休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

ストラヴィンスキー/カプリッチョ、組曲1番&2番、詩篇交響曲、「結婚」「マヴラ」他

アンセルメストラヴィンスキー全集 2

                     3-3

 ERNEST ANSERMET EDITION - STRAVINSKY(1882-1971) 

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●CD 7
 (14)ピアノと管楽のための協奏曲(1924) ①-③ 17:38
    <★★★>

 (15)カプリッチョ(ピアノと管弦楽のための)(1929) ④-⑥ 

     16:49    (14)(15)ニキータ・マガロフ(ピアノ)
    <★★★>
 (16)組曲 第1番(1917-25) ⑦-⑩ 4:10
 (17)組曲 第2番(1921) ⑪-⑭ 6:23
    <★★★☆>
 (18)管弦楽のための4つの練習曲(1914-18) ⑮-⑱ 9:36
    <★★★☆>
 (19)ロシア風スケルツォ(1943-44) ⑲ 4:14
    <★★★☆>
●CD 8
 (20)詩篇交響曲(1930) ①-③ 21:05
     ローザンヌ放送合唱団、ローザンヌ青年合唱団
    <★★★☆>
 (21)バレエ・カンタータ「結婚」(1914-17) ④-⑦ 25:00
     ジュネーヴ・モテット合唱団、ソプラノ、アルト、テノール、バス、ピアノ4、種々打楽器
           <★★★△>
 (22)歌劇「マヴラ」(1921-22)〈英語版〉 ⑧-㉑ 30:48
     ジョーン・カーライル(s)、モニカ・シンクレア(ms)、ヘレン・ワッツ(a)、ケネス・マクドナルド(te)
     ほぼ三管編成プラスvln2、vla1,vc3,b3、ティンパニ
    <★★★☆>
 
  エルネスト・アンセルメ指揮/スイス・ロマンド管弦楽団
    録音;ジュネーヴ、ヴィクトリア・ホール
   (14)(15)1955年11月、(16)(17)(18)1962年4月、(19)1964年
   (20)(21)1961年、(22)1964年
   1994年/CD4枚組/管弦楽/ポリドール/邦盤/(Decca/London)中古

 

●CD 7

(14)&(15):

このピアノ付きの二つを一緒に扱うのは心苦しいものがあるが、そんなに好き
じゃない。どちらかというと、ストラヴィンスキーのなかでは苦手なほう。
物々しさと素っ頓狂さが併存する、まあストラヴィンスキー以外には絶対にな
い音。
それに、その音自体が良くない。1955年録音。「火の鳥」とは同じころの録
音だが、かなりデッドな乾いたサウンドで、魅力(≒色気)のないこと甚だし
い。潤いを求める音楽じゃないとはいえ、このセットものを通じて、最も魅力
のない音質。「カプリッチョ」のほうがややまし。(トスカニーニNBC響を
連想してしまいました。こりゃ極端だけどね。) 音の広がりが乏しく、初め、
モノーラルかと思った。しかも演奏の精度もいまいち。この野暮ったさが味な
んだといわれたら、黙るしかない。(いや実際そうなのかも・・・)
 
参考に聴いた他の演奏は、サロネン/ロンドン・シンフォニエッタサロネン
だし、デジタル録音だし、、、と思ったけれど、音質とピアニストではかなわ
ないなぁというだけでした。音楽自体がそれほどワタシには魅力的でないとい
うこともあるせいか、さほど大きな違いはなかったですね。
 

(16)&(17):組曲 第1番&第2番

この二つは一緒に扱っていいでしょう。その代わり、こっちは悪くない。

管楽器とドンドコドンと弦楽。第1番は子どもの連弾用の曲をオーケストレー
ション。第2番はミュージックホール用の曲をオーケストレーション
由来はそうでも、そのもとになっているのは、ロシア民謡なんじゃないか。
ペトルーシュカ」で聴かれたようなメロディが、こまめに様々聴かれ、気付
けば終わっているというふう。いかにも断片の寄せ集めなので、ひとつづつは
追いかけられない(計8つに分かれている)けれど、十分楽しい。それに弦が
ぶ厚いからだろうか、聴きごたえもあるサウンド
前の2曲が少ししんどかったので、こっちが素敵な曲に聞こえちゃったんじゃ
なきゃいいけどねぇ・・・
 

(18):管弦楽のための4つのエチュード

この曲は、昔、ブーレーズ/フランス放送局管の「春の祭典」(コンサートホール・ソサ

エティのLP)の余白に入っていたので、ガキの頃から知っています。スペイン土
産のような曲だって。知りませんでした。そう言われてみると・・・。
で、これ、こんなに素敵な曲でしたっけ・・・。ハハハ。ワタシが変わった!
 
