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(紹介文) 現代アメリカ作曲家のなかでも、とりわけ目覚ましい活躍をしてい |
るのが、このピーター・ボイヤー(1970-)です。このアルバムの中には5つの作 |
品が収録されていますが、そのどれもが興味深いものばかりですが、とりわけ |
「3人のオリンピア」は彼が興味を抱いているという神話と歴史を題材にしたも |
の。オリンピアというと、最近はオリンピック選手の意として捉えられることが多 |
いのですが、やはりここでは本来の意味であるギリシャ神話の神々を思い起こ |
すべきでしょう。3つの部分はそれぞれに神々を表現し、ストラヴィンスキーを思 |
わせる「アポロ」、愛と美の化身である「アフロディーテ」、そして戦いの神「アレ |
ス」と、うまく特徴を描き分けています。めちゃくちゃカッコイイ「祝典序曲」や伝 |
統の書式を見事に具現化した「交響曲第1番」など、気持ちのよい音を味わうこ |
とができる興奮の1枚です。 |
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期待したのは、新しい音色なんですが、残念ながらそれは叶えられず。 |
しかし、新しくはなくても、オーケストレーションのド派手な輝かしさは一級品。 |
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特に(1)(2)(4)の小品。 |
ここまで行けば「通俗」も「絶対」もない。 |
映画音楽みたいだというような感想も書けなくはないものの、こんなに派手では |
映画の邪魔。 |
(5)の交響曲だけなら、自然を謳った映画で音楽を担当したことのあるジョージ |
・フェントンの音楽などに通じなくもない。内声部をしっかり書き込んだという感じ |
ではなく、ヴェルディよりはミュージカルっぽいプッチーニふうに若干ドンシャリに |
聞こえなくもないけれど・・・(あまりいい譬えではありませんけど) |
(3)の弦楽合奏が、弦楽だけにしては見事に祝祭的で、聴きごたえも他の曲に |
劣らない。 |
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というような具合で、目新しさはないが、絢爛豪華、明るく脳天気にオーケスト |
ラを存分に楽しむことができる。 |
ロンドン・フィルの安定感のある技量、アビー・ロード・スタジオのプレゼンスの |
良さなども、この明るい音楽をものの見事に生かしている。 |