イスラムの世界では大なり小なり、こうした女性の地位の低さが問題になって |
いるだろうことは、知識としては一応持っているんだけれど、国によっての程 |
度の差はあるらしく、ここモロッコでは非常に厳しいとのこと。 |
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カサブランカの街を、臨月を迎えている未婚女性サミアが仕事を求めて彷徨っ |
ている。一方、夫に先立たれた母娘がつましくパン屋を営んでいるが、特に母 |
親のほう、アブラは心を閉ざしがちで、寂しさを乗り越えられない。 |
それでも、サミアの窮状を見かねたアブラが助け舟を出してしまい、パン作り |
などを通じて両者の濃密な人情劇が繰り広げられる。 |
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お互いに助け合うことになるいきさつは、いかにも優しい心根の表われながら、 |
外では全く通用しないことなのね。 |
モロッコじゃあ、未婚の妊婦という状態は、逮捕されていないだけの犯罪者だ |
ものだから、当然それだけで禁忌。病院で産もうものなら警察が飛んでくる。 |
よってそんな妊婦を助けるなんてことも、そもそもダメ。 |
じゃあ放っておいていいのか。たぶんいいんだろうな。 |
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サミアの考えは、なんとか生み落とし、すぐに養子縁組してもらい(そういう |
システムみたいなものが多分裏にはあるんだろう)、ぺしゃんこの腹に戻って、 |
なにくわぬ顔をして実家に帰るという計画。 |
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サミアとアブラ母娘の関係が濃くなっていくのが素敵なんだけれど、さて、つ |
いに(祭りの直前にだったか)生まれてしまう。 |
サミアの決心はかなり固いものなんだが、素敵な母娘に接し続けていたことも |
大きく、生まれてしまったことで、理性と母性の谷間の深さはえらいものにな |
って行き、葛藤が延々描かれる。ドキッとするシーンもある。 |
さて、祭りが終った朝には、サミアはどうすることになるんだろうか・・・ |
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この映画、モロッコ社会を動かす力になればいいと思いますが、そりゃ希望で |
あって、近々に実現するはずもない。人間、無駄に苦労してしまっているよう |
で、つらくなっちゃいますねぇ。 |