休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

坂田明トリオ/赤とんぼ

20210217(了)

坂田明トリオ/赤とんぼ

 ①赤とんぼ(Akatombo) 5:57
 ②Tsombon Tuuraitai Khuren 8:20
 ③鰰(Hatahata)(記録映画「白神の夢」より) 11:10
 ④A Good For Nothing(役立たず) 5:49
 ⑤Wann kann ich Sie wiedersehn? 7:05
 ⑥家路(Going Home) 4:40 
    坂田明(Alt Sax,Clarinet,Bells,Bird Call)、
    黒田京子(Piano)、バカボン鈴木(Wood Base)
  (ダビングCD、録音:2004年頃)
   <★★★☆>

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四国在住の古馴染みが、何冊かの本やダビングしたジャズのCDを送ってくれました。
その中から何か紹介しようと思って、ちょっと迷った末、これを選びました。
タモリハナモゲラ語、といっても今じゃもう通じないかもしれませんね、そのもと
になったのがこの人。アヴァンギャルドに近いジャズと共に、まあけっこう突拍子も
ない人だけど、広島大学の水産出身で、ミジンコのことに蘊蓄がありましたっけ。
これを送ってくれた男も大学で養殖に関することをやって、その方面に進んだから、
坂田には、音楽だけじゃないシンパシーも持っていたのかも・・・
坂田はワタシより3つ4つ上。猛烈にモンゴロイドっぽい面構え・・・

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      (これは割と最近の写真のようです)

このアルバムはうっすら記憶にありますが、聴くのはたぶん初めて。
録音、いつごろなんでしょうねぇ、、、70年台か80年台? 違った。2004年ご
ろのよう。
 

一度聴いて少し抵抗があった。ところが2度目からはなんでか、かなり違った印象

になり、楽しくて、しかも妙に可愛く聞こえはじめました。ワタシもジジイになっ
たもんです。
 
一曲目の赤とんぼ、痙攣ふうなアドリブが、少し馴染んでみると、音の分散のさ
せ方がコルトレーンビリー・ハーパーを経、更に通り越して馬のいななき。こん
なもんを、素材をまるごとジャズの道具立てでやってしまうのがだんだんおかしく
なってきて、吹き出し、アジアや中東やアフリカで自国ものをジャズでやったら、
みんなこんなふうに奇妙にこえるんやなかろうか。そう思ったら、違和感そのもの
がひっくり返ってしまったみたい。もっとも、ジャズに垣根はない、そんな狭いジ
ャンルじゃないんだと言いつつも、本家と較べてしまうもんで、このジャズ、ど
こまで行っても「汽水域」みたいな境目を感じさせるような気もする・・・ これ
は海に入るまではなくならんが、まぁそれでエエンちゃうか・・・と。やっとこさ、
収めどころを得たような気になって、ハイ、オシマイ。可愛いもんです、ワタシの
音楽鑑賞なんて。
 
戻って、二曲目はまるっきりリズムがない。どうもモンゴル民謡らしい。あるいは
それに題材を得たもののよう。モンゴルなら馬のいななきが似合いそうだけれど、
それはない。
再び日本のものらしい三曲目。二曲目とも違ったノッペリ感が面白い雰囲気。なん
で白神に魚の鰰(ハタハタ)なのかはわからない。始めはちゃんとジャズらしいリ
ズムが聞かれる。やがて泣かせるメロディと共に非常に気持ちがこもってくる。
メロディもよし。いつも苦手なベースのアルコもいい(上手い!)ですが・・・
今頃書くのもナンだけど、なんでドラムスレスのトリオなのか、ということやね。
徐々に韓国系だとか中国系だとかを感じるようになりました。
 
4曲目はリズミカルだがアメリカ大陸じゃない、恐らく中東のイメージするものじ
ゃないか。ベースとピアノのリズムの上に、クラリネット
5曲目はなんやろ。この感じ、どこなのかよくわからない。タイトルはドイツ語や
けど。(皆さんといつ会える?という意味か) 曲調や盛り上げ方はやっぱりヨー
ロッパかなぁ。
(調べると、(3)(4)(5)は坂田のオリジナル)
最後は、ドヴォルザークアメリカでもって、ボヘミアを思って書いたと言われる
曲やけど、そうは聞こえない、一曲目の唱歌ふうで、それを二拍子のゆっくりした
ダンス・チューンにしたみたい。
 
ドラムスがないとはいえ、ジャズの道具立てで、流れてくる音楽は、ジャズなんだ
ろうが、どうもジャズっぽくない。そこで汽水域なんて言葉を持ち出してみたわけ
です。いまいちの譬えですよね。それでも、河口に至っても、アメリカのジャズと
は容易に混じりあうことはなさそうだなぁ。一緒にすれば、聴いた人は、ナントカ
とナントカの『融合』とか言って、わかったようなふりをしたがるだろうが、ワタ
シは多分、ずっとそんな気にはなれないだろうね、わからないけど。
 
でも、このアルバム、なかなか刺激的です。ひょっとすると名盤かも知れません。

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(これがたぶんオリジナルのジャケット写真)