休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

ブーレーズ・コンダクツ・シェーンベルク 3/11

20210602(了)

ブーレーズ・コンダクツ・シェーンベルク 3/11

 Pierre Boulez conducts Schoenberg(1874-1951):

        Chamber Works・Orchestral Works・Vocal Works

【CD3】 68:33
(7)音楽劇『幸福の手』op.18 D1〜D6 
    ジークムント・ニムスゲルン(Bs)、BBCシンガーズ、BBC交響楽団
(8)管弦楽のための変奏曲 op.31 D7〜D18 
    BBC交響楽団
(9)浄められた夜op.4(弦楽合奏版) D19〜D23
    ニューヨーク・フィルハーモニック

f:id:kikuy1113:20210618013721j:plain

(7)音楽劇『幸福の手』; バス、合唱、オーケストラ/20:37
  <★★★★>
ある男の妄想をフルオーケストラと合唱を用いてドラマチックに描いた作品
で、非常に凝縮され緊迫感を孕んだ難解極まるもの。管楽五重奏とともに、
「尖った音楽」が好きな人には向いている、、、と、これはワタシの言葉じ
ゃない。でもまあそんなものでしょう。
もごもごとした出だしが、鬱勃たる妄想の始まりの序奏めいて、わが意を得
たりというか・・・オフクロのロクでもない妄想を連想させられて哀しいと
いうか・・・ まあオフクロの妄想の中身とは大分違うようだけど。
音楽劇でなく「モノドラマ」という訳もあった。
合唱まで入って、オケもデカく、妄想がどんなものかはわからないが、にぎ
にぎしい。にぎにぎしい、はないか。合唱の役割は、囃し立てられたり嘲笑
を浴びせられたり、の表現でしょうし。
ワタシにとっての魅力は奥行きのあるサウンドが中心ですが、でも、やっぱ
り素敵な曲だと思います。
 比較で聴いたのはロバート・クラフト盤。ブーレーズ盤の録音がものすご
く良くて鮮やかだったからということになるんだろうか、クラフト盤はまる
でモノトーンの別の曲のように聞こえた。決して冴えないものじゃない、や
や暗めの聴きごたえたっぷりの演奏&録音なんですけすけどね。
 
(8)管弦楽のための変奏曲
  <★★★★△>
上記『幸福の手』よりさらに魅力たっぷりだったのがこの変奏曲。
(5)の「5つの管弦楽曲」に書いたこととだいたい同じ。一つづつは短いし
ね。でも12曲と曲数が多いから物足りなさもクリア。
録音もいい。想像を掻き立てる深み、奥行き、カラフルさ。やっぱり映画をつ
い連想します。実際はこんなに書きすぎな音楽は映画には使えないでしょうけ
どね。
これって、無調なんですかね。ワタシにはなにか調性があるように感じられる
時があります。
 
(9)浄められた夜弦楽合奏版) 
  <★★★△>
六重奏版じゃあ、ほとんど物狂おしいといってもいいほどのロマンティシズム。
だからこそ死すら感じさせる。
対して、この弦楽合奏版では、聞こえ方がうんと柔らかく甘さが増し、一般的
なロマンティシズムのイメージに近い。なかなか厳しい音楽だし演奏もそうな
んだけれど、それでも、美化された感じは否めない。
スクリャービンの『法悦の詩』という交響曲がありまして、「死」じゃなく
「詩」だけど、このタイトルなんか、言葉としては近い気がします。曲はしば
らく聴いていないし、こっちはフルオケものだけれど、でもなんだか似たイメ
ージ。(スクリャービンのほうが8年か9年後なんやね)