休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

佐藤 勝 の世界

20190911(了)
佐藤 勝 の世界
JAPANESE CINEMA MUSIC SERIES
WORKS OF MASARU SATOH Original Motion Picture Soundtracks
 ①.「札幌オリンピック」 大回転/終曲    1972  8:45
 ②.「黒木太郎の愛と冒険」        1977  3:06
 ③.「金環蝕」              1975  2:20
 ④.「忍ぶ糸」              1973  4:06*
 ⑤.「無頼漢」              1970  2:10
 ⑥.「日本沈没」             1973  3:23*
 ⑦.「恍惚の人」             1973  3:21*
 ⑧.「御用金」              1969  2:30*
 ⑨.「湖の琴」              1966  1:57
 ⑩.「メ ス」              1974  3:03
 ⑪.「故 郷」              1972  3:19
 ⑫.「家 族」              1970  2:15
 ⑬.「喜劇・黄綬褒章」          1973  1:38*
 ⑭.「われ一粒の麦なれど」        1964  2:00
 ⑮.「用心棒」              1961  2:28
 ⑯.「戦争と人間」            1970  4:36*
 ⑰.「東雲楼 女の乱」             1994  3:16*
 ⑱.「敦 煌」                 1988  6:10*
 ⑲.「女殺油地獄」             1992  6:12*
 ⑳.「EAST MEETS WEST」          1995  5:05*

   作曲・編曲・指揮:佐藤 勝      *ステレオ収録
   1997/CD/映画音楽/TOHO MUSIC/ポリスター/邦盤/中古
   <★★★△>

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ライナーノーツに長いインタヴューと担当した全作品のリストが載ってまし
て、ほぼ310作品。そのうちの20作品のごく一部が自選として並べられ
ている。音楽本意であって、いわば〈佐藤勝組曲〉だとさ。思い入れの強い
ものと受け取ってみましょう。
ここの曲については、字が小さいですが、もうちょっと細かいデータのペー
ジも貼り付けてみます。出演者が載ってない(年表にはある)のが残念。

でも実は20作のうち、手に入れてみるきっかけになったのは⑧「御用金」。
欲を言えば、のんびりした「雨あがる」も聴いてみたかったんですがね。
ともあれそんな動機。ついでにいくつか面白いものが聴ければ、と。
車中で時々流していました。
いろんなジャンルがならべられていて、抽斗が多いというよりは、何でも面
白そうなものは試してみた、というような風だったな。

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①「札幌オリンピック」;確か観た。太鼓やドラムスをフィーチャーしたあ
とはフラメンコの音楽の‘大回転’。あとは祭典の終わりを、「野生のエルザ」
に似たメロディーを交えて少しメランコリックに。最後は日本映画らしいエ
ンディング。
②「黒木太郎の愛と冒険」;ATGか。知らない。ハーモニカとジャズっぽい
リズムセクションマカロニウエスタン風で安っぽいけれど、流れもある。  
③「金環蝕」;石川達三だから社会派だね。米国の乾いたハードボイルド風。
打楽器に使っている(なんだかわからない)ものの音色が面白い。
④「忍ぶ糸」;文学系メロドラマ、かな。ギターや大正琴(チター?)や尺
八などがいかにも和風な湿気やメランコリーを醸す。
⑤「無頼漢」;ありふれたリズムセクションに琵琶やサックスが絡む。基本
的にはハードボイルドのようですね。脚本は寺山修司ですか。
⑥「日本沈没」;小松左京のアレですよね。本は読みましたよ、確か。映画
は観たような気がしますが覚えてません。まるでゴジラのような古臭さがあ
りますが、だんだん青春ものみたいな薄手のオーケストラサウンドになって、
盛り上がって終わります。
⑦「恍惚の人」;有吉佐和子の本。演じたのは森繁でしたっけ。音楽の感じ
がねぇ、「雨あがる」みたいなのね。
⑧「御用金」;もっと野太い音楽だったような気がしていました。そんなと
ころもあったのかもしれませんが・・・田舎っぽい城下町の感じ。
 学生時代でしてね、金もないくせに結構いろんな映画を観ていました。時
 代劇はむしろ苦手なほうでしたが、『いのちぼうにふろう』とか『心中天
 島』を観て、映画はそこそこだけれど、音楽のほうは痛く気に入りました。
 これらは武満徹。で、そのころ観た『御用金』は骨太な時代物で、上記斬
 新な二作とはまるで違う王道的なものでしたが、音楽にも惹かれ、武満に
 も負けないぞと確か思った。でも、武満への興味にその後はシフトして行
 きましてね、どんどん忘れてしまった。今回たまたま字面を見つけて聴い
 てみたくなったというわけです。気の長い話です。
 やっぱりね、もっともっと重量感のある音楽だったような気がするな。だ
 から、一作につき数分というような集め方のものには、あまり期待しちゃ
 いけない。しょうがないけど、不満足なまんまになりました。
⑨「湖の琴」;水上勉ですか。タイトル知りません。ハープとフルートとい
う黄金の組合せ。バタ臭いような、楚々とした風情のような、どっちともと

