休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

ブランフォード・マルサリス/エターナル

20211012(了)

ブランフォード・マルサリス/エターナル

 
①The Ruby and The Pearl(R.B.Evans-J.Livingston) 8:53
②Reika's Loss(Jeff “Tain” Watts) 7:51
③Gloomy Sunday(R.Serres-L.Javor-S.M.Lewis) 12:43
④The Lonely Swan(J.Calderazzo) 9:04
⑤Dinner for One Please,James(M.Carr) 8:00
⑥Muldoon(E.Revis) 4:13
⑦Eternal(Branford Marsalis) 17:41
⑧Body and Soul(E.Hayman-R.Soul-F.Eyton-J.Green) 5:09
 ―日本盤ボーナス・トラック―
 
   <Branford Marsalis Quartet>
   ブランフォード・マルサリス(ts,ss)
   ジョーイ・カルデラッツォ(p)
   エリック・レヴィス(b)
   ジェフ・テイン・ワッツ(ds)
   録音:2003年10月
   2004年/CD/ジャズ/Ⓟⓒ marsalos music/rounder/東芝EMI/邦/中古
   <★★★☆>

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スイングジャーナル主催第38回(2004年度)ジャズ・ディスク大賞金賞受賞作品)
スイングジャーナル選定【ゴールドディスク】 第7期 第16弾
 
初の全編バラード集、とある。
こんなふうに輝かしい(って、日本での評価だけどね)評価を受けている
にしては、なんだかダサイなぁという1-2回の鑑賞の印象なんですが、こ
れが少しずつ聴き慣れてくると同時に、ああ、はじめのダサさはちょっと
違ってたんやな、引きずってしまったものがあったからみたい。
とりわけ最初の一聴がタルイ曲①! これでずっこけた人もきっといるだろ
う、って、ワタシのことだけどね。これはきっとカリブ海キューバの音
楽じゃないか。あの「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」の雰囲気の。
(どうやら当たりらしい、キューバのソンのよう。まあそれとボレロの中
間みたいな感じの仕上がりだそうな)
 
これに馴染んだら、あとは、泥臭くない、いいバラード集じゃないですか、
となった。
この馴染み方は、アメリカ人より日本人のほうが少し時間がかかるんだよ、
きっと。調子のいいサルサとはちがって、あのジジイババアの鄙びた
とでもいうような、油臭いくすんだ情緒は、それなりに聴き慣れる必要が
ある・・・
なんてね、エラそうなこと書きましたが、実はいたって安直な感覚からの
ものです、スミマセン、いつもどおりです。
 
2曲目からは、コルトレーンの音楽を思わせるところがありまして、ライ
ナ―に書いている二人の日本人もコルトレーンの名を出している。マルサ
リスと実際に喋ってその名が出ていたとか。ワタシはこういうライナーは
ちゃんと読まないことにしているので、コルトレーンの名の理由は不明。
でも、線はうんと細いのに、どこか、ワタシもかつて入れあげたコルトレ
ーン(バラードが異常にうまかったと今でも思います)の求道者のような
雰囲気が出てますねぇ。
 
と言いつつ、2曲目からは、1曲目のソンのような曲調はもはや出て来ま
せんで、ちゃんとアメリカ国内の感じに戻っちゃった・・・
長い③は知っている曲で演歌調が好きではありませんが、ちょっとハッと
する転調がありました・・・
楚々としたソプラノの④は、コルトレーン調からは離れたものの、野暮っ
たいダンスふうでもあって、ひょっとするとマルサリスさん独特の感性が
濃く出ているんじゃないか、オリジナル大作⑦よりも。
⑤はもっともコルトレーン寄りだが、美しさもすばらしい。
⑥はソプラノ。調性が不確かで、どこか浮遊するような感覚がいい。
メインディッシュの⑦。前半は、こういうと叱られそうだけれど、黒人ぽ
さが全くなく、コルトレーンから一番遠いかもと思わせました。まあそう
いう作りのアルバムなんでしょうね。で、後半での盛り上がりはトレーン
にかなり近づきましてね、ドラムスがエルヴィン・ジョーンズのように重
たくドロドロやったら、そっくりだったでしょう、ハハハ。
④やこの⑦の前半は、例えば今年3月に感想文をアップした彼のクラシッ
ク系のアルバム『20世紀フランス音楽作品集』にそのまま入って行けそ
うな気がしました。(たくさんのミヨーとイベールの「室内小協奏曲」が
中心)ボーナストラックの⑧は、オーソドックスな(?)バラードで、個性
は乏しい。やはり⑦で終るべきアルバムなんでしょう。
 
ものすごくありふれた感じの美しいバラード集ですが、いいアルバムがた
いていそうであるように、なかなか飽きの来ないものでもありましたね。
これ、いつも大事な点だと思っています。