20210910(了) |
映画『グリーン・ブック』
監督:ピーター・ファレリー//ヴィゴ・モーテンセン/マハーシャラ・アリ |
2018年製作/130分/米映/原題:Green Book/DVDレンタル |
<★★★★> |
アメリカの人種差別問題を、黒人/白人に代表させて描いているらしいとい |
うことで、いささかならず遠慮してたんですが、どうやらエンタテインメン |
トとしてちゃんとできている作品だと聞いて、観たいリストに入れていまし た。 |
これは1960年台に入ったころの実話を、運転手のゆかりの人が脚色したもの |
のよう。 |
ソ連で本格的にクラシック音楽の教育を受けた黒人ピアニストが、意を決し |
て南部に20日間だかの長い演奏旅行に出る。ニューヨークの豪華な住まい |
で一人寂しく暮らす彼は教養高く、人種差別のことは無論よくわかっている |
つもり。 |
ピアノトリオなんだが、編成がふるっていて、ピアノとベースとチェロ。 ドラムスがない。実話がそうなのか、映画だけなのか実は知らないのですが、 音楽としてはこれがなかなか微妙というか、不自然な甘さがあるのがミソじ ゃないでしょうか。 |
チェロ奏者はクラシック系でロシア人。ベースは何人だったか忘れた。共に |
白人。音楽は、クラシックっぽい曲にジャズ系のアレンジを施し、かつ、も |
とはクラッシックなんだよ!とわざわざ主張し戻している(こんな表現ある |
かな?)みたいな感じ。まあこの音楽についちゃあ、殆どめんどくさい話は |
出てこない。正直言ってしまえば、このドラムスのない音楽は60年代じゃ |
あ、MJQやジャック・ルーシェ・トリオならばまだしも、すでに時代遅れに 感じられたような気がするのですが、どうだったんでしょう。 |
黒人のクラシックの演奏家(ソリスト)というのは、考えてみると、女性歌 |
手と男性指揮者以外にはほとんど知りません。もろ(教育)格差だね。ワタ |
シの知識が古いだけで、そうでもないのならいいんだけど。 |
さて、戻りまして、彼の運転手になるのが、家庭的なイタリア系の少々がさ |
つな男。やや太めで恰幅がいい。教養は高くなく言葉遣いが汚いが、悪人じ |
ゃない。世の中の仕組みが一応わかっていて、はったりが利き、がさつなわ |
りに価値感はいたって柔らかくノーマルで、イデオロギーは特に濃くなく、 |
人種問題に関しても、偏った思い込みはない。 |
(モーテンセンはきっと役作りとしてわざと太ったんやろな) |
チェリストやベーシストも一応一緒に旅行はしているが別の車。黒人ピアニ |
ストと運転手兼身の回りの世話係の基本2人旅が描かれる。この二人同士で |
の会話や行為のズレや考えのぶつかり合いと、どこへ行ってもついて回る黒 |
人蔑視や、黒人だけのセパレートされた妙に息苦しい社会。 |
そういったものが、暗くならないように(もう状況だけで十分暗いからね) |
描かれていました。 |
問題にぶつかっては二人で何とかクリアしてゆく。危なっかしいコンビ。 |
でも、運転手が主に活躍するのね。彼の意外なほどの柔軟性(?)が演奏旅 |
行をなんとか破綻させないで進める。それがレイシズムが厳然としてある世 |
界での出来事を、エンタテインメント(≒ユーモア)に見せて(描き替えて) |
通り過ぎて行く。二人の理解のしあいも進むので、想像はついたけれど、い |
いエンディングになりました。大団円にすぎると言いつのったヒトがたくさ |
んいたであろうことは想像に難くないけれど、なに、そんなことを言うヒト |
たちだって、手をこまねいているんだから、言わせておけばよろしい。最後 |
に集った人たちにもちゃんと理解が生まれたんじゃない?という「ストーリ ー」を感じさせてくれたんだから。 |
・・・と、通り一遍。ロクでもないことしか書けません。 |
結局は、気取って我慢することを体得している黒人と、気取らず出来るだけ |
なんにでも上下を付けないでストレートに対応する運転手との、道中の会話 |
ってことになるんじゃないですかねぇ、一番面白かったのは。そうすると、 |
多くが車の中ってことになるか。 |
黒人のための旅行用ガイドブックの名が「グリーン・ブック」という。抜群 |
のいいタイトルでした。 |