休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

歌劇『モーゼとアロン』/室内交響曲第2番

ブーレーズ・コンダクツ・シェーンベルク

                  (10&11/11)

Pierre Boulez conducts Schoenberg(1874-1951):

  Chamber Works・Orchestral Works・Vocal Works

 

【CD10】 49:13

(30a)歌劇『モーゼとアロン』第1幕 D1〜D9 

 ①情景1 モーゼを召す喚び声 8:19
 ②情景2 モーゼ荒野にてアロンと会う 7:13
 ③情景3 モーゼとアロン 往きて、民に神の福音を告げ知らしむ 6:30
 情景4   ④6:43 ⑤4:03 ⑥3:25 ⑦8:13 ⑧2:42
 ⑨間奏曲 2:05

【CD11】 71:21

(30b)歌劇『モーゼとアロン』第2幕 D1〜D12

 ①情景1 アロンと70人の長老たち、啓示のくだるシナイ山の前にいる (3:18)
 ②情景2 モーゼはどこだ? (7:11)
 情景3   黄金の仔牛と祭壇
       ③1:01 ④3:21 ⑤2:10 ⑥3:24 ⑦4:44 ⑧5:34 
       ⑨2:56 ⑩5:17
 ⑪情景4 1:09

 ⑫情景5 モーゼとアロン/あなたは何をしたのです? 10:22

 

   ギュンター・ライヒ(Br/モーゼ)、リチャード・キャシリー(Te/アロン)、フェリシティ・パーマー(Sp/

   少女)、ジリアン・ナイト(Ms/病める女)、ジョン・ウィンフィールド(Te/若い男、裸の
   若者)、ジョン・ノーブル(Br/もう一人の男)、ローランド・ヘルマン(Br/エブライムの徒)、
   リチャード・アンガス(Bs/祭司)、その他
   BBCシンガーズ、オルフェウス少年合唱団、BBC交響楽団
   録音;1974年11-12月、ロンドン、ウェスト・ハム・セントラル・ミッション
       

(31) 室内交響曲第2番変ホ短調 op.38  D13〜D14

   ⑬Adagio 9:57 ⑭Con fuoco 10:59

   アンサンブル・アンテルコンタンポラン

   録音;1980年、パリ、ポンピドー・センター、Ircam
 
  全ての指揮;ピエール・ブーレーズ
  録音;1974~1986年
  Ⓟ&ⓒ 2013 Sony Music Entertainment/CD11枚組/現代音楽/中古

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【CD10】 49:13 

(30a)歌劇『モーゼとアロン』第1幕

【CD11】 71:21 

(30b)歌劇『モーゼとアロン』第2幕

    <★★★★△>
現代音楽をいくらか聴いているワタシにしても難物だったようで、数年前にも
何度か聴いて、鑑賞記を書きブログにも載っけたはずだと思っていたのですが、
探しても見つからない。撃退されて、何も書かなかったみたい・・・ 思い出
せない。とすると、チャレンジせんとしゃーない・・・
 
始めはカンタータとして企画され、次にはオラトリオとして構想され、しまい
にオペラになっちゃった。
第3幕まで作る予定が、出来上がったのは第2幕まで。戦争やアメリカ行きな
どでいろいろと中断し、第3幕は出来ずじまい。最後まで未練たらたらだった
らしい。書かれたのは1930~32年ごろ。
 
旧約聖書の「出エジプト記」の第3,4、32章を下敷きにシェーンベルク自身
によって作られた。宗教的題材を基礎としながらも、シェーンベルクの解釈は
かなり個性的・・・ その理由の一つは、ナチスによるユダヤ人迫害というドイ
ツの政治的状況にある・・・ などとある。民衆を悲惨な状況から救うために
エジプトを出ることになる。その民衆がユダヤ人ということ? フーンという感
じ。アロンというのは本来はモーゼの兄で、コーランにも出てくる人物。諸説
あって、あまり明確な人物像は結ばない。
あらすじは以下のよう。

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これじゃいくらなんでも長い。しかも対訳はなし。
手に余ってそのまま貼り付けてしまった。まあ大雑把にはこんな感じか。
 
モーゼに対し、神からのお告げがあって、ユダヤの民をエジプトから救い出
せと言う。ついては兄のアロンの力も借りよというので、合流。海を割った
りなんかして、シナイに着く。(ユル・ブリンナーアン・バクスターも出
て来ません、ハハハ) 神によばれモーゼが山に入ると、これがいつまでた
っても戻らないので、アロンは神について民衆の疑念等を晴らすため、民衆
に迎合したものを提示するなどしてやり過ごす。ところが戻ったモーゼが持
ち帰った「十戎」も、アロンの考える神も、「イメージの問題であって、そ
んなに変われへんやないか・・・」  モーゼ自身も疑い、十戎の石盤は壊
してしまう。しかし、結局アロンは罪に問われてしまう・・・ この辺まで。
 
