休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

ツェムリンスキー:歌劇『フィレンツェの悲劇』

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20190904(了)
ツェムリンスキー:歌劇『フィレンツェの悲劇』
Alexabder Zemlinsky(1872-1942);Eine florentinische Tragödie
   Oper in einem Aufzug op.16 nach einer Dichtung von Oscar Wild,
   deutsche Übertragung von Max Meyerfeld 

   グイード(フィレンツェ大公の息子)   :ケネス・リーゲル(テナー)
   シモーネ(フィレンツェの裕福な織物商人):ギレルモ・サラビア(バス)
   ビアンカ(シモーネの若い妻)       :ドリス・ゾッフェル(メゾソプラノ)
   ベルリン放送交響楽団/指揮:ゲルト・アルブレヒト
   録音:1983年10月・11月/ベルリン/イエスキリスト教会(アナログ録音)
   1985年/CD/オペラ/コッホ・レコード/輸入盤/中古
   <★★★★△>

 

オスカー・ワイルド原作。舞台は16世紀ルネッサンス期のフィレンツェ
一幕もので、登場人物は3人のみ。
〈あらすじ〉
 フィレンツェの商人シモーネは、自分の妻ビアンカフィレンツェ公イー
ド・バルディに寝盗られているのではないかと疑っている。シモーネはグイ
ードに高価な衣裳を売りつけると、我が家にあるものを何でも差し上げまし
ょうと申し出る。グイードビアンカが欲しいと言い出す。シモーネは、ビ
アンカを自室に押し込め、糸紡ぎでもやっていろと言う。シモーネが立ち去
ると、ビアンカは「あの人なんか大嫌い、死ねばいいのに」と口走る。これ
を小耳に挿んだシモーネは、姦通や死について思いを巡らせる。
 やがてシモーネが立ち去ると、グイードビアンカだけが舞台に残され、
二人の恋人同士は互いの愛情を口にする。グィードが帰宅しようとしたその
時、シモーネはグイードに決闘を挑む。初めは剣で、次に刀で命がけの決闘
であった。とうとうシモーネがグイードの首を締め上げる。それまで「シモ
ーネを殺して」と叫んでいたビアンカであったが、やにわにシモーネに近寄
ると、「知らなかった。貴方がこんなに強いだなんて」と言って夫に擦り寄
って行く。シモーネも「お前がこんなに美しかったとはね」と言ってビアン
カを抱き寄せる。そして幕が下りる。 (WIKIから)

 

またまた不倫のドラマ。なんだけれど、なんといっても、上記のごとく終わ
りの二人の仰天のセリフがふるっている。‘ヴェリズモ’という感じじゃない。
その辺が、オスカー・ワイルドということなんでしょうか。リアルなベルク
のオペラをまるで“跨ぎ越して”いる。
始め、前知識なしで流したら、ワーグナーの神々の世界のなかで、まあさほ
ど高尚とも言えないような、神というよりはいたって人間ふうな悩みなどを
を歌っていたりする、なんてのを想起してしまったのですが、ここでは更に、
な-んだぁ、このサウンドで不倫かよーっ」て感覚でしたね。


裕福な商人が帰宅すると、若い妻と名家のボンボンが自宅での逢瀬中。
主人は始めこそ慇懃に対応するも、徐々に本音が出始める。若妻はもっぱら
間男の側。ボンボンは丁寧に対応されてかなり油断している。この三人の虚
虚実々から、えぇっ!?というカタストローフまでがお話。
だから、‘Tragödie’っていうのとちょっと違うでしょう。

 

はじめのところは、序曲でもないが、長くオーケストラだけ。これはもとも
とのテキストが、ストーリーの始めのところが欠損していたため、その部分
を音楽で表現したということだそうな。だからなかなか大切な存在の音楽。
もっともそのストーリー部分はなくても、一幕もののオペラとしては十分成
立していると言えそうです。でも、決して不穏でもないその音楽がまた素晴

らしい。最初っから捕まれます。

オペラ『こびと』も素晴らしかったが、サウンドがなんとも豊饒、ゴージャ
ス。R・シュトラウスの影響などという記述はもちろん正しかろうが、まず
ワーグナーであり、次にはマーラーであり、そしてやはりR・シュトラウ
ス。またなんと、門下であったコルンゴルトからの影響なんてことまで書い
てある。それらが一体になって、かつツェムリンスキーのオリジナル。
アメリカで一応成功したコルンゴルトが門下だなんて、考えたことなかった
ですね、なるほどなぁ。だからこその映画っぽいサウンドでもあるんだろう。
ともあれ、後期ロマン派の最上の結実と言っていい音楽でありサウンドじゃ
ないでしょうか、マーラーとジャンルを棲み分けて。
シェーンベルクがツェムリンスキーを忌み嫌った(?)のも分かるような素
晴らしい出来、なんて解説にあるのは、まるで音楽史上の‘ヨイショ’、楽し
いネタ、みたい。
  『こびと』が「無邪気さと美の裏側にある残酷さ」をテーマにしている
  のに対し、『フィレンツェの悲劇』は、力(権力と暴力)と若さとエロ
  スの相剋というテーマで貫かれている。
大仰な! これもいまいちピンときません。というか、もっともらしく言われ

たくないし、大体そんな言い方、つまらん。

先日の「カヴァレリア・ルスティカーナ」と「道化師」の二本立てのような
オペラ映画が、いまいち面白くなかったもんだから、これで結構気分的には
収まりましたヨ。
これの映像があったら、映像に注意が向いてしまって、音楽のほうをちゃん
と聴けるかどうかわからへんけどね。
G・アルブレヒト指揮/ベルリン放送交響楽団も確実な演奏のようだし、奥

行きのあるサウンドで、とても優れた録音(アナログ!)だと思います。

 

(ジャケット写真では、男二人がどちらも禿げているのが、ちょっとつらい)