れる。
⑩「メ ス」;これはもうかなりバタ臭い。都会のメランコリー。ジャズっ
ぽいものに弦のオブリガート
⑪「故 郷」;はーん、山田洋次さんね。故郷を思わせるものにはなんでも合
う調子ということになりますか。
⑫「家 族」;これも山田洋次で、⑪と共通点がありますが、おっとりラテン
系ないし地中海風味も混じります。
⑬「喜劇・黄綬褒章」;一分半ぐらいじゃわかりません。チターやハーモニ
カ。

⑭「われ一粒の麦なれど」;人情もの的な青春ものでしょうか。歌詞のない
混声合唱が猛烈に古臭い。
⑮「用心棒」;この音楽は覚えてます。このやぼったさが世界の黒澤が所望
した音楽だったのでしょう。どこか人を食った三船のキャラにもよく合って
ました。⑩や⑪⑫などとの違いがめちゃくちゃ大きい。
⑯「戦争と人間」;大長編の映画化にふさわしいスケール感や甘いテーマ
(割と珍しい?)が、しっかり作られている感じ。
⑰「東雲楼 女の乱」;平成に入ってからの音楽で、音質自体が新しいが、
あくまで劇伴音楽風。ハープシコードや何か大型のマンドリンのような音の
の弦楽器が特徴的。
⑱「敦 煌」;井上靖作の映画化。これも⑰同様劇伴風。チターを使ってい
るよう。無理して中国や中央アジアの色を取り込まず、ご自分の感性で作ら
れた音色のようです。
⑲「女殺油地獄」;近松門左衛門もの。平成に入ってからのものですが、こ
のタイトル、知りません。琵琶と大正琴のようなものを駆使してます。音質
は俄然いい。平凡ながら、けっこう気に入りました。
⑳「EAST MEETS WEST」;音を分厚くせずコミカルな味を求めたもののよ
う。中ではバンジョーが特徴的。平成7年で、この20曲では最も新しい作品。

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オーソドックスさからは案外遠いところで、様々に試し試し音楽を付けら
れた、自由な発想が身上の、それでもたたき上げの作曲家だと思います。
また、外国映画の音楽も結構参考にされた気がします。例えば、「札幌オ
リンピック」の①出だしのティンパニ。「アラビアのロレンス」を想起し
ません? こじつけすぎかなぁ。
以前には10数枚の全集っぽいものが出ていたようで、その後ろのほうが、
通販のリストにもちらほら載っていました。まあそこまでこだわる気もあ
りません。これくらいにしておきます。

 

③⑦⑨⑩⑱⑲あたりが気に入りました。楽しかったです。
70年代末から80年代末までがスカッとないのは何かあったかと気になり、裏
の年表を眺めると、確かに作品数が極端に少ない。病気でもされたんでしょ
うかねぇ。

音質は、おしまいの4曲がよろしい。他は、年代的にはいまいちながら、まず
まずだったと思います。