ペトルーシュカ」や「うぐいすの歌」とのつながりがあるそうな。確かにそ
うですね。かなり大きめの編成で、聴きごたえがある。
ポール・ホワイトマン楽団用のヴァージョンもあるそうな。そっちは入ってな
いし、聴かなくてもいいな。
 
 
●CD 8
(20)「詩篇交響曲」:もともと好きな曲です。
3大バレエとプルチネルラ以外では、最も多く聴いている曲かもしれません
ね。それもいろんな演奏で。
ストラヴィンスキーでは、この時期ともなると、ここまでぶ厚い複雑な和声
はそんなにないでしょう・・・ 最終楽章なんざ珍しく美しいしね。
アンセルメ盤は、ま、普通の感じでした。
 

(21)バレエ・カンタータ「結婚」:  

  第1部 ・第1場;おさげ髪  ・第2場;花嫁の家  ・第3場;花嫁の出発 

  第2部 ・第4場;結婚の祝宴
集めたロシア民族詩集からストラヴィンスキー自身が選んで結婚の情景へ、
台本を作り上げたものだそうな。フランス語?
弦も管もない、メロディが弾けるのはピアノのみ。
出だしなんぞ結婚噺の始まりにしては、信じがたい「オーメン」もどきで、
少なからずおどろおどろしいが、なに、そこはうんと乾いてちゃんとストラ
ヴィンスキー、直ぐに慣れる。
 
(22)歌劇「マヴラ」:これが8枚組の最後の曲です。
民話的と言えばいいのか、ヘンな話で、あらすじは・・・
  フランスのシャルル10世の時代、バラシャとヴァジルは恋仲である。
  バラシャの母が老コックの死を嘆いている。娘のバラシャは恋人である
  軽騎兵のヴァジルを女装させて、マヴラという名前でコックとして住み
  こませる。ある日、母と娘が突然帰宅すると、マヴラが髭を剃っている。
  仰天した母は失神する。マヴラことヴァジルは慌てふためいて窓から遁

  走する。「ヴァジル! ヴァジル!」と後を追うバラシャの絶叫で幕が下

  りる。

なんとも不可解なほど唐突なエンディングに、それはないやろ!
ほぼ三管編成で、始めのほうの管のアンサンブルは独特で素敵です。
弦はヴァイオリン2、ヴィオラ1,チェロ3,コントラバス3、そしてティ
ンパニ。このチェロ3とコントラバス3が低音を支えて効いてます。
オペラ・ブッファったって、このぱさぱさした雰囲気、このサウンドだもん
ね、不思議な感じ。突き放して見る滑稽噺。
あえて言うなら、これは英語であって、なんか余計に薄っぺらい。こんな話
だから、薄っぺらさは向いているかもしれない。でもねえ、オペラ・ブッフ
ァったってオペラなんです、音楽です。言葉に音楽的な味は欲しい。英語は
ストラヴィンスキーにはどうも合わない気がするなぁ。例えば、本来の(?)
ロシア語なんかのほうが、ずっと面白い響きになるんじゃないでしょうかね。
そんな気がしました。つまらん感想ですけどね。

「兵士の物語」のような(ねじくれた童話的な)突き刺さり方はしない、と

だけ。

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さて、アンセルメストラヴィンスキーの8枚組、一応鑑賞、終り。
少しは別の演奏と比較しながら、長時間かけて楽しみました。
楽しみましたが、8枚組ともなると、鑑賞記はけっこうタイヘンというか、メ
ンドクサイですね、ずっと抱えておくという感じが。
半世紀以上前の録音だったわけで、やや古さは感じたものの・・・
それは、単純に技術(録音技術)の差によるものだと考えてよさそう。
新しいものに、えらく負けていたものも、ほとんど遜色のないものもあった。
もちろん、そこがけっこう肝心なところなんだが、、、つまり演奏スタイルの
上でのことで、興が乗っているものとそうでないもの、古さを感じさせる曲と
そうでない曲があったのが、印象深い。だからどうというようなものじゃあり
ません、50-60年なんて古さは中途半端。時間の無情さもいろいろ。ま、
そんなもんです。

 