おしまいのモーゼの疑惑なんざ、説教ネタの最たるもののはずで、シェーン
ベルクもテキスト化は難しかったろうと思う。
最後は、長生きのモーゼも早死にのアロンもくたびれもうけみたいだが、オ
ペラとしては完成されないままに終った。アロンは死に、モーゼは確か、民
と砂漠をさまよい、約束の地を見つけはするが、神には受け入れられない。
オペラは、モーゼや民衆をどうなったことにするつもりだったんだろう。
そして、その後たくさんの預言者が現れ、旧約には多くの記述に残されてい
るが、キリストが現れるまでは遠いこと遠いこと・・・
 
音楽はシナイ山の顛末あたりまでしかない。かの大作映画では大盛り上がり
になる多神教偶像崇拝に引き戻されていくあたりは、このへんかぁ・・・
なんて一応感じながら聴くわけです。ま、ドラマとしてはその程度にしか感
じないままなんで、あまり真面目な聴き方じゃない。いつも通り。音(≒音
響)を楽しむだけに近かったですね。
独唱ではシュプレヒシュティメが少しだけ出てくるものの、『月に憑かれた
ピエロ』のような居心地の悪さはまったくなかった。
合唱(民衆?)の扱いが、この言い方では語弊もあると思うが、まるでベー
トーヴェンのような楽器的な扱いに聞こえ、これは大変ラッキー!
リゲッティのような音楽に繋がっていきそうな気配も感じました。
そして随所で聴けるオケの奥深い響き。味覚で言うなら「舌鼓」とでもいう
ところです。
 
例えばCD11の⑤や⑧や⑩などは歌が全然なかったり、少しだけだったりする。
こういうところのサウンドは、まさに最高。
音だけ聴くには、いささか長い。でもねぇ、マーラーブルックナーの交響
曲を聴くことを思えば、形式や枠組みはないものの、そんなに違いやしない。
だからというべきか、これは、観ても面白いオペラだとは思えない。
『十戎』じゃあ、映画的な見せ物がいろいろあったけど、、、このオペラを
見せるのは至難の業じゃないか。知りませんけどね、工夫もするだろうし。
結論、これは「聴くオペラ」なんだぜ!
録音の良さもあって、陶然とさせてくれる約100分でした。
 
ぶり返した暑さの中で、もたもたと聴き、ダラダラ書ときました。
前回聴いた時にはなにも書かなかったようなんで、まあ、やっと義理、じゃ
ない、義務を果たしたような感じです。勿論リヴェンジじゃない。

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       (これはオリジナルのときのジャケット)

 

(31) 室内交響曲第2番変ホ短調 op.38 D13〜D14 

 <★★★★△>

これって、ひょっとすると、シェーンベルクの大傑作なんじゃないですかね。
第1番とはもちろんえらい違い。
ワタシの妄想的な考えですが、『月に憑かれたピエロ』や『グレの歌』あた
りで停まってしまっていたら、シェーンベルクは大作曲家としては残らなか
ったでしょう。作曲期間は1906~1940年。長く弄り倒したのに、ちゃんと出
来ちゃった。『ヤコブの梯子』や『モーゼとアロン』も傑作だけれど、この
交響曲の規模のまとまり具合と、何より音楽的な完成度、訴えかけるものの
強さは、比類がない。無調や12音で、こんなに引き込まれる音楽に到達し
たことが、すごいと思います・・・
でも、これ違うな。無調やもちろんセリーなんかじゃないよ。
第一部というのか第一楽章というのか、は、涼やかにしめやかに始まるんだ
が、サウンドは「室内」とは思えないほど、どんどん厚みを増し、これは譬
えは変だけど、プロコフィエフの第5交響曲の第1楽章のある楽想をブラー
ムスっぽくやってみたら、なんていう感じ。第二部は、引っ括ればスケルツ
ォ楽章。『モーゼとアロン』の凄味みたいなものはないが、暗くても楽想豊
かで、長い期間かけたのが吉と出たんですねぇ。
 
もっともっと普通にプログラムに載らないとイケナイ! 解説したものには、
そこまでは書いてないんで、ま、あくまでワタシの好みや思い込みなんです
けどね。いい曲で、セットものの最後が締まりました。
 
そうそう、おかしな妄想。ブラームスの名を出したからこそのこと。ブーレ
ーズにブラームスの録音なんてあるんだろうか。ないんじゃない? 知らな
いけど。それに、もし管弦楽の録音が残されていたとしても、それ、聴きた
くないワ。ハハ。

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5月末ごろからですからね、やっと終わったと言うべきでしょう。
セット物は、10枚も超えちまうとシンドイ。ちょっと鬱陶しいですね。
夜、パソコンの前に座ると、思い出してしまうことが多かった。ああ、あの

鑑賞記書けてないなぁって。

でも、この最後の2枚は長く車の中にあって、誰にもわかってもらいたい至

福の音楽体験でした。『モーゼとアロン』については、吉田秀和が絶賛した

なんて、はじめは信じちゃいませんでした。こういうこともなくちゃね。

もっとも、前回聴いた時、なぜ感想文を書いてなかったのか、理由はわから

なかった。まとまらんかったんやろうが、今とそんなに違ってたのかねぇ。