休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

クシェネク:ピアノ協奏曲全集 1

20220712(了)

クシェネク:ピアノ協奏曲全集 1

Ernst KRENEK(1900-1991)

  : Piano Concertos (Complete), Vol. 1 

(1)ピアノ協奏曲 第1番 Op. 18(1923) 30:24
  ①Ⅰ、5:37 ②Ⅱ、11:02 ③Ⅲ、3:04 ④Ⅳ、10:54
(2)ピアノ協奏曲 第2番 Op. 81(1937) 24:51
  ⑤Ⅰ、5:52 ⑥Ⅱ、6:28 ⑦Ⅲ、3:25 ⑧Ⅳ、5:07 ⑨Ⅴ、4:13
(3)ピアノ協奏曲 第3番 Op. 107(1946) 12:58
  ⑩Ⅰ、1:57 ⑪Ⅱ、3:49 ⑫Ⅲ、1:41 ⑬Ⅳ、2:42 ⑭Ⅴ、2:51
 
  ピアノ:ミハイル・コルジェフ
  指揮:ケネス・ウッズ/イギリス交響楽団
  録音:2015年9月、英ウェールズ、モンマス、ワイアストーン・コンサートホール
      (1)&(2)世界初録音 Tot.68:45
  CD/クラシック/現代音楽/協奏曲/Ⓟ&ⓒ 2016 Toccata Classics、London/
  /輸入盤/中古
  <★★★☆>

去年の10月に、ピアノ協奏曲の第2集のほうを聴いて、アップしました。
ストラヴィンスキーよりスタイルを変えた方で「カメレオン作曲家」なんて
言われたと書いている、だからこれだと「りスペクトが足りない」感じじゃ
ないか、とも。
今回は1920年台、1930年台、1940年台の作品が一つづつ。2重
協奏曲はなく、ピアノ一台とオケ。楽章数が多い。
 
NAXOSの紹介文>から : ジャズから十二音を駆使した作品まで、多彩な
作風を持つクシェネク・・・ バルトークプロコフィエフ、シェーンベル
ク、ショスタコーヴィチ作品にも匹敵する作品でありながら、これまでにほ
とんど演奏されることがなく、このアルバムに収録された3曲も、内2曲が世
界初録音というレアなレパートリーです。これらの作品はどれも十二音の技
法で書かれていますが、どの作品も技巧的で、ウィットに富んでいます。
1920年代から1940年代は多彩な作風が世の中を席巻していましたが、クシェ
ネク作品からもそんな雰囲気が存分に感じられます・・・
 
(1)第1番。ピアノソロから始まり、徐々に静かにオケが加わってくる。
第二楽章に入ると、民族色的な香りも少しするけれど、やっぱり、どこの国
だ、地方だ、というようなところはない、ヨーロッパの、どちらかというと、
ドイツを含めた東寄りの方かなあという程度で、いわば「絶対音楽」タイプ。
緩徐なところはなかなか可愛かったり甘ったるかったりするところもある。
短い第3楽章はちょっとアンニュイな調子のピアノ、オケは静かに合わせる
だけ。新しい感覚の領域に入って行きそうなんだが、、、
第4楽章に入ると、なんだぁ、古いロマン派の軽い調子の行進曲風。ちょっ
とだけ新しい和声を覗かせたりしつつも、「そっち」には進まず、古臭い調
子を交互に出して意地悪に遊ぶような感じ。可愛く静かに終わる。
 
でもどうでしょう、後期ロマン派の大作曲家の伝統を踏まえたお遊び的協奏
曲といった風情で、極めてテクニカル。かつ音楽的安定感、非常に高い。
これが23才の第1ピアノ協奏曲か。すごいんじゃないですかねぇ。
知らない人に、ブラインドで聴かせてあげたい。
 
(2)第2番は上記第1番の14年後。
サウンド自体は大きくは変わらないけれど、不安な調子が支配的。
暗くはないものの、沈潜した感じ⑤から、大戦前の危なっかしさを思わせる、
オイオイ大丈夫かよ、危ないぞ!といった調子へ⑥。ピアノが独白したりイ
ライラと喋り散らしたり⑦。オケが静かに戻る⑧ではようやくというべきか、

尖ったサウンドが現れる。

(Canon in der Umkehrung さかさまにしたカノン?

なんじゃこれは・・・) 精神的な混乱だろうか。最後はピアノのつぶやき
で静かに終ってしまう⑨。ま、勿論妄想です。
オケが全部鳴るというようなことはほとんどなくて、何か嫌な感じの精神状
態であることを、抑えて抑えて表現している感じがしますね。第1番のよう
な遊び感覚はない。新しい手法、技法なんてものも案外ない。ただし、この
サウンド自体は実は結構魅力的でした。(ひねくれてますけど)  
 
(3)強い打鍵で始まる第3番。これも5楽章あるけれど、時間的には2番
の半分しかない。
調性は、あったりなかったり、というものじゃないでしょうか。ワタシには
よくわかりません。ああ、おしまいのほうで、ピアノの弦を掻き鳴らすなん
てことやってましたね。ありゃ遊びでしょう・・・
バルトークの、たぎるような民族の血、あるいはそれに紐づく怒りのような
ものを、抑えて表現するとしたら、こんな感じかもしれないと思わぬでもな
いが、、、それも妄想。終戦の翌年の作ですからね、つい。
ピアノがよくしゃべる協奏曲である点は前の2曲とそんなに変わらない。
最後にやっとオケも騒いで終わりました。その感じがやはりバルトークっぽ
い気はしました。(かの『弦チェレ』の凄まじい最後を引き合いに出すのは
のは無茶でしょうが、実は連想してしまったからなのです)
 
派手なところのまるでない協奏曲集で、強い印象を残すなんてとても言えな
いとしても、ピアノのやや陰気なお喋りを、オケが控えめにサポートすると
いうのが、意外に好ましかったですね。
ひょっとすると大変な作曲家だったかもしれないと思います。それなのに、
こうだ!という言葉が見つからず、随分車中で流していました。気に入って
いるのにまとまらず、結局上記のような解説まがいになってしまいました。
こういう時は恥ずかしながら専門知識がほしい。
きっとオーケストレーション、上手い方だったんじゃないかな。管弦楽もの
などいろいろ聴いてみたい気がします。