20201224(了) |
安野光雅/会いたかった画家
2016年/エッセイ/山川出版社/ハードカバー/中古 |
<★★★★> |
(出版社惹句) 小さな美術館ができました。クレー,ブリューゲル,モディリ |
アーニ,ゴッホ,ルソー,小村雪岱,花森安治……,美しさを前に思わず立ち尽くし |
た絵から,こういうふうに描きたかったと願った作品まで。カラー図版100点 |
収載。 |
読んでいて、思わずのめり込んでしまった気になったのが、実はゴッホ。 |
日本人の画家のことも、写真家の話もよかったのだが、なんのことはない、 |
半年ほど前に、原田マハの『たゆたえども沈まず』を読んで以来、ゴッホ |
のことを、なにかにつけて引きずっていまして、、、 |
リョサのゴーギャンの小説『楽園への道』を読んだことも、気になる要因 |
になっちゃった(のかもしれないですね)。 |
ウィレム・デフォーの映画も観てみようと思ってました。が、どういうもの |
か、イメージが違ってそうだと、手を出さないまま時間がたってしまってい |
ますけど・・・ |
ところが、ひょっこり、安野さんの本の中に力強く、いました・・・ |
もともとは、ゴッホについてこんなに書いておられるとは思いもせず読み始 |
めたんでしたが、なんだかうれしい読み物になっていたし、勉強にもなっち |
ゃった。 |
やっぱり『荒れ模様の空に鳥のむれ飛ぶ麦畑』なんですね。 |
ファーブルが昆虫記の第一巻を出したころ、ゴッホは車でその1.5キロほ |
どのアルルでもって、シャカリキに描いていたってこととか、戯曲「アルル |
の女」の作者ドーデの熱心な読者であったゴッホが描いた「アルルの女」、 |
ほんの少し前に『夭折してしまったビゼーのアルルの女』という名曲・・・ |
変な話、ああ、ゴッホもなんだかしっかり歴史の中にいるんだな、孤立無援 |
を嘆いてばかリいたみたいだけど・・・ てな感慨につながりました。 |
いろんな映画や写真の話も含んだ短い文章に挟まれるように、力の入った |
文章が入ってます。 |
ワタシの印象に強いのは、小村雪岱、ブリューゲル、ゴッホ、ルッソーで、 |
あとの3人はまああまりにも有名なんですが、日本画家はいくつも知らない。 |
そんな中で、かなりぐっときましたねぇ・・・ |
大雑把には、「写実」といことにかかわる記述が多い気がしましたし、そう |
思って観れば、安野さんの絵もそのことを結果的に考えさせることになる絵 |
かもしれないなァなどと思いながら読んでいました。 |
安野さんは日本画家じゃない、いわばあっさり味の知の勝った世界画家だと |
思うけれど、日本画家の面があるとすれば、それはこの小村雪岱から感じら |
れるようなものと共通するんじゃないか・・・ |
というようなことです。 |
(書いてありましたが、確かに人の気配がする・・・)
大事なことをいろいろ書けていないのですが、ここらへんにします。 |
「雑学」でない、安野さんの専門分野の感受性の主張が表れているように |
思えました。(当たり前でしょうが) |
カバーは表も裏も、パウル・クレー。これだってその一つでしょう。 |
安野さんが代用教員をされたのが「算数」だったというのも、画伯の好みや |
方向を示しているような気がしますね。これは勝手な思い込みでしょうけど。 |
※ |
さっき見ていたテレビの番組の知識(最近の知見)では・・・ |
目の話。ゴッホの色覚は3色型でなく2色型だったらしいという。 |
犬はそうだと思うが、猫もそのよう。もののかたちや輪郭に敏感。夜目が利 |
く。狩りと結びついているという解釈。 |
人間では、種としては2色型と3色型が併存していて、進化や生き残りに役 |
立ったとも。 |
青と緑で2色系。青と緑と赤で3色系。赤は緑との融合型があって、その融合 |
の度合いは千差万別。 |
見え方、特に赤の見え方には猛烈に違いがある・・・ここに詳しくは書けな |
いけれど、身近な人の見え方(特に赤)が相当違っていることがあることが、 |
普段は気付かないのだって。 |
で、ゴッホの絵を見てみると・・・ |
そう。赤ってないよ、確かに・・・ |
(写りが悪いのが難ですが、、、情報量の多さが猛烈)