休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

映画『帰ってきたヒトラー』

20200529(了)
映画『帰ってきたヒトラー

 監督・脚本:ダヴィット・ヴェント//オリヴァー・マスッチ/ファビアン・ブッシュ
 2015年製作/116分/G/ドイツ/原題:Er ist wieder da/DVDレンタル
 <★★★☆>

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映画は、チャーチルの次はヒトラーになりました。

「またヤツがいる」「アイツがまたいるヨ」ぐらいの意やね。

 

<映画.com解説から> ヒトラーが現代によみがえり、モノマネ芸人として大
スターになるというドイツのベストセラー小説を映画化。服装も顔もヒトラ
ーにそっくりの男がリストラされたテレビマンによって見出され、テレビに
出演させられるハメになった。男は戸惑いながらも、カメラの前で堂々と過
激な演説を繰り出し、視聴者はその演説に度肝を抜かれる。かつてのヒトラ
ーを模した完成度の高い芸として人々に認知された男は、モノマネ芸人とし
て人気を博していくが、男の正体は1945年から21世紀にタイムスリップした
ヒトラー本人だった・・・


観るほうは、はじめっから、「本人」であるとわかって話が進む。原題のと
おり。観ている人には自明なんだけれど、映画のキャラクターたちにとって
はわからない。
彼は‘らしい’考え方を臆面もなく振りまき続け、始めこそ時代にそぐわなか
ったり変人扱いされるが、どんどん学習し、順応力を発揮してゆく。
上手いことに、食い込んだのは巨大メディア、つまりテレビ局。
だからというべきか、人気は急騰、情況はどんどんヤバくなってゆくふう。
社会に与える影響のヤバくなるなり方が、おしまいに近づくほどスピード
が上がる。ヒトラー自身は世情が「好機」であることをどうやら捉えてい
る。ニンマリ。余裕さえ見せ始める・・・


カミサン、この映画、どう考えたらいいの?という。
わかっているつもりだけれど、この「ブラック・ジョーク」、説明しづら
い。このヒトラーにとって最もピンとくるのが緑の党であったり、ネオナ
チの連中がひよっこであったり、というようなことはわかりやすいが、ヒ
トラーのような考え方の、喋りのたくみなリーダー候補が出てきた時どう
なんだ?と言っているだけでもない。民衆の側がどれだけ“やわ”になって
いるのか、とか、過去の記憶が賞味期限切れになっていないかどうか、と
かの試験紙みたい。「ジョークなんやけど、皆さん、ホンマに大丈夫でっ
か?」と問う。

でも、こういう設定なんだといっても、よくもこれだけ、ただ今現在の問
題や「タブー」っぽい内容を次から次へと繰り出す映画が、許容され作ら
れたもんだと、ほとんど感心してしまった。現代の、あるいはちょい前の
「政治家ご本人」の映像もいろいろ出て来ました。

エル・タンゴ~ピアソラへのオマージュ2

20200522(了)
エル・タンゴ~ピアソラへのオマージュ2

             /クレーメル
 EL TANGO / GIDON KREMER

アストル・ピアソラ
 ①レピラード                        3:12
 ②パチュリ                         8:13
 ③3001年へのプレリュード(作詞;アンジェラ・タレンツィ)        3:51
レオニード・デシャトニコフ 
 ④マイ・ハピネス(原曲;イエフィム・ローゼンフェルド)          2:19
ピアソラ
 ⑤エル・タンゴ(作詞;ホルヘ・ルイス・ボルヘス)            6:51
ギア・カンチェリ
 ⑥インステッド・オブ・ア・タンゴ               4:15
ピアソラ
 ⑦デカリシモ                         3:38 
フアン・カルロス・コビアン
 ⑧ロス・マレアードス(酔いどれたち)             5:18
ピアソラ
 ⑨チェ・タンゴ・チェ(作詞;ジャン=クロード・カリエール)        3:00
 ⑩3人のためのミロンガ                    6:29
 ⑪ミケランジェロ70                      3:23

  アストル・クァルテット:
   ギドン・クレーメル(vln)、ペル・アルネ・グロルヴィゲン(バンドネオン)、
   ヴァディム・サハロフ(p)、アロイス・ポッシュ(b)
  ゲスト:
   オダイル・アサド(g)、セルジオ・アサド(g)、ミルバ(③⑨ vo.)
   カエターノ・ヴェローゾ(⑤ 語り)

   録音:1996年12月、パリ
   CD/2013年/室内楽//Ⓟ1997&ⓒ2012 Nonesuch//WMJ/邦盤
   <★★★☆>

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帯 「私がピアソラの音楽の価値を信じるのは、ノスタルジアという語法
によって、よりよき世界を示してくれるからだ」―ギドン・クレーメル
わかるような、わからないような、変な言葉。

実際、なんで時折聴きたくなるのかよくはわかりません。やっぱり中南
米系なら大抵耳になじむと思っている(≒思い込んでいる)せいかしら
ん。 猛烈な緊張感で満たされた演奏なので、はじめ、ちょっとしんどい
感じでした。それはそれ、問題あるなぁと思えたものの、次第に慣れて
きました。

①中の緩徐部分は濃厚だが、前後の速いパッセージは軽快で技巧的。
この調子なり音色なりが、本アルバムの代弁をしているよう。
②楽譜だけあって録音されたことがなかったかもしれないという、全体
にはしっとりした曲だが、ぐっと秘めたものがある感じ。眉間の皺・・・
③なんとミルバ! 25年ほども前だからまだバリバリだったんやろね。何
ヶ国語もこなす彼女、ここではイタリア語。ワタシにはしつこすぎて乗
れない曲だったけど、久々のミルバの迫力ある歌唱はちょっとだけ懐か
しかった。繰りかえして聴こうとは思わない。

④アルゼンチンともピアソラとも違い、コンチネンタル・タンゴふう。

短い。

⑤ヴァイオリンの変わったテヌートや擬音ふうなの弾き方以外はピンと
来ないが、語りが入ってきて、なんとブラジルの大立者カエターノ・ヴ
ェローゾが語る。ただ、これがスペイン語。出来るのだろうがあまり迫
力は感じない。解説だと発音がポルトガル訛りだと指摘している。ボル
ヘスの詞といっても、ワタシにゃ別に霊験あらたかでもなんでもない。

⑥あの現代音楽のカンチェリ(1935- グルジア生まれ)の作品とのこと。
さすがに新しい感覚。分断されるリズム・・・ なかなかどうして面白

かった。

バンドネオンがリードする滑らかな曲で、ちょっと地味だけれど、い
い感じです。

⑧ヴァイオリンとバンドネオンのみ。ピアソラの影響を受けた作曲家の
作品だそうで、1922年。当時はこのセンスに時代が追い付かず、ずっと
のちに評価された曲らしい。ピアソラの影響を受けたというのはうなず

ける。

⑨ミルバの発音(フランス語!)が意識的なのか、オーバーな感じで独
特。ピアソラがミルバとのショーのために書いたそうな。曲自体は軽快。
⑩アサド兄弟のギターとヴァイオリンとバンドネオン。ウォン・カーウ
ァイの97年映画『ブエノスアイレス』でも使われたそうな。スローなテ
ンポながら、表現意欲横溢の凝った作品。名作かも。映画でこういうム
ードたっぷりの濃い曲を使うのかなぁ、邪魔にならんのやろか。
⑪これ、知ってます。サキソフォン・クァルテットやそれ以外でも聴い
たことがある。不協和音をぶつけるように使う。テンポが速いので、ま
あ最後の曲としてうまく嵌っているよう。

 

⑧⑩⑪あたりがよかった。
ちょっと点数辛いのは、ミルバの唄やヴェローゾの語りが、どちらかと
いうと苦手、回数聴けないから。
第3作目はどうしたものか。
これの第一作目、引っ張り出してみよう。

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またカラヴァッジョ展のこと、人種差別のこと

一昨日の新聞から・・・

今年の始めの「カラヴァッジョ展」のこと、再び。

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今年2月に、あべのハルカス美術館で「カラヴァッジョ展」観に行きました。
その際、入場する客一人一人に、係員が、見せることができなくなった肝心
の作品(2枚)について、丁寧に申し訳ない旨の断りを伝えていたんでした。
即思い出しました。十分の二が観られへんのやから、いかにも大きかったわ
けなんやが・・・

こんな風に悔しい思いをされた方がちゃんといたはったんやね。いや、いて
て当たり前やけど、こっちにゃあ見えてなかった。こないな記事ででも読む
ことができるとできないじゃ大違い。
確かにあった胸のつかえが、少しおりた気ぃがしたのでした。

いまどき天声人語じゃ流行りませんけどね。
先日のミネアポリスでの痛ましい事件について、書かれている。
人種差別のことなど、とにかくいろいろ。
決まり文句的な、警句的な、あるいは箴言めいた文言がぞろっと並んでいる。

 降り積もった地層 とか ほこりのようなもの とか・・・ 
その欲張った感じがなぜか面白くて・・・
だからどうなんだと言われても、言えてるという以上の意味などありません。

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映画『ウィンストン・チャーチル』

20200522(了)
映画『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』
  ジョー・ライト監督//ゲイリー・オールドマン/クリステン・スコット・
           トーマス/リリー・ジェイムズ/スティーヴン・ディレイン
  音楽:ダリオ・マリアネッリ
  2017年製作/125分/G/英/原題:Darkest Hour/DVDレンタル
  <★★★★>

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これにはストーリーみたいなものはいらないですね。
チェンバレンの内閣のあと、多くから嫌われていたのに、へんな選択肢と
してドタバタと首相に就任。しかしドイツの攻勢に、調停に乗るか、あく
まで抗戦かで揺れる英国の政治の特別な状況下にあって、弁が立つだけで
はいかんともしがたい事態に悩む首相・・・ そして徹底抗戦に舵を切る
までの色々な葛藤や状況を描きます。

中では、ダンケルクの救出を挟むような形で、調停に持ち込んで何とか生
き延びようとする勢力の思惑や、君主との話し合い、市井の人びととのコ
ミュニケーションなどが描かれ、それぞれけっこう盛り上がります。
映画の最後も大いに盛り上がって終わるものの、そこから英国が耐えきる
まで5年もかかる。
ロンドンの大空襲だってまだ先のこと。
第2次世界大戦のほんの端緒という段階を描いています。
あまりにも有名な話だから、興味は、事実よりは描き方。

議会の状況も上手く描かれていたと思うなぁ。傍聴人もいました。
オールドマンの演技と彼に施された辻一弘の特殊メイキャップに負うとこ
ろが大きいのはもちろんですが、それも含めて、映画の成功(していると
思います)はチャーチルの人となりに焦点を当てた企画の勝利なんでしょ
う。原題とはズレた印象ということになります。でも、面白かったです。
語弊があるのを承知で言うなら、わかりやすく、「楽しかった」。

 

この映画を観てみるきっかけの最大の理由は、音楽でした。

(まあ、変な理由であることは十分承知しているつもりです)
たいへん褒めたものを読んだのです。
でも、別に取り出して聴くほどだったかなぁ。ピアノ協奏曲風なつくりで、
ワタシの好みからは外れていた気がする。どうしよう・・・と、ここから
はワタシの悩みどころ。高いようなら無論手は出しません。安くなるまで、

興味が尽きないようなら・・・

バルガス=リョサ/楽園への道

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20200516(了)
バルガス=リョサ/楽園への道
Mario Vargas Liosa/EL PARAÍSO EN LA OTRA ESQUINA
                         田村さと子(訳)
1、オーセールにおけるフローラ             ―1844年4月
2、死霊が娘を見ている                 ―マタイエア、1892年4月
3、私生児、そして逃亡者               ―ディジョン、1844年4月
4、神秘の水                   ―マタイエア、1893年2月
5、シャルル・フーリエの影             ―リヨン、1844年5~6月
6、ジャワ女、アンナ               ―パリ、1893年10月
7、ペルーからの知らせ       ―ロアンヌおよびサンテティエンヌ、1844年6月
8、アリーヌ・ゴーギャンの肖像          ―プナアウイア、1897年5