休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

林 光 作品集

20200430(了)
   <カメラータ・コンテンポラリー・アーカイヴズ>
林 光 作品集  Hikaru Hayashi(1931-2012);

(1)第2交響曲「さまざまな歌」(1985)
  ①4:00 ②5:47 ③7:08 ④6:27
(2)ソプラノとフルートのための「道」「子供と線路」「空」
  ⑤「道」(1966) 6:52
  ⑥「子供と線路」 (1966) 4:00
  ⑦「空」 (1968) 7:48
(3)波紋⑧ (1964) 4:27

  (1);尾高忠明指揮/東京フィルハーモニー交響楽団/高橋悠治(p)
        録音;1985年5月/東京文化会館/ライブ
  (2);藍川由美(sp)/中川昌己(fl)
        録音;1985年5月/座間市民会館
  (3);鈴木一郎(g)
        録音;1985年5月/入間市市民会館
   2007年/CD/現代曲/カメラータ・トウキョウ/邦盤
   <★★★☆>

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【帯文】 ・・・・林光は、本質的に「歌」の作家である。そしてそのこと
は、実は管弦楽や器楽の作品にも、如実に反映し、第2交響曲「さまざまな
歌」では、題名にも明らかな通り、まさにそれが端的に表れている。歌を
そのまま器楽に転用するというと、軟弱で連綿としたカンタービレを連想
しがちだが、ここで用いられる「さまざまな歌」は、各楽器のフィルター
を通して「器楽による歌」に昇華し、作曲者の日常の手業として丁寧に綴
られていく。              (川島素晴ブックレット解説より)

 

(1)クラリネットのソロから始まりピアノが加わる。徐々に音が増えて行
くものの、ぶ厚い音にはなって行かない。ガーンとはならない。室内オケ
のよう。でもどうだろう、ピアノ協奏曲みたい。高橋悠治だし・・・
②この楽章は歌のようなメロディのようなのが主。どこか歌といっても鳥
のような感じがある。吉松隆ともメシアンともラウタヴァーラとも違うん
だけれど。
そこそこ盛り上がるが、繊細でひんやりと透き通ったサウンドは、疲れな
い。ピチカートでひっそりと終る。
③ピアノソロで堂々と始まも、すぐに民謡のアレンジふうになり、不協和
音が“美しく”盛り上がる。ピアノが抑えた美しさで締める。
和風にも洋風にもあまり踏み出さないで、国籍不明な範囲にとどまりがち
な曲だが、この楽章だけは、日本、かな。それも「雅」というどす黒い虚
無のようなものが、ふっと見える気がする。一瞬えっ?と思う・・・
プロコフィエフの第3ピアノ協奏曲の終楽章ようなリズムの刻み方やピ
アノのダイナミズム・・・まあ、規模感が乏しく、どこか和製っぽさもあ
るもので、あんなにかっこよくはない、たたみかけてもくれないけれど
(でも結構似てるヨ)・・・を示して、留飲の下がる終わり方。

 

以上のようなことをメモしました、、、
この、ピアノ以外は騒ぎ立てることがほぼない、オシャレな美しさでい
っぱい(歌でいっぱいというのが正しいのかな)の交響曲は、技法的に
は尖がったところが多分ほとんどないけれど、普通交響曲というのはそ
の作曲家の管弦楽法の粋が聴けるもの、と聴かされるほうは考えますか
らね、まあ鵜の目鷹の目という感じで聴くことになります。いいか悪い
かはともかくネ。ワタシだって少しは力が入る。でもこの作品はタイト
ルが「歌」。構えることはなかったみたいでした。生はきっと楽しい。
プロコフィエフ云々は少しは当たっていると思いますよ。

 

(2)歌物はたいてい苦手です。詩がどうもダメなのです。でもこの作
品は、抵抗感はほとんどありませんでした。谷川俊太郎の詩がダメとい
うんじゃなくて、なんだってたいていダメなんだから、今回は良いほう
かもしれん。
④「この道は誰の道―」で始まる。「とうりゃんせ・・・」が何度か出
てくる。フルートと声がものすごく美しく絡み合う。
⑤「子供は毎日忙しかった・・・」 それはいいとして、子供が電車にひ
かれてしまうなんざ、知りたくも聞きたくもないというか、だらだら付
き合い続けたくはない。
⑥「空はどうして自らの青さに耐えているのか・・・」なんてのもそう。
ただし途中に「今日も子供たちは遊ぶのに忙しい・・・」という⑤にそっ
くりな一行があって、それは正しいことだ思うもんだから、印象に残り
ました。
こういうふうに、はっきりと歌詞が聴きとれるのはそれなりに良いと思
います。無視できないですからね。

 

(3)は、静かで暗い湖面でも池面でもいい、できた波紋がニ三度、ず
ーっと広がっては消えるのを描いたというようなものらしい。そう言わ
れなきゃ、わかりゃしない・・・

 

解説はざーっと観ましたが、聴く人を楽しませる助けにはなっていない
ようでした。
林の作品は昔何曲かは聴いたことがありますが、今回はたまたまです。
気まぐれ。何か日本のものをと思って選んだCDです。企画もの~パイロ
ットもの~です。(いや・・・録音年と月が皆同じなので、もともとア
ルバム用なのかも)

この方は、でもこうした(2)のような歌が上手い方なんだろうな。
ワタシは歌にしてはイヤだとは思わなかった。むしろいい印象。
交響曲(実際はピアノ協奏曲)のほうは気に入りました。
日本人には理解しやすそうな、明け透けに鳴らない線の細い美しさ。

映画の音楽も担当されていたはずで、何か手に入りやすいものがあると
いいのにな。見つけたのは高くって・・・、でも多分好きにはならない
でしょう。