休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

ツィマーマン / モダン・タイムズ

20210914(了)

ツィマーマン / modern times 

   Bernd Alois Zimmermann(1918-70)
(1)アラゴアーナ、カプリチョス・ブラジレイロス―バレー(1940-1950)
  ①Ouvertüre 7:16   ②Sertanejo 4:10   ③Saudade 6:26
  ④Caboclo 4:24     ⑤Finale 6:57
(2)1楽章のシンフォニー(1953年版 第2稿)(1947-1953)
  ⑥ 14:23
(3)フォトプトーシス/大オーケストラのための前奏曲(1968)
  ⑦ 16:34
(4)静止と反転 (1970)
  ⑧ 9:10
 
  カール=ハインツ・シュテフェンス指揮
  ラインラント=プファルツ州立フィルハーモニー管弦楽団
  録音;2014年1月、独、ルートヴィヒスハーフェン、フィルハルモニー
  CD/現代音楽/ⓒ 2014 Deutschlandradio Ⓟ2014 Capriccio/墺/輸入/中古
  <★★★△~★★★>

f:id:kikuy1113:20210925223441j:plain

<NAXOSの紹介ページ>から; ドイツの現代作曲家ベルント・アロイス・ツィ
マーマン(1918-1970)。 彼は様々な音楽を書き、多くの後進を指導しましたが
「自身の作品が理解されないこと」を悲しみ、ピストル自殺を遂げてしまった
のです。そんな彼の作品は、最近「兵士たち」などが注目を浴びたことでよう
やく聴かれる機会が増えてきました。もちろん作品の受容も深まり、CDなど
のリリースも少しずつ増えてきています。
このバレエ音楽「アラゴアナ、カプリチョス・ブラジレイロス」は、彼の初期
の作品。想像以上に楽しい曲で、ヴィラ=ロボスなどが好きな人にはたまらな
いものです。華やかなオーケストレーション、炸裂するリズムなど、全く難解
ではありません。「1楽章の交響曲」も新古典派主義の音楽です。
一転「フォトプトーシス」「静止と反転」は静かな音楽。「静止主義」といわ
れる作風で書かれています。
 

 

よく知られているらしいオペラが手に入れ易そうだったのですが、日本盤がな

く、対訳プロジェクトにもなさそうなので、とりあえずこちらの管弦楽曲にし
ました。音楽で「静止主義」なんて妙な言葉ですね、はじめて聞きます。心臓
が止まって出るフラットライン(縁起でもないけど)を想起しました。まあ順
番に聴いてみます。
 
(1)ヴィラ=ロボスが好きな人にねぇ、、、なるほど。リズムの切れは、バレ
エと謳ってあるにしては、はっきりいって足りない。④なんか、このリズムで
いいんだろうか・・・。演奏のせいがあるのかどうかはわからないんだけれど。
でも、音色については確かに南米だね。それも、ブラジル。どのトラックにも
含まれるテンポの緩やかな部分はとても濃密でよろしい。③のサウダージュな
んか。密林の中というだけでない、カラフルなのに独特の暗さがある。車の中
で聴いていた時にはわからなかったなぁ。これは失礼しました・・・ ④など
バーンスタインの「ウエストサイド・ストーリー」まではもうすぐ・・・と思
ったら、なんとお二人は生年が同じでした。
フィナーレ⑤では、ブラジルだけでなく、お隣アルゼンチンのヒナステラの音
楽も連想しました(素敵なバレー曲ありますからねぇ)し、リズムの物足りな

さも、なんとなくこんな感じでいいのかもしれないと思えるように変わってき

ました。

馴染んじゃいましたね・・・
サンバにもタンゴにも通じるものはありません。最後は、けっこう尖った音に
収斂して終りました。
  <★★★△>
(2)これはいわば改訂版。(1)からリズムを少なくして全体を重々しくした
みたいな感じ。交響曲だろうが交響詩だろうが、一向にかまわないでしょうね。
(1)との違いはリズムの重さと音色の乏しさ、物々しさなんかかな。暗い雰
囲気なんだけれど、深刻な感じはない。ややオーバーな映画音楽というぐらい。
後半に入ったところで、木管のスピード感のあるアンサンブルに突入し、そこ
へブラスも加わってくるところがあって、いよいよ煮詰まったサスペンスシー
ン(ご丁寧にひょうきんなシーンも挟んである)の映画音楽めき、エンディン
グはなかなかのスペクタクル。
  <★★★>
(3)前記より15年ほども時間がたってます。ツィマーマンのアルバムには
よく選ばれる曲のようです。
まあ概して猛烈に大仰な音楽。
現代音楽の物々しさ、わけのわからなさを戯画的に表すのに向いているとい
うか、楽しいかなぁ、これ。
物々しいだけではなくて、抑えて緊張感のある所もいろいろとあって、一口で
は言い表わせない。目まぐるしく曲調が変わっていきます。何を示唆している
のか、ベートーヴェンの「第9」の第4楽章の一部が突如挟まれてビックリ。
もはや映画には使えません・・・て、何を書いてるんだか。
  <★★★>
(4) この曲だけは騒ぎませんでした。
ここまで映画音楽に拘って来てますから、そのついでに言えば、これは静か
で不気味なシーン向き。
ワタシとしては一番聴きやすかったのですが、好きかどうかと言われると困
る。調性のなさが落ち着いて聴けた理由かもしれないけれど、気に入るとこ
ろまではいきませんでした。
  <★★★△>

 

結局最後の曲まで、「ドラムス」が活躍しました。

変な話、これが好きになれなかった原因の一つと言ってもいいかも。
シェーンベルクの『モーゼとアロン』なんか繰り返し聴いていたので、そう
したすごい才能による飽くなき探求心の賜物のような傑作群と較べると、ま
あ、だいぶん凄味にも普遍性にも音楽の楽しさにも欠けている感じでした。
自殺はないと思いますが・・・事情を知らないからエエカゲンなことは言え
ません。