休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

ピアソラ/『ブエノスアイレスのマリア』

20210101(了)

アストル・ピアソラ/タンゴ・オペリータ;

     ブエノスアイレスのマリア』

     台本:オラシオ・フェレール
    初演:1968年 ブエノスアイレス
    編曲:レオニード・デシャトニコフ

f:id:kikuy1113:20210114012323j:plainf:id:kikuy1113:20210114012426j:plain

  第一部(①-⑨ 48:42)/第二部(①-⑧ 45:45)
 
    フリア・センコ、ハイロ(歌)
    オラシオ・フェレール(語り)
    ギドン・クレーメル(vln.)他 クレメラータ・ムジカ
    コラール・リリコ・ブエノスアイレズ(コーラス)
 
    録音:1997年(Wels)&1998年(ブエノスアイレス)
    1998年/CD2枚組/現代音楽(室内楽と声楽)/WMJ(邦盤)/TELDEC/中古
    <★★★★>

f:id:kikuy1113:20210114013244j:plain

12月に繰り返し聴き、あるいは流して、今年最初のメモになりました。
 
<帯惹句> ・・・は作曲家ピアソラの最高傑作であり、音楽史上もっとも
独創的な音楽・舞台作品の一つです。私はピアソラに「恋して」いました
が、それが今、本当の「愛」になったのを感じています。
                       ――ギドン・クレーメル
最高のアーチストたちと洗練されたアレンジ。ピアソラの天才とクレーメル
の霊感がひとつとなった哀愁と陶酔の音楽
 
 
これは邦盤なので、解説のみならず、ちゃんと対訳が付いていました。
 
この対訳がすごかった。日本語らしいんだが、意味がほとんどチンプンカン
プン。翻訳機による訳文なんじゃないかと思いつつ読み、今は・・・台本を
書いたフェレールというかたのぶっ飛んだ感性の産物なのにちがいない
という考えに落ち着いています。
ただ、それなら、ピアソラさんはそれを理解して曲をこしらえたことになる
わけで(まさか台本があとってことはないでしょう)、、、やっぱりワタシ
がいかに詩心がないかということなっちまうのか。ヤレヤレ。
 
例えばマリアは、ブエノスアイレスにいる可愛い街娼で、夢見がち、恋しが
ちで、タンゴと切っても切れない、あるいはタンゴのような女。例えばマリ
アは殉教者? 聖母マリアでもあり、マグダラのマリアでもある?みんなの心
にあるブエノスアイレスそのもののこと?そういうものをひっくるめて、韻
を踏ませて並べ立てた幻想? などと懸命にイメージをつかもうとしたんです
が、全くダメでした。結論は、、、言葉の羅列、タンゴという入れ物にぶっ
こんだブエノスアイレス。そうとしか考えられない。(日本語の訳者名が最
後に載っていました。ご苦労様なこと!)
でも、どうだろう、もうちょっとまとめるとするなら、これって、下賤で傲
慢な人間のレベルにまで引きずり下ろした降誕祭(クリスマス)、みたいな
ものなんじゃないか。マリアがマリアを生む、、、 自分で書いててくどい
ワ。この、なんにもイメージの湧かない言葉をずーっと読み続けるのは、な
かなか特異な時間でした。
 
解説のほうはというと、これが普通の日本語でして、台本のフェレールや、
企画と演奏のクレーメルは熱に浮かされたような文章を連ねていました。
それはそれでかまわないわけですが、作品解説はほんの僅か。それを一言
で表わすというと、
 「主人公マリアは、タンゴという音楽ジャンルを登場人物に置きかえたも
  の
なんだって。ブエノスアイレスじゃないんだね。まあそんなものでいいんで
しょう。
 
そういうことであれば、詩を解さぬワタシ向き。割り切って音として聴けば
ヨロシイというお墨付きをいただいたようなものだもの。

f:id:kikuy1113:20210114013502j:plain

       (フェレールピアソラ

 

リブレットを読む時は、このCDだけでなく、ひとつ前のコロンビアのギタ
ー曲を流しながらでも、なかなか合ったのです、不思議なことに。
 
音楽のほうは、ぶっ飛んだ詩つきの、ピアソラのエッセンスの塊という音
楽だと思いました。
1967‐8年ころの初演時は楽器は11人だったのを、8人に凝縮したらし
い。これ聴いていると、これこそがオリジナルと思わせる感じ。フェレー
ルやクレーメル自画自賛もわかるが、デシャトニコフもすばらしい仕事
をしたようです。
演奏の良し悪しを言う能力はワタシにゃありませんし、幅の広い音楽の集
合体なのですが、それでも何か言うとすれば、皆、おっそろしく上手い!
ノリノリ!鋭くしかも軽妙!
(結局始めに掲げた惹句がすべてかもしれません)
(こりゃ、オペラじゃない)