20210602(了)
Pierre Boulez conducts Schoenberg(1874-1951):
Chamber Works・Orchestral Works・Vocal Works
【CD3】 68:33 |
(7)音楽劇『幸福の手』op.18 D1〜D6 |
ジークムント・ニムスゲルン(Bs)、BBCシンガーズ、BBC交響楽団 |
(8)管弦楽のための変奏曲 op.31 D7〜D18 |
BBC交響楽団 |
(9)浄められた夜op.4(弦楽合奏版) D19〜D23 |
ニューヨーク・フィルハーモニック |
(7)音楽劇『幸福の手』; バス、合唱、オーケストラ/20:37 |
<★★★★> |
ある男の妄想をフルオーケストラと合唱を用いてドラマチックに描いた作品 |
で、非常に凝縮され緊迫感を孕んだ難解極まるもの。管楽五重奏とともに、 |
「尖った音楽」が好きな人には向いている、、、と、これはワタシの言葉じ |
ゃない。でもまあそんなものでしょう。 |
もごもごとした出だしが、鬱勃たる妄想の始まりの序奏めいて、わが意を得 |
たりというか・・・オフクロのロクでもない妄想を連想させられて哀しいと |
いうか・・・ まあオフクロの妄想の中身とは大分違うようだけど。 |
音楽劇でなく「モノドラマ」という訳もあった。 |
合唱まで入って、オケもデカく、妄想がどんなものかはわからないが、にぎ |
にぎしい。にぎにぎしい、はないか。合唱の役割は、囃し立てられたり嘲笑 |
を浴びせられたり、の表現でしょうし。 |
ワタシにとっての魅力は奥行きのあるサウンドが中心ですが、でも、やっぱ |
り素敵な曲だと思います。 |
比較で聴いたのはロバート・クラフト盤。ブーレーズ盤の録音がものすご |
く良くて鮮やかだったからということになるんだろうか、クラフト盤はまる |
でモノトーンの別の曲のように聞こえた。決して冴えないものじゃない、や |
や暗めの聴きごたえたっぷりの演奏&録音なんですけすけどね。 |
(8)管弦楽のための変奏曲 |
<★★★★△> |
上記『幸福の手』よりさらに魅力たっぷりだったのがこの変奏曲。 |
(5)の「5つの管弦楽曲」に書いたこととだいたい同じ。一つづつは短いし |
ね。でも12曲と曲数が多いから物足りなさもクリア。 |
録音もいい。想像を掻き立てる深み、奥行き、カラフルさ。やっぱり映画をつ |
い連想します。実際はこんなに書きすぎな音楽は映画には使えないでしょうけ |
どね。 |
これって、無調なんですかね。ワタシにはなにか調性があるように感じられる |
時があります。 |
(9)浄められた夜(弦楽合奏版) |
<★★★△> |
六重奏版じゃあ、ほとんど物狂おしいといってもいいほどのロマンティシズム。 |
だからこそ死すら感じさせる。 |
対して、この弦楽合奏版では、聞こえ方がうんと柔らかく甘さが増し、一般的 |
なロマンティシズムのイメージに近い。なかなか厳しい音楽だし演奏もそうな |
んだけれど、それでも、美化された感じは否めない。 |
スクリャービンの『法悦の詩』という交響曲がありまして、「死」じゃなく |
「詩」だけど、このタイトルなんか、言葉としては近い気がします。曲はしば |
らく聴いていないし、こっちはフルオケものだけれど、でもなんだか似たイメ |
ージ。(スクリャービンのほうが8年か9年後なんやね) |