(付録)
4/4(日)
朝、ベッドの中で、「うぐいすの歌」の後半をラジオで聞いた。
フリッツ・ライナー/シカゴ響だって。録音は恐らくライナーのほうが古い
と思うが、すごかったなぁ。
よろめいた。じゃない、目が覚めました。ホント。

 

FRANK SINATRA NINE CLASSIC ALBUMS

シナトラのアルバム9枚分です

20210326(了)

FRANK SINATRA Vol.2                NINE CLASSIC ALBUMS

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(1)RING-A-DING-DING ―1961
     ジョニー・マンデル/アレンジ・指揮
     フェリックス・スラトキン指揮
(2)COME SWING WITH ME ―1961
     ビリー・メイ/アレンジ・指揮
     ハイネ・ボー/アレンジ(2,5,8,9,10)
(3)I REMEMBER TOMMY ―1961
     サイ・オリヴァー/アレンジ・指揮
(4)POINT OF NO RETURN ―1962
     アクセル・ストーダール/アレンジ・指揮
     ハイネ・ボー/アレンジ
(5)SINATRA & STRINGS ―1962
     ドン・コスタ/アレンジ・指揮
(6)SINATRA & SWINGIN’ BRASS ―1962
     ニール・ヘフティ/アレンジ・指揮
(7)ALL ALONE ―1962
     ゴードン・ジェンキンズ/アレンジ・指揮
(8)SINATRA SINGS GREAT SONGS FROM GREAT BRITAIN ―1962
     ロバート・ファーノン/アレンジ・指揮
(9)SINATRA - BASIE: AN HISTORIC MUSICAL FIRST ―1962
     カウント・ベイシー・オーケストラ
     ニール・ヘフティ/アレンジ・指揮
 
     2013年/CD/4枚組/(ジャズ)ヴォーカル/REGJD/輸入/中古
          <★★★~★★★☆>

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この第一集から何年たちましたかね。
第一集にはしんみり系の男の哀愁ふうなアルバムがいくつも含まれて8枚分、
CDにして4枚。なんでかそのしんみり系がよくて、満足したんでした。
第二集は、しんみり系はやや少な目。テンポのあるものか明るいものが多い。
アルバムはなんと9枚分。
続けざまじゃさすがに食傷・・・時々がいいみたいでした。それと、本来は
ジャズバンドをバックに、というのがこのころの本領なんでしょうが、ワタ
シには、ストリングズ付きが、それも臆面もなくベターっと付いている(5・
7・8など)のがよかったなぁ、このごろのワタシの傾向なのかもしれない。
 
昔聞きかじったことによると、シナトラ一家の誰か、サミー・デイヴィスJr.
だか、ディーン・マーチンだか忘れましたが、シナトラがいったいいつ練習
して覚えていたんだか、全くわからない、そんなところを見たこともないと
喋っていたとか。この4枚組だって、61年から62年かけてのアルバムで、
曲数を勘定したらこれだけで102曲。
張り上げる声が怪しいのもあるけれど、おおむね無難にこなしているから、
練習しないで初見で歌えたわけはない。こっそり練習したんやろね。
 

(1)『いそしぎ』『動く標的』『ポイント・ブランク』『マッシュ』など

の映画の、というと失礼か、ジョニー・マンデルも上手いもんです。

ストリングスは淡く品のいい使い方。まぁこんなところがちょうどいいん
でしょうね。けれど、ワタシにはちょっと物足りない。
もう一人の指揮者がなんとフェリックス・スラトキン! ロシア系。ヴァイオ
ニストでもあったが、なんたってハリウッドボールの指揮者。セミクラに位
置付けされるんで、映画ならわかるが、シナトラのバックなんてのもやった
んやね・・・。ワタシなんかの一つ上の世代のかたには懐かしい名前なんで

しょう。息子はレパートリーが非常に広い著名な指揮者レナード・スラトキ

ン。

(2)緩急をつけた曲の配置がいいんだけれど、アレンジが少し飽きる。スト
リングスなし。リズムセクションがしっかり聞こえるせいか、感覚的にはジ
ャズテイストが(1)よりは濃いかな。
(3)ありふれた感じのバラードから始まる。でもこの感じは好きだな。ストリ
ングズ付きのものの出来は並みだけど。
このアルバムの5曲で切れて次のCDへ・・・
 
