休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

『アヘン王国潜入記』/高野秀行

 


高野さんとしては、リキの入り方が違う作品

20210801(了)

『アヘン王国潜入記』/高野秀行

 第一章 アヘン王国、ワ州
 第二章 手探りの辺境行
 第三章 アヘンとワ州
 第四章 ゴールデン・ランドの草むしり
 第五章 「アヘン=モルヒネ化計画建白書」
 第六章 白いケシと緑の軍服
 第七章 最後に残された謎
  エピローグ――ワ州と外部世界をへだてる壁
  あとがき/文庫版あとがき/主要参考文献
  解説 船戸与一
  2007年/集英社文庫/冒険~ルポルタージュ/中古//(1998年/草思社から単行本)
  <★★★★>

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民主派はイスラムロヒンギャに市民権を与えて、国外に逃れている人たち
も含めて多民族皆が国民の一員と認めようではないかと発言している。
世界の世論に訴えかけているのだろう。国内に反発もあるというし、当然軍
は認めるはずもない。ごく最近の新聞記事(6/30 朝日)で、割と大きな扱
いになっていた・・・

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   (上掲記事はもう、ちょっと古くなっちゃいました・・・)

 

こうした状況とはいささか違っている20年以上前のビルマだ。
今回の高野さんの突っ込みは、世界有数の麻薬のもとであるケシの産出国
に長期滞在しての突撃取材、という切り口。
事前調査も根回しその他の準備も怠りないが、それでも、かなり突拍子も
ない・・・
 

でもこの後高野氏はどう書いたらいいのか、いまいちまとめづらかったよう。

読後のワタシも、インパクトはあったのだが、感想文、書きにくい・・・

冒険家高野秀行さんは、この本こそが自分の(冒険家としての?)「背骨」
だと最終的にはのたまっている。

 

ゴールデン・トライアングルなんて、ぜんぜん知りませんでした。

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合衆国的で小民族の塊のようなビルマの中の、シャン州の中の州「ワ州」に
1995年潜入して、7カ月間、ある村で、村人と交わり、ケシ畑に関わり、その

草刈をし、アヘン中毒になり(ヘロインやモルヒネではないとはいえ、そこま

でやるか! これがリアルなのです・・・)、ワ州を抜けだす。

その一部始終を「え? え? え?」と言わされながら、読まされました。
このかたの本はいくつか読んでますが、たしかに、これ、リキの入り方が尋常
じゃないですね。この本は6-7ケ月間のことだけど、ビルマとのかかわりはそ
の10倍以上だそう。
なんでこの辺がそんなに?と思ってしまうんだけど、ほんとうのところ、よく
わからなかった。もっと大長編になるべきだったかも。
 
ビルマという国のこともいくらか理解ができた気がします。(理解できないと
いうことがわかるということも含めてね) 州内の州であり独立国でもあった
ワ州のことも。
でもどうやら、人は普通のようでした。
ただここ(ゴールデン・トライアングル)じゃあ、穀物や農作物を作るように
ケシを作っているという違いがある。それだけ。それだけ、と言っちゃいけな
いんだけれど、それだけ・・・
 
ビルマはもともと中国と縁が深く、そのことはいろんなところで出てきたけれ
ど、このころはまだまだ、結びつきは緩い気がする。このころだって、ビルマ
軍との関係が強いのだが、最近民主化をクーデターでひっくり返して半年たっ
た軍政権と中国はどうなんでしょうねぇ。やっぱり結びつきがあるんだろうか。
よくわかりません。お金、出してもらってんじゃないかなあ、そして実質的に
絡めとられている・・・ いやいやそれより、今やビルマの軍政権こそ中国を
「手本」としようなんて考えてるんじゃない??? まあ、大妄想。
最近の新聞じゃ、国連はともかく、欧米は、この軍政権はイカン!制裁だ!な
どと言っているが、ロシアと中国は反対。ロシアは軍備関係の商売(軍事技術
協力という)? そして中国は当然「内政干渉だから反対」。南シナ海のことも
新疆ウイグル自治区への大洗脳のことも、尖閣のことも香港のことも、そして
あろうことか台湾のことも「内政干渉」だ、これ以上つついてくるとただじゃ
済まんぞ!と凄む。「内政干渉」には反対に決まっている。ASEAN諸国もバラ
バラ・・・
 
話が飛びました。
村でのオフビート感いっぱいの生活を中心に、とても熱のこもった(≒強烈な)
ルポルタージュになっていると思います。
あとがきじゃあ、この本が売れなかった、評価もなかったと、少々恨みがまし
いが、その後はそこそこ読まれたんじゃないですか。自分から働きかけたよう
だが、翻訳もされたようだし。もっとも、外国が取り上げてくれたが、「色物」
扱いだったと、これにも不満たらたら。
 
毎回思うんだが、語学力、すごい。解説の船戸与一も驚嘆している。
さて、この続編に近いのが『ミャンマーの柳生一族』だそうな。リストアップ
はしていますが、いつか読めるでしょうか。ちょっと怪しい。
 
 
そうそう、国名のビルマミャンマー
日本のマスコミじゃあ、10年前ぐらいからミャンマーに統一されたが、どうも
本国じゃあ、文語だとビルマ、口語だとミャンマー、ぐらいの違いで、どちらも

正しいようです。だから当然若者はミャンマー。(ワタシなんざ、いつからミャ

ンマーに変わったんだ!と怒ったもんです。)

ちなみに、この本のときのワ州の村じゃあ、ワ州が国なんだからね、ビルマのお
金は使えず、「ビルマ」ってどこ? ぐらい自国のことが知られていなかったそう
な。今は、ワ州のワ軍は反政府勢力ではなくなってしまったようで、村でももう
ビルマを知らないなんてことはないだろう。ただし、ケシ畑は多分もうない。

 

ただいま現在は、この辺のニュースとしては、タリバーンがいよいよ首都を落と
そうとしているとか、入管で死なせてしまったスリランカ人のこととか、タイの
デモのこととかにかき消されている感じですが・・・
さっき、お昼のテレビのニュースで言ってました。
バングラデッシュ南東でもって、ロヒンギャの避難民に対して、コロナのワク
チン接種が始められたって。
55歳以上。国連主導。
ワクチンは――もちろんというべきでしょう――中国製だそうです。

 

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(また、サイン本だったみたいです。きっとホンモノ・・・)