休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

映画『ナチュラル・ウーマン』

20220518(了)

映画『ナチュラル・ウーマン』

  セバスティアン・レリオ監督//ダニエラ・ヴェガ
  2017年製作/104分/チリ・米・独・スペイン合作/原題:Una Mujer Fantastica
  DVDレンタル
  <★★★★>

(ネタバレしています、読まれる方は少ないでしょうが、ご注意のほど)
 
チリはサンチアゴが舞台の映画。どこだと言われなきゃ、わからない普通の
街やね。マリーナというトエランスジェンダー(性転換手術も済ませている
よう)の全き純愛の物語。
 
かなり年上の男(57才)と同衾している(婚姻は結んでいない!)マリーナ
は、飲食店の店員で、時に歌も歌う。始めのシーンで彼が(彼女の誕生日の
ために)やって来た時には、サルサのようなものを歌っていたが、元々はク

ラシックを歌ってきたらしい。先生は多分お父さん。これって、まさに「カ

ストラート」。

 

その夜、彼が突然苦しがり、病院へ連れて行くも、あっさり亡くなってしま

う。

それからが大変。誤解、差別、侮辱、理不尽の連続また連続。これでもかと
言わんばかりの踏んだり蹴ったりに晒され続ける。
そんな状況にとりあえずの決着をつけるまでの一部始終がこの映画。
決着ったって、ぶん殴るわけでも、精神に異常をきたすわけでも、爆発する
わけでもない。信じられないほどの我慢強さ。
LGBTだとかトランスジェンダーだとかに、正直なところ殆ど関心を持ったり
してこなかったワタクシメ、差別意識も特にない(と思う)のですが、この
理不尽さとこの辛抱強さには反応せざるを得なかったですね。
 
仕返しをやらないのかと、観ているこっちが期待してしまうほどなんだが、
やったとすれば、彼の遺品に鍵を一つ見つけたこと。それはサウナのロッカ
ーの鍵だった。彼女がサウナの男のエリアに入って行くシーンはちょっとサ
スペンス。そしてロッカーの中に何があったのかはミステリー。
そこにあったものが、いわば「仕返し」に繋がるものだった。
普通に考えれば「遺言書」のようなものでしょうが、なんとも言えない。
家族同然だった「犬」(シェパード)を取り返しただけでなく、別のものも取
り返したみたいで、彼女の見かけも雰囲気も変わる・・・
 
最後は、あれはヘンデルの有名曲「オンブラマイフ」。これを歌ってのエン
ディングです。
(映画『ファニー・ガール』のエンディングでストライザンドが「MY MAN」
を歌って緞帳がおりたみたいに)
(いあぁ、どうだっけ、緞帳じゃなかったかも・・・)
余計なお世話ですが、思い出しました。歌詞は、こんな感じでしたっけ。

 Oh, my man I love him so、

 He’ll never know、

 All my life is just despair、

 But I don't care

 ・・・

 
理解や共感の限界がいわば試されているみたい。
なかなかうまい邦題だと思いました。