休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

いずみシンフォニエッタ大阪 定期演奏会/クセナキス&バルトーク

20220702(土)

いずみシンフォニエッタ大阪 

第48回 定期演奏会

クセナキス(1922-2001)とバルトーク。5ヵ月ぶりのライブです。
オフクロより1才年上のクセナキス。昔は、尖りまくりの作曲家ということで、
冒険のようにいくらか聴きましたっけ。こんなふうにまとめて聴く機会はそう
そうないだろうと、今年初め買っていました。来年2月の分と一緒に。
若い時には無論LPで聴きました。あんまり好きになれなかった作曲家でしたが、
近ごろはなんでもあまり抵抗なく聴けちまうもんですからね、いっちょう試し
てみたるか、てな軽い気持ちです。山野雄大というかたの解説(あまりいい文
章ではないかもね)からいただきながら、感想も書いてみます。
 
  その建築や数学への深い造詣から着想された、まったく斬新で鋭く知的な
  作曲にも、ときに生々しい叫びが聞こえ、激しい音の渦にも豊かな生命力
  が深々と感じられるのも、クセナキス作品の謎めいた魅力でもあります。
 
あまりピンとくる文章じゃないものの、ミソは建築や数学でしょうかね。クセ
ナキスじゃありませんが、図形みたいなものを、各楽器が別々の端っこから中
心に向かって、感じるものを演奏して行くなんてのがあると、昔、聞いたこと
があって、そりゃあオレの聴きたい音楽じゃないと思ったもんです。それに較
べりゃここでのクセナキスは一応まだ楽譜らしい・・・  実は(1)を演奏し
チェリストがバァッと楽譜を広げて見せたのです、おしまいに。そこそこ近
かったけど、よう見えなんだ。残念。
音楽監督西村朗さん(とてもお元気そう)のはじめのトークでは、実演に触
れる機会さえ乏しいクセナキスを取りあげることができてだいぶん興奮してお
られました。
 
(1)ノモス・アルファ  西村さんがとんでもない作曲と舌を巻くと同時に、
演奏家が可哀そうとおっしゃったのがこれで、演奏家にしか本当のところはわ
からないのでしょうが、ひどいといってもいいような奏法満載のチェロ独奏曲。
一台のチェロだけでこんなに迫力があるものかというほど強烈な音楽でした。
ただ、確かにこんなに弓の背でしばきまくられたんじゃ、弦が切れたりするだ
けでおさまらず、弓にも楽器にも相当疵がつくんじゃないのかねぇ。
「熱演」でした。でもこの曲は、ワタシは楽しめなかった。建築や数学に、何
か関係ある?
 
(2)リネア・アゴ ここからは抵抗なかったですよ。
アポロンとリノスが、この中で音楽の競争(ゲーム)を3度する。ある種の果
たし合いのよう。主にチューバ+ホルンがアポロン側、トロンボーンがリノス
側。ゲームだということで、奏者も少しアクションを加えて、面白そうに演奏
してくれました。無調だけど調性を感じさせるような「演出」(対抗している
ことがいくらかわかる)だったというべきなのかもしれません。
ワタシが気に入ったのは、金管3本のアンサンブル、、、というか、やはり音
色ですかねぇ。カラフルというのとはちょっと趣を異にする、ちょっと不思議
な競い合い。
 
(3)アウロラ 一転、弦のアンサンブルで、ぐっと聴きやすくなった。

弦楽合奏は飽きは来やすいですがもともと好きで、しかも12人ですからね、

どうやろうとアンサンブル。

全然抵抗感なし。で、連想したのが(知らない方はゴメンナサイ)映画『エイ
リアン3』のサントラ。現代音楽作曲家エリオット・ゴールデンサールが担当
していまして、とても気に入った音楽です。、これとね、なんだか共通するサ
ウンドがあるようにと思えました。あれれ、差し替えても行けるんじゃない?
失礼ですかね。ま、とかく、そんな聴き方をしてしまう面がワタシにはありま
す。それも鑑賞記。
 
(4)パリンセプト  クセナキス最後は、9人編成。弦と管(木管)が殆ど交

互に半円状に並び坐り、左後ろに打楽器。右寄りにやや引っ込んでピアノ。

 ・・・《パリンプセスト》(1979)はピアノ協奏曲・・・のようでありなが

 ら、ステージ上に並んだ9人の管楽器・弦楽器の後ろに、独奏ピアノと多彩

 な打楽器群が並ぶので、私たちはつねに、アンサンブル越しにソリストを見

 聴きする・・・ という珍しい音響設計(と緻密なリズムの重層!)からも、

 未知の震えを実感できる・・・

4曲が楽器数の少ない順に並んで、ここではついにピアノと打楽器が加わる。
俄然響きが豊かになった分、音楽の規模感や色彩感も広がった。迫力もそう。
でも激しい音の裏側には、尖り具合が減った感じ。怖さもね。そんなもんじゃ
ないかな、編成って。

指揮者飯森が新聞のインタヴュー(6/9切り抜き)で、この最後の曲について、

 「音が凝縮されていて、演奏するのはとてもややこしい。ただ、人種や言語

 や政治、宗教、いろいろな多様性のある世界が、一つの平和に向かってまと

 まろうということを想像させるパートが、曲の終りにあらわれる。そこが聴

 かせどころだと思っています」

スンマセン、全然そんなふうには感じなかった。「演奏するのはとてもややこ
しい」という点、例えばピアノパートなんか全くその通りで、それを他と合わ
せるのは確かに大変そうでした。それに、これ言っていいのかな、、、ピアノ

がスゴイと言いつつ、実は少なからず浮いていた。(これ、ワタシに多い感覚)

指揮者はまるでジャズみたいに指を折ってサインを送ってましたし。(って、
指揮者はよくやってますけどね)
 
 
(5)休憩の後、バルトーク/2台のピアノと打楽器のための協奏曲
正直なところ、この曲(のオリジナル・ヴァージョン)はバルトークにしては
好きな曲じゃなかったのです。ピアノも打楽器もむき出しって感じで、、、ま
バルトークの素がよく出ているのかもしれませんけどね。
だけど今回のコーンサートで奏されるのは、オリジナルのあと、バルトーク
さほど間を置かずにオーケストラを加えて書いたヴァージョンだという。この
ヴァージョンは実は聴いたことがなかったのです。というか、大体そんなもの
があることも知らなかった。
だから、ちょっと期待を持って望みました。もっとも今回のは、いずみシンフ
ォニエッタ大阪のために、もっと小ぶりにアレンジしたヴァージョン(当然 世
界初演)で、編曲者もこの室内オケも非常に上手いから、曲も演奏も問題はな
いはず。さてさて・・・
アレンジも演奏も多分悪くなかったし、思ったより「キレ」もあったと思うけ
れど、どうですかねぇ・・・ バルトークの好きな面はわずか。結論は、ワタ
シにとって好きな曲には変わってくれなかったです、残念ながら。
まあいい、そこそこ楽しみましたし。
 
以上、コンサート終り。
 
次のこのオケの定期コンサートは来年の2月。
贅沢なことに、チケットは手に入れてあります。

地元の駅に着いた時、西の空(つまりウチのある方角)がちょっと奇妙な燃え
かたをしていたので、パチリ。
帰り着いてからの500mlの偽ビールがとてもうまかった。