休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

マルティヌー/ピアノ協奏曲集 第1集

いろんな聞こえ方がする協奏曲集

 

20220428(了)

マルティヌー(1890-1959)

      /ピアノ協奏曲集 第1集

(1)ピアノ協奏曲 第3番 H.316(1937/1942) 30:37
  ①アレグロ 9:13 ②アンダンテ ポコ モデラート 11:23 ③モデラート―アレグロ 9:57
(2)ピアノ協奏曲 第5番 H.366(ファンタジア・コンチェルタンテ、1957) 25:19
  ④ポコ アレグロ リゾルート 8:12 ⑤ポコ アンダンテ 9:59 ⑥ポコ アレグロ 7:04

(3)ピアノと管弦楽のためのコンチェルティーノ H.269

      (1937) 21:29

  ⑦アレグロ モデラート 6:13 ⑧レント 8:45 ⑨アレグロ 6:26
 
  アーサー・フェイゲン指揮
  ボフスラフ・マルティヌーフィルハーモニー管弦楽団
  ジョルジョ・コウクル(ピアノ)
  録音:2008年10月/チェコ、ズリーン、芸術家の家 Tot.77:37
  CD/協奏曲/Ⓟ&ⓒ 2010 NAXOS/中古
  <★★★★>

<NAXOSのアルバム紹介> チェコの作曲家、マルティヌーの知られざるピアノ作
品集を全て録音するという快挙を成し遂げたNAXOSですが、どうせならマル
ティヌーのピアノ協奏曲も全部お聴きいただく計画を立てています。このア
ルバムには2つの協奏曲と1938年に作曲されたコンチェルティーノを収録。ど
の曲も印象主義と原始的な躍動感が絶妙にブレンドされた個性的な音楽です。
演奏はおなじみコウクル。マルティヌー研究家でもある彼の表現は、作曲家
の友人であったフィルクシュニーの演奏と並び、スタンダードな形として後世
に残ることでしょう・・・
 
帯の惹句・・・
ブラームスの面影もひっそりと・・・
 1930年代から50年代」に書かれた時代への抗いの響き』
うーん。
デュカスの時みたいにチェコのよく知られた作曲家を並べてみると、
 スメタナ      1824-1884
 ドヴォルザーク   1841-1904
 ヤナーチェク      1854-1928
 マルティヌー      1890-1959
マルティヌーが飛びぬけて新しいのに、新しさを感じない音楽やなぁ、こんな
んやったっけ、、、などと思いつつ聴いていたところ、いやぁ、この人の新し
さは、簡単にはわからへんぞぉ、と変って行きました。しかし、そのついでに、

聴くたびに印象も変わる。それだけに書きにくいが、なんとかやっつけてみま

しょう。

 
(1)一聴、古めかしさに驚き、二聴、三聴と進むに連れて、ああこりゃあ、ひ
っかかったと、企らまれたことにかえって喜ぶことになった。
①はとても古めかしく始まるけれど、それがするするっと変って、ヤナーチェク
で聴かれる音で盛り上がって途切れ、そこからはブラームスのピアノ協奏曲と何
か。何かとは、ドヴォルザークだったりヤナーチェクだったり他のドイツ・ロマ
ン派のものだったりなんだが、独特のデフォルメが施されている風。 多分そのカ
メレオンふうな感じが、その時のマルティヌーなんだろうなぁ。そうしたカメレ
オンぶりは、(2)でも、一番古い(3)でも同じだね。
確かにオリジナリティに溢れているというのとは違うかもしれない気もするが、
この人、大変な才人なのかもしれない・・・ 戻って・・・
 
こんなに臆面もなくブラームスにより添ったコンチェルトをものした人なんて、
いたんですねぇ、驚き!この人、基本20世紀の作曲家ですぞ!
帯の「ブラームスの面影もひっそりと・・・」なんてね、一体どこが「ひっそ
り」なんだい?  基本、「臆面もない」に近いじゃないか。オーケストラにつ
いちゃあ、ブラームスに寄り添ったり、かなり離れたりをとても技巧的に繰り
返すのに対して、ピアノソロのほうは、ワタシのイメージでは、殆ど離れず、

ブラームスそのもの。

②も③も、ちゃんと普通の第2楽章、第3楽章で、①について書いたことと基

本同じかな。
 
(2)この調子で書いたんじゃ、またまた長たらしくなるんで、どうまとめよ
うか、ちょっと考えました。
そうですね、、、ブラームスはほとんどいない(ゼロではないのですが)が、
ヤナーチェクやお隣の国ハンガリー出身のバルトークなんかが感じられたりす
る。変った感じだと思ったのは第2楽章で、「オーヴェルニュの歌」にあった
メロディや、デュカスの時にも名を出したフランク一派のダンディの『フラン
スの山人の歌による交響曲』なんかに似た音が聞かれたりと、フランスものの
ようなのが聞こえました。いろいろ遊んだらしい。3番同様とても楽しいが、

強いオリジナリティには欠けていて、やはり聴くごとにいろんなものを聴き取

ったり感じたりさせられる。

 
そして(3)。この3つじゃあ、書かれた時期がもっとも古い。もともとは(1)
と変わらない時期のようで、いろんな影響を受けた作曲家のモザイク模様のよ
うに感じられる小協奏曲。つまり、(1)や(2)と似ているという言い方が
できるみたいやね。
ワタシには解説する能力の持ち合わせはないものの、ピアノ協奏曲全集だから
入れたというんじゃなく、明るくセンスいっぱいで、楽しい。その魅力のゆえ
に選んだんだ。若書きなんかでなく、聴きどころいっぱいの協奏曲だと思いま
した。

 

で、時々やるように、しばらく時間を空けてまた聴いてみました。
 
聴くたびに印象が変わるというのは本当にその通りでね、結局かなりの回数
を聴いたことになります。
考えてみれば、嫌にもならず飽きないのですね。これがすべてでしょう。
確かにわかりやすい個性だとは言いにくいが、あえてもう一度まとめてみま
すと、第1楽章や第3楽章は、いろいろ書いたように、ワタシでも聴いたこ
とがあるようなフレーズや音色が出て来ます。それが個性かといえば、確か
に個性だとは言いにくいが、盛大に楽しませてやろうという意図に満ちてい

る。そのためのオーケストレーションや構成の上手さは特筆もの。これも行

き方なんじゃないかと思いますね。

第2楽章の緩徐、叙情の部分には第1楽章や第3楽章ほど多くは感じられな
かったので、かえって個性が出ているのかもしれませんが、実際は同じぐら
い色々なことをやっているのに、ワタシにわからないだけかもしれません。
たぶんそうでしょうね。それでも、なぜか魅力的。

 

奇妙な鑑賞記になりました。

今は、1番、2番、4番の入った第2集も、ちょっとね、聴いてみたい気が
します。ま、1番2番より、4番かな。あるいは、逆。
 
この作曲者の名を冠したオーケストラ名はNAXOSでしか知りません。ライナ
ーをざっと眺めると、名前は変りつつも、かなり前からどうやら常設のオケ
であり続けたらしい。もともとのオーケストレーションのせいか録音のせい
か、やや薄っぺらい感じがしたのは、(1)のブラームスをこっちが意識し
てしまったせいでしょうか。上手い下手はよくわからなかったが、まぁ、無
難だったと思います。