という感じでアルバムごとに書いていったんじゃ、こっちだってシンドイから、
通して何度か聴いて印象を書くだけにしましょう。
 
始めに書いたしんみり系は(7)ALL ALONE。ジャズなんかじゃない、単なる
男声ヴォーカル。ゴードン・ジェンキンズのアレンジがいかにも。(なよな
よとした女声が入ったりします) 次のロバート・ファーノンのアレンジ
(8)もこれとちょっと似てました。これはイギリスものなのね。ファーノン
は、シンガーズ・アンリミテッドをバックアップしたものがあって知っていま
すが、古いビッグバンドのようです。(ジャケ写の右上のがそうかもね)
このいささか臭くても、男の哀愁っぽいものと、もっともジャズっぽい最後の
(9)ベイシー/ヘフティとのものを両端に置けば、それ以外のアルバムは、
それらの間に皆収まっちまうと言えばいいのかな。
カウント・ベイシー・オーケストラはなかなか名調子。ヘフティが専属アレン
ジャーだった頃のアルバムは結構好きです。中にフルートの素敵なソロが出て

きたので、みればフランク・ウェスの名がありました。ミルト・ジャクソン

「オパス・デ・ジャズ」でよく聴きました。

ところでこのアルバム(9)、ビッグバンドジャズ&ヴォーカル物として、と

てもいい出来だと思うのですが、これだけ、残念ながらちょっと音が割れる・・・

 

4枚分を一気に聴く、じゃなく書く、ってのは雑ですよね。

(5)のドン・コスタのものなんて、悪くなかったと思う。

でもね、正直言って、ちょっと飽きちゃいました。

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『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』

20210327(了)

映画『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』

  ダニエル・シャイナート監督//マイケル・アボットJr./
                ヴァージニア・ニューコム/アンドレ・ハイナート
  2019年製作/100分/PG12/アメリカ/DVDレンタル
  原題:The Death of Dick Long

  <★★★☆>

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(映画.com)解説から; 田舎町で起こったある殺人事件の顛末を描いた、
スイス・アーミー・マン」のダニエル・シャイナート監督によるダークコ
メディ。売れないバンド仲間のジーク、アール、ディックは、練習と称して
ガレージに集まり、いつものようにバカ騒ぎをしていたが、ある原因によっ
てディックが突然死んでしまう。誰もが知り合いの平穏な小さな田舎町では、
事件の噂がまたたく間に広がり、人びとの話題はディックの死でもちきりに
なる。殺人事件として警察が捜査を進める中、ディック死亡の真相を知るジ
ークとアールは、なぜか彼の死因をひた隠しにし、自分たちの痕跡を揉み消
そうとする・・・
 
邦題に「なぜ」と入れちゃったから、なんでかということは言えないんだけ
れど、男3人がヘタクソなバンド練習のあと、羽目を外して(上の写真)、
それから何が起きたか、何を起こしたか。まさかという内容に、あんぐり。
「そこ」だけとばしただけのオフビートな一見ミステリー。
 
男二人が病院のイマージェンシーの入り口に転がしたディック(リチャード
の愛称なんだ、ロングも含めて・・・下卑た笑いをとるギャグでもあって、
それなりに意味深)が死んでしまった。
そのことで動き始める警察の担当が、太って足の悪いオバアチャン保安官、
一緒に行動する警察官が若くて経験の浅い、こちらは更に太ったネェチャン。
この二人の動きや会話もいたってオフビートでね、このとろとろしたコンビ
が特にヨロシイ。 この二人なんて、解説記事のほうには名前すら載っていな
いんだけどね、なにかやりそうというか、締める役になりそうというかね、
なんだかそんな雰囲気を醸しているのです。
 
それにしても、これをミステリーと言っていいものかどうか。コメディとも
言っていいものかどうか。そこで「ダーク」なんてつけるんだね。
右往左往してディックのことや自分たちの関わりをザルのような粗さで隠し
続ける男二人。そのうちの1人が主役扱い。彼が不景気なうえに、異常なほ
どうじうじしている。自分でもよくわかっているよう。
で、彼らの隠したいことはわかってくるものの、頭を使ってやり遂げようと
いう必死さは感じられない。果たして徹底的に隠し続けなきゃならないもの
かどうか、本当に守るべき秘密なのかどうか、見ているほうにはどんどん怪
しく不可解に思えてくる。となるとこの穴だらけなストーリーやオフビート
感もわかるようでもある。(面白がってくれよって、言われているみたいで
もある。)
スイス・アーミー・マン』のげらげら笑いとは大分違って、まあ一応、シ
ニカルなほうに振れている。でもホントはげらげら笑いさせたかったんじゃ
ないのかしらん。
彼の子ども(女の子)を通じて、秘密がばらけて来る様を見ながら、昔観た
『ファーゴ』を(あらかた忘れましたが)ちらっと思い出しました。

