるわけだしなぁ、、、主題
が地味でもサウンドは、往々物々しい『バッカス―』よりニュアンス豊かで
魅力的なところがいろいろある。『バッカス―』がちょうど半分で切って、
後半を第2組曲と称して演奏会に頻繁にかけられるのに負けている、なんて

のは、ねぇ、前半の第一組曲の魅力が乏しいからなんじゃないか?(それは

ないですけどね)

いろいろ割を食った形の曲のようで、もともと知らなかった曲だから、比較
に拘る必要はさらさらないんだが、結果的には較べてしまいましたね・・・
初演時『バッカス―』は、『ダフニスとクロエ』(ラヴェルの大傑作)をつ
いに超えた!なんて評されたと紹介されてます。それはないですけどねぇ、
そんな評のこと、初めて知りました。
 
この録音はなかなか貴重なんだそうで、演奏もすばらしいという評。演奏の
ほうはいまいちわからないけれど、曲は『バッカス―』には決して負けてい
ないと思います。いや好みとしては、こっちの方がいい、かな。バレエ音楽
にコーラスも、なかなかフィットしてます。
 

(4)小組曲

小さい傑作と評され、『くもの饗宴』に近いんだって。(何に近い?)

喜遊曲風なつくりだけれど、とても魅惑的な第2部以外は、案外バレエっぽ
く聞こえますね。第一部の三拍子なんざスペイン舞曲ふう。(パソドブレ
ま、普通はCDやYouTubeでないと聴くことはできない楽曲でしょう。
 

(CD3)

(5)好きな《くもの饗宴》、すこしイメージが変わりました。これまでにラ

ヴェルの演奏などで触れているクリュイタンス指揮、パリ音楽院管弦楽団
演奏で親しんで覚えた曲。このマルティノン盤を聴くと、クリュイタンス盤の
ほうは、録音も演奏もむしろ個性的だったようで、ドラマ性よりは雰囲気を重
視した演出や音作りをしたんじゃないかなぁ。それに対して、マルティノンは

楽譜重視、誇張を避けたノーマルな調子。これまでにマルティノンについて何

度か書いてきた通りです。

いろんな演奏で聴いてきたわけではないので、始めはへぇー・・・。 

バッカスとアリアーヌ」の印象と基本的には同じ感じ。ストレートでドラマ

を強く感じる。

クリュイタンス盤だと、例えば捕われ食われる虫に同情的な感性が働かされる
感じで、透明度が意外に乏しかったのが、マルティノン盤では弱肉強食の食物
連鎖なのだというの割きりがあるかのよう。音も暖かいというよりはすっきり
としている。そして決して冷たくはない。
 
出だしと締めくくりは、素敵なメロディとともに、ラヴェルっぽい美しい音色
ですが、間の②から⑮までは様々な表情やドラマを聴かせてくれ、しっかり引
っ張られる。でもまあ、印象派と言えば印象派ですよね。リズムは「バッカス
とアリアーヌ」のところでも触れたように重い。ややこしいリズムはほとんど
使わないみたい。
 

(6)一曲だけ入っている交響曲第2番。 3番、4番は名曲だといわれるが、

ま、いつか聴き直すことにして、、、2番、一筋縄ではいかない作品。

解説では、当時の聴衆にとっては、《くもの饗宴》の作曲者の作品なのであ
って、だからこの交響曲は難しかった。それがために作曲者は各楽章に簡単
なプログラムを付した。(面白くないので、付しません)
どうも、《くもの饗宴》の聴衆には難しかったというのがよくわからない。
ワタシの感覚では、バレエ《くもの饗宴》の延長線上にある感じ。けっこう
複雑な和声が多く出てくるようではあるものの、第1楽章など曲想も多く退
屈するどころでない。踊るような第2楽章を経て、第3楽章では、第一楽章
に似たいろいろな曲調を若干暗めに回収してゆく感じ。
でも・・・重たるくても、やっぱりどこかバレエ音楽的な気がしてしまうな
ぁ。そしてもうひとつ、音のぶ厚さとロマン派系、ということで、言わばど
こか「フランスの後期ロマン派」、みたいな感もある。

さあ、3枚聴き終えました。
この作曲家、好きかなぁ、そうじゃない気がするのです。
音楽の密度が濃いのはいいのだけれど、それゆえか、重たるい感じがつき
まとうことが多い。それがどうも好みでない。それはわかったが、最終決
定でもない。音の厚ぼったくない室内楽は印象がいいのです。

何か選ぼうと思っています。(ああ、交響曲も忘れないようにして・・・)

 

追加しておきます。クリュイタンス指揮/パリ音楽院管弦楽団 のLPが

残してありましたので。考えてみると、蜘蛛がイラストなのはともかく、

この虫の集め方、ちょっと変わったものだったんですね。