休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

高峰秀子/旅日記 ヨーロッパ二人三脚

f:id:kikuy1113:20171006002000j:plain

20200228(了)
高峰秀子/旅日記 ヨーロッパ二人三脚

  解説;斎藤明美松山善三高峰秀子養女/作家)
  平成25年(2013)/新潮社/単行本/中古
       <★★★☆>

f:id:kikuy1113:20200219002100j:plainf:id:kikuy1113:20200219002400j:plain

まあ、一般人という扱いでいいのかなぁ、、、1958年、62年前のヨー
ロッパにいざなってもらいましょう、ワタシャ小学生か、円のレート
は1ドル360円。
いやいや、「わたしの渡世日記」のような傑作が書ける人が一般人な
わけない。よな?
もっともここじゃあ、面倒だったりややこしい漢字は平仮名や時には
カタカナで書いていたりするし、推敲なく、時には意味不明な単語や
文法的に変なところがあったりもする。
また、56年の時を経て本にするに当たっては、それこそノートの
まんま。(ノートの写真や中身のほんの一部が本の前後に紹介され
ているとおり)
34歳から35歳にかけての長い期間の旅ですねぇ。1958/8/24―1959/
3/28。そして、長い短いはあるけれど、毎日、実に真面目に記述して
いる。

f:id:kikuy1113:20171006002200j:plain

f:id:kikuy1113:20171006002300j:plain

帯の二つ目の写真の最初に書いてある文章のもとはこんな感じ・・・

   松山ともしみじみ話したが、この何百人の中で一ばんビンボウなの
  はわたしたち夫婦だね、借金して、外国へ来てるとは誰も思わないね、
  と、タメ息をつき、二人で大声で笑った。
   私たちのとなりの席にはシェリー・ウィンタース、そしてイタリー
  のテーブルにソフィア・ローレンルネ・クレール等の顔もみえ、そ
  の他たくさん知った名前の人もいるらしいのだが、連日の疲れでボッ
  となった頭ではキョロキョロあたりを見まわす元気もない。音楽がサ
  ヨナラの主題歌を演奏し、こちらを見てニッコリしている。(略)盛
  大な花火をさいごに終わったのは朝の三時半。くたくたにつかれて部
  やへもどり明日の出発の支度をしたりしてベッドについたのは四時半
  だった。

なんてな具合。ヴェニスでの最高の時なのにグランプリを受けても熱狂は
なく、ほっとしたというだけ。(サヨナラというのは「無法松の一生」の
主題歌かなにからしい)
けっこう細かく食事やその店のことを書いている。それよりなにより高峰
の買い物癖が凄まじかった。
どこがビンボウだ!!! ハハ。

イタリアはローマから始まるも、映画祭の街ヴェニス中心。次は長くパリ
が中心。そこからドイツに行ったりする。ボンやケルン。
パリに戻ると、一人暮らしの藤田嗣治に会う。「レオナール・フジタ」は
なかなか羽振りがよさそうだった。外のトイレは有料で20フラン。よく
歩くが、とにかく食事の記述が多い。こんなのもちょろっと・・・
 
  どこへ行っても大使館なるもの同じ印象。ざあます夫人とどことなく
 冷めたき男性、立派な館邸、不味い食事。
  税金を払っているこっちの身にすると、あまりユカイではない。
  岸恵子さんが来る。彼女、やせて干物の如くだがけっこうけなげにや
 っているらしい。この月曜日日本へ三ケ月帰ると、嬉しそうだった。
 
若き岸恵子さんやね。ワタシはこの方のエッセイが気に入って何冊か読み、
娘に「ベラルーシの林檎」をプレゼントしたことがあります。
スペイン行き、根城はマドリッド梅原龍三郎なんてビッグネームも参加。
フラメンコはアラエッサッサの安来節みたい、、、に笑う。(ワタシ)
パリに戻り、またドイツへ・・・

ま、あとはさっといきましょう。
パリを根城にあちこちに出かけ、その後はローマを根城にあちこちでかけ、
ようやくマルセイユから帰路、クルーズ船に乗る。延々。地中海を東へ、
スエズを経て、アデンやムンバイで下船したりしながら・・・退屈を楽し
む長いクルージングの帰途。

f:id:kikuy1113:20200219002000j:plain

いわば単なるメモ帳。読まれることは(ほとんど)想定していないもの
といってもいいものなんで、「渡世日記」ではわからない素の「秀子」
がいました。
ワタシは、意外ですが、なんとなく映画を観ているような気になりまし
た。養女の斎藤明美さんがあとがきで同じようなことを書いていました。
これはたくさんのノートの一冊で、単純に夫婦の旅行のことを書き留め
ておいただけというもの。で、中には人に見られて恥ずかしい困るよう
なことは、他の50数冊の旅のノートともども、一切書いてない、それは
いかにも高峰らしい、と書いている。
そして始めの2週間を除けば、この自費での旅が高峰にとって最長で特
別な旅であったことも。
釣られて書きますと、女優業なるものに拘りのなかった彼女自身はこの
旅行記の中で、けっこうたくさんの映画を観てます。原語でね。だから
かもしれないが、たいてい「つまらん」と吐き捨てるように書いている
場合が多い。

 

(朝方眠る前に楽しい時間を幾度か過ごさせてもらいました。)