ストラヴィンスキー;交響曲 三題

アンセルメストラヴィンスキー全集 2

                      3-2

  ERNEST ANSERMET EDITION - STRAVINSKY(1882-1971)
●CD 6
 (11)交響曲 ハ調(1939-40) ①-④ 30:38
    <★★★☆>
 (12)3楽章の交響曲(1942-45) ⑤-⑦ 22:31
    <★★★☆>
 (13)管楽のための交響曲(ドビュッシーの追憶に)(1920) ⑧ 9:05

    <★★★★>

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  エルネスト・アンセルメ指揮/スイス・ロマンド管弦楽団
   録音;ジュネーヴ、ヴィクトリア・ホール
   (11)(12)1960年3月、(13)1963年2月
   1994年/CD4枚組/管弦楽/ポリドール/邦盤/(Decca/London)中古

 

●CD 6

(11)交響曲 ハ調

ストラヴィンスキー交響曲というと、この「ハ調」「3楽章」「管楽」以外

に、習作的な「1番」と「詩篇」です。「ハ調」「3楽章」「詩篇」が人気。
特に「詩篇」かなあ。ワタシはそうなんだけど・・・。で(11)「ハ調」。
さて今回、比較・参考にするために引っ張り出したのは、マイケル・ティルソ
ン・トーマス/ロンドン響(アビー・ロード・スタジオ、1991年録音、BMG)。
先に書いておくと、録音はホンワリして鋭くは感じないけれど、独特で良い。
オケは極上、解釈はもはやすっかりクラシック(新古典主義という意味とは関
係ありません)。猛烈にカッコイイ。だから、アンセルメ盤は分が悪くてね、
そんなこと言ってもたいして意味ないのに、もちろん比較そのものだって本意
でもないのに、「言い訳」が必要だなんてつい考えちゃう・・・ 情けない。
 

知りませんでしたが、作曲した1938年というと、娘、妻、母と相次いでなくし

たんだそうで、評論家に言わせれば、それなのに、曲にはそのストレスや感情
面がまるで現れていないのは不思議だ、とのこと。
でもどうでしょう、そう思って聴いてしまうという面はなきにしもあらずだけ
れど、ちょっと慟哭めいた音がいくつか聞こえたように思うんですが、ご本人
は「そんな状況」に拘る気はさらさらないとか、音楽にそんなことを反映させ
るものじゃないなどという言葉をのこしているんだって。基本的スタンスとし
て、音楽に感情的なものを盛り込むことはしない。それはなんだかよくわかり
ますね。感情的な音楽との聴き方の違い、受け止め方の違いが、考えてみると、
独特なんですよ。全体的な感想の代表的な言い方になってしまいました。
名曲だと思います。
 

(12)三楽章の交響曲

これもまだ新古典主義風ですね、「春の祭典」のようなプリミティヴな面がそ

こかしこに現れる。わくわく感があり、ピアノがとても効果的。
アメリカでうけを狙う必要があって作った曲だったそうで、カッコよくできて
いると思います。
M・T・トーマスの演奏だと、あきれるほどスマートにビューティフルに録ら
れているけれど、アンセルメが分が悪いというほどじゃない。英デッカの録音
だって、ここでも十分威力を発揮しているし。すこし重いかな。でもカラフル
さじゃ負けていないんじゃないか。ポンポコ、ドンドコの音楽にはなっていな
いから、聴きやすい人が多いでしょうね。
どっちかというとどうでもいいほうだったこの曲、ワタシは好きになったぜ。
 
(11)も(12)も、生で聴いたことがありません。いずみシンフォニエッタ

大阪あたりで演ってくれないもんか。(次は夏で、ピアソラとツェムリンスキ

ー。その次は来年2月で、坂田直樹(知らない作曲家)やバルトークです)

 

(13)「管楽のための交響曲

ドビュッシーに捧げられたというだけで、ドビュッシーと内容的にはあんまり

関係がないんでしょうねぇ。
  「同質の楽器の異なったグループの中に、短いリタニー(連禱)のような
    具合に繰り広げられる厳粛な儀式」
だそうで、交響曲とは本当は違う。それより、前の2曲より20年も遡るんだ。
「兵士の物語」や「プルチネルラ」と年代的にかわらないころの作曲。
ストラヴィンスキー以外では聴けそうもない管楽アンサンブルのサウンドが実
に魅惑的!

