休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

映画音楽/『ラスト・ラン/殺しの一匹狼』&『夕日の挽歌』

20210110(了)

The Last Run & Wild Rovers  Music Composed by Jerry Goldsmith 

映画音楽/『ラスト・ラン/殺しの一匹狼』

             &『夕日の挽歌』

 
  2000年/CD/映画音楽(サントラ)/ⓒTurner Records/輸入/中古
  <★★★☆>

 

映画は1971年。学生時代ですが、多分共に見ていないと思います。
サントラは気にしていました。「夕陽の挽歌」のオーケストレーションはアー
サー・モートンと書いてあるのだけれど、「ラスト・ラン」のほうは書かれて
いません。

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『ラスト・ラン/殺しの一匹狼』

  (犯罪人の運び屋が、不幸と退屈から引退を破り、ある仕事を引き受ける
  という話。1971年製作、リチャード・フライシャー監督)
①メインタイトルは素敵なメロディ。ベースは「007シリーズ」のジョン・バ
リーのサウンドがベース。「さらばベルリンの灯」なんかもこんなサウンド
ったような記憶があります。②はそこに「ブリット」のときのラロ・シフリン
の感じが加えられた感じ。③のスペインはむしろイタリアっぽく、弦なんざま
るでマントヴァーニ。緩徐なムード音楽(Love Themeに近い)の④はゴール
ドスミスにしては珍しく甘い。⑦はモリコーネのこってりとヤクザっぽいアク
ション張り・・・とまあこの辺でやめておきましょう。
始めはハープシコードかと思いましたが、ツィンバロムですね、これが多用さ
れています。映画の舞台が東ヨーロッパまで広がっていることを示しているの
でしょうか。それとガン!とかバン!とかの衝撃音(今なら‛打込み’というよ
うな言葉を使う)が、奇妙な楽器の使いかたが多く、スッキリしていない。と
いうか・・・綺麗じゃない。その点もゴールドスミスらしくない。
⑫の歌は触れておきましょう。メインテーマを歌にしたもので、これだけはア
レンジャーの名が載っています。それより歌手がスティーヴ・ローレンス。あ
のイーディ・ゴーメの夫君だったはず。ペリー・コモやアンディ・ウィリアム
ズほど日本じゃ有名じゃないけれど、高名な歌手で、さすがに上手い。「ロシ
アより愛をこめて」で世界中に知られたマット・モンローの鼻声の線を狙い、

むしろより優れた歌唱になっていると思います。悲しいかな、映画と共に埋も

れてしまった。
 
以前からご贔屓の【素晴らしき映画音楽作曲家たち】というサイトの主はゴー
ルドスミスのファンを自称しているけれど、この作品は取り上げてくれていま
せん。前に書いたような具合で、ゴールドスミスのオリジナリティは乏しいと
判断してのことかと想像します。オーケストレーターの名がクレジットされて
いないのも関係あるかもしれませんねぇ。
こういう商業作曲家はパトロンがすべてといってもいいわけですから、“時代

の要請”(あるいは製作会社の要請)もあったんだと解釈するしかないでしょ

う。

ただし、変な音もなくはないが、オーケストレーション自体は実に上手く、相
当な手練れがやったに違いありません。まさか御大が?いやいや、それはない
でしょう、既に忙しかったでしょうから。

 

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『夕日の挽歌』

  (初老の男と若者の2人のカウボーイの夢と挫折。1971年製作、ブレイ
   ク・エドワーズ監督)  
小鳥のさえずり、馬のいななきに続いて、不穏なオケのサウンド。いい始ま
りの⑬。続いて歌。カントリーふうですが、あくまで「ふう」。おしいまの
ほうにももう一曲歌があります。エレン・スミスという歌手は知りません。
⑭はエルマー・バーンスタインの「荒野の7人」タイプやアーロン・コープ
ランドの有名な「ロデオ」や「アパラチアの春」のようなサウンドも混じっ
ている感じですが、さすがアーサー・モートンオーケストレーション。あ
くまでゴールドスミス・サウンドにしていて、頼もしい。
 
コープランドサウンドのほうが勝ってますかねぇ。それが時に不気味な雰
囲気を醸すように変容してゆくところなんか、面目躍如。
西部劇によく出てくるホンキートンク・ピアノ(ないしタック・ピアノ;ハ
ープシコードの代用品だったそうな)があちこちに使われていて、劇中音楽
になっているのも、このサントラに入れられてます。こういうエフェクト的
なものも請け負うのがゴールドスミスらしい。
ハイトーンのトランペット、オカリナのような吹奏楽器、ピアノの弦を弾い
ているようなサウンドなど、変わった音も使ってます。
ちょっと笑ってしまったのは㉑で、このティンパニが「アラビアのロレンス
のあの忘れられない始まりのティンパニとそっくり!そのあと、カントリー
ウェスタンふうの歌になる。
最後の㉒は出だしの不穏と同じで、相当暗い。これが非常に魅力的。どうや
らハッピーエンディングとは言えないようなんだが、美しいメロディがとっ

てかわり、お話の終りやエンドタイトルにつながる。

こんなふうに聴いてくると、「ラスト・ラン」ほどではないけれど、こっち

もそれなりにいろいろ連想させるサウンドがあるんですけどね。

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こんなところです。
『ラスト・ラン/殺しの一匹狼』も悪くはないんですがねぇ。突っ込みネタ
がやたらたくさんある。
だから、ゴールドスミスの個性と音楽アルバムとしての面白さは、なるほど
後者のほうに分があると思います。
録音は立派にリマスターが出来たようで、どちらも思いのほかよかった。