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    (ロバート・クラフトのアルバムのライナーに見つけたもの。

     ストラヴィンスキーの特色がよく捉えられていて、とても

     うまいですねぇ)

                              ~20210311

映画『風の電話』

20210320(了)

映画『風の電話』

 
  監督;諏訪敦彦//モトーラ世里奈/西島秀俊
  音楽;世武裕子
  2020年製作/139分/DVDレンタル
  <★★★☆>

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大槌町でもって、震災や津波で両親と兄弟を亡くした(まだ見つかってい
ない)ハルは、広島県呉市で叔母と生活している。高校3年生。まるで気
の抜けたような高校生活をのろのろと過ごしている中、大槌に行こうと考
えている叔母が倒れたあと、なんで自分だけが残されたのかと激した勢
いで、ヒッチハイクのようなスタイルで、大槌町を目指すことになる。今
ふうに言えばロードムーヴィー。
始めは呉の土砂崩れ被害の現場でのオッサン。場所を移動しつつ、次は父
親なしで子を産もうとしている女とその兄。その次はアホな若者に絡まれ
たところを助けてくれるオッサン。このオッサン(西島)と共に東京や埼
玉を通過するんだが、車中生活者で、震災/原電と深くかかわっている。
トルコ人ヴォランティアを探したり、実家によってみたり、住む人を失い
ハクビシンの糞だらけの自分の家に行ってみたり。ここではハルは家族の
幻影を見る。このオッサン、ついにはハルの大槌町まで長々と付き合って
くれる。
そして復興が進みつつある大槌町。親しかったともだちのお母さんに逢い、
カモメの声を聞きつつ、家のあった場所に行き、「ただいま」を繰り返す。
 
ここで何度目かのもらい泣きですよ。まあこっちだって、これ、観たいじ
ょうそれを忘れないようにするしかないと考えざるを得ないわけですしね。
しんどいんだけれど、しんどがるわけにはいかない。
それにこのハル役のかた、うつろな心から時々激しい悲しみが噴出する、
その泣き方が上手いんでしょうかねえ、抵抗したんですが、そのたびにや
られてしまいました。いや決して茶化しているわけじゃない。どうせこう
いうふうな内容だろうし、わざわざドラマにしたんだろうからとある種覚
悟はしていたんですけどね。(えーー、上手く書けません)
 
1人になったハル。最後に「風の電話」のシーンになります。
とってつけたようなふうに見えなくもないのですが、これがなきゃこの映
画は終れない。タイトルの問題じゃないのです。ハル(実は春香)は、こ
ののちどんな生を生きることになるのかはわからないけれど、とにかく、

ようやく一歩踏み出せたというか、生き続けられる感覚みたいなものに出

会う。

 
音楽はムードを醸すだけのもので、可もなく不可もないと思ったんですが、
ま、ちゃんと聴けていたとは言えないですね。

B・マルサリス/20世紀フランス音楽作品集

20210318(了)

ブランフォード・マルサリス/クリエイション

       ~20世紀フランス音楽作品集

 ①サティ: ジムノペディ第3番(2:23)
 ②ドビュッシー:小さな羊飼い ―「子供の領分」より(2:26)
 ③ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ(6:29)
 ④ミヨー:世界の創造(17:23)
 ⑤フォーレ:ピエ・イェズ ―「レクイエム」より(3:34)
 ⑥ミヨー:ソロカーバ ―「ブラジルの郷愁」より(1:34)
 ⑦-⑨ミヨー:スカラムーシュ ―サクソフォンとオーケストラのための組曲(11:19)
 ⑩ミヨー:コルコヴァード ―「ブラジルの郷愁」より(2:00)
 ⑪ミヨー:スマレー ―「ブラジルの郷愁」より(1:53)
 ⑫-⑭イベール:室内小協奏曲(サクソフォンとオーケストラのための)(14:45)
 ⑮ミヨー:ラランジェイラス ―「ブラジルの郷愁」より(1:02)
 ⑯ドビュッシー:ゴリウォッグのケークウォーク ―「子供の領分」より(3:05)

 

   ブランフォード・マルサリス(サックス)  オルフェウス室内管弦楽団

   録音:2000年3月、ニューヨーク Tot.68:41
   CD/器楽曲&管弦楽/Ⓟⓒ 2001,SME/邦盤/中古
   <★★★△>

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ついつい選んだ理由を書きがちですが、しょうがないですよね・・・
これは名演奏家としてマルサリスを取りあげていたラジオ番組で、⑫-⑭のイ
ベールの室内小協奏曲を聴いて、ちゃんと聴いてみようと思ったから。
ところがCDを見つけたあと、つい一つの感想文を読んでしまった。そこでは
この小協奏曲の演奏だけが出来が悪いものの、そのほかに多く入っているミ
ヨーがすばらしいので「赦せる」というような感じ。そりゃ影響受けました
よ。バカですねぇ。ワタシのことですが。
 
もっといい演奏があるんでしょうが、ワタシにはやっぱりこの曲面白かったで
すねぇ。もともと精神性がどうのこうの、なんていう曲じゃない、曲調の細工
や音色のセンスがすべて。十分だと思ったなぁ。
他ではさすがに多く入っているミヨーで、「ブラジルの郷愁」はたぶん原曲を
知らない。元の形でも聴いてみたくなりました。でもよく知っている「世界の
創造」がサクソフォンのソロを立ててのアレンジを施されているのも、なかな
かいけてました。オリジナルとは大分イメージチェンジしてます。暗さがまる
でない。もっとも、それが原曲にない魅力を発散していたとは言えるかな。
 
あとは、まあ、ミヨー以外は超有名曲ばかり。イベール以外はミヨーも含めて
高級ムード音楽でしょう。失礼な言い方だけどね。オルフェウス管も主張が乏
しい。よく言えばオケの音の録り方が淡くやわらかで美しい。ぐっと力がこも
るとか、抉るような表現はイベール以外にはほとんどない。ムード音楽と書い
てしまう所以。
ジャズで名を成しているマルサリス一家の一人だからって、ブランフォードは
トランペットの弟同様こんなジャンルだって、ホレッ!こんなにうまく吹ける
教養も技術もあるんだよ、ジャズだけやってるわけじゃないんだよ!という幅
の広さをアピールするためのアルバムでしょう。
そんなことで、まなじり決して聴くというようなアルバムじゃあないとは言え
ます。そのほかにも、イベールのレベルが並んでいればまた別で、それならも
う少しシヴィアな批評にも晒されるでしょうが、これではくつろいで楽しめば
よろしいというような小品集として扱われてもしょうがない。
 

とまあ色々嫌味を言うのは簡単です。世評も多分上記のようなものなんじゃな

いか。
とはいえ、認めざるを得ないのは、このサキソフォン(ソプラノとアルト)の
なめらかさ、艶やかさには絶大な魅力がある。本当に美しい。それがすべてだ
と思います。

『屍者の帝国』

20210321(了)

The Empire of Corpses

屍者の帝国』/伊藤計劃×円城塔

  プロローグ (伊藤計劃
  第一部   (円城塔
  第二部   (円城塔
  第三部   (円城塔
  エピローグ  (円城塔
   2012年/SF小説/河出書房新社/単行本/中古
   <★★★△>

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(通販の惹句)
屍者復活の技術が全欧に普及した十九世紀末、医学生ワトソンは大英帝国
諜報員となり、アフガニスタンに潜入。その奥地で彼を待ち受けていた屍者
の国の王カラマーゾフより渾身の依頼を受け、「ヴィクターの手記」と最初
の屍者ザ・ワンを追い求めて世界を駆ける―伊藤計劃の未完の絶筆を円城塔
が完成させた奇蹟の超大作。
 
 
フランケンシュタイン」や「カラマーゾフの兄弟」の話やキャラクターが
出てきて、読むほうはそれに関係あるんだろうかと思ってしまうが、そもそ
も読んでもいないので、わかりゃしない。無教養は今更どうしようもない。
主役のジョン・H・ワトソンは勿論ホームズの友と同じ名前(同じキャラか
も)で、ここでは若く、ノーマルなキャラの医学生で、M(’007のあのMや
ろか、いやいや、かの偉大なる探偵の兄の頭文字か)やヴァン・ヘルシング
教授(って、あのドラキュラ話に出てくる?)に誘われてノホホンとした諜
報員になり、いろんなキャラたちと世界を駆ける。
イギリス発。まずはアフガニスタンへ・・・
なんとなんと、世界(主に欧州)は死者を日常の労働から戦場まで使う世界。
何らかの物質やなにかで、死者が生者の指示を受けて動く生きた死者、つま
り「屍者」として、さながら奴隷のように、あるいはロボットのように、そ
してもちろん今風に言えばAIのように・・・ でもそれは違うのね。コン
ピューターなんぞまだできていない19世紀末のお話だから。
であるものの実は、それっぽいもの、昔考えられた計算機を複雑にしたよ
うなものが出来ていて、けっこう複雑な計算や記憶っぽいものをこなしてい
る世界でもあるという設定。
ただ一人のナチュラルなキャラであるワトソンの「冒険」を秘書的に ~記録
係・記憶係的に~ 助けるのが高級な「屍者」で、名を「フライデー」という。
ロビンソン・クルーソーのあの彼の名なのがふるっている。
ワトソンと行動を共にする面白キャラがいろいろいるのみならず、ほかにも
いろんな名が出て来まっせ。日本にも行くし。
 
アフガニスタンに行く理由は、「屍者」に関してどうも不穏な動きが出てい
て、その情報の発信源がアフガンだから。
本来は人の指示がなければ木偶であるはずの「屍者」。その「屍者」だけの
世界を作ろうともくろんでいるらしいスーパーな「屍者」の存在だとか、生
者を「屍者」にする方法だとか、生者が直で「屍者」になりたがる動きだと
か、まあそうした事例が、意識とはなんぞや、魂とはなんぞや、だとか、世
界はどうなっていくんだろうという根源的な問いかけを一緒に引きずりつつ、
詳らかにさせようという。そりゃあもう「奇蹟の超大作」!?
様々な勢力とのぶつかり合いや軋轢もある。
それが、表現が妙に屁理屈っぽくて固く、且つ観念的なもんだから、ややこ
しくてなかなかすんなり頭に入ってこない。特にはじめはシンドかったです。

 

ちょっとだけ紹介してみますかね、なにを選ぶか迷いますが・・・
スーパー屍者(ザ・ワンという)との問答(終りのほう)の一つ。相手はワ

トソンではありません。

 

  ・・・
  「わたしはもう、自分が人間に造り出されたものだとは思っていない。
 わたしは、ただどこかで生まれたものだ。人間に対する恨みはない。人間
 の造り出すものはわたしを楽しませてくれる。もう少し人間という種には
 生き延びてもらいたい。自らの意思を信じるものとしてな。それではまだ
 充分ではないかね」
  「信用はできん」
  「しかし他に方法はない。君たちが屍者の帝国を望むのなら話は別だが。
 すべての人間が、上書きされた生者のように動き続ける世界、人間の形を
 した機械人形たちの支配者なき夢の世界だ。彼らにも単一化された意識は
 随伴しているが、ただそれだけのことにすぎない。彼らは自分たちが上書
 きされた生者だとさえ気づかんだろう。彼らには他者が自分たちと同じよ
 うに、世界を、色を、音を、形を、ありありと感じているかもしれないと
 いう発想自体が理解できない。君が今感じる青とわたしの感じる青が同じ
 青でありうるかという問いを理解できない。単一のXによって実現される
 意識はその機能を持たないからだ。せめぎ合いのない世界、解釈も、物語
 も必要のない、ただのっぺらと広がる世界、完全な独我論者たちの世界だ。
 全てはただそこにあり、あるだけとなる。あらゆる文化は停滞し、全ての
 佳きものはただの模様へと還る」
  「あんたがそう言っているだけだがな」
  「事態を放置し、確かめてみるつもりはあるかね」
  ・・・

 

「冒険」と書いたけれど、多分これって結局それでいいんじゃないかと思い
ました。やたら高尚そうな議論がポンポン出て来て、中に気の利いた感じに
思える言葉が多いもんだから、つい引っ張られてページの耳を折ったりして
しまったけれど、読み進むうちに、ああそれだとオレのようなもともと教養
の乏しい人間だと元ネタがわからず、気にし始めたら苦行にしかならないと
考え始めて、フーン、フーン、と軽くいなすように読むようにしました。
それでよかったかどうかはわかりませんが、奇妙奇天烈、ゾンビものと関係
ありそうで交わらない、ケッタイなSF小説やったなぁという気持ちで読了出
来ましたヨ。ケッタイついでに言えば、エピローグで、ワトソン博士のいわ
ば動く記憶媒体であったフライデーがアッと驚く存在へ変わっていくことを

ほのめかしています。

 

ハァ・・・ワタシにはこれが精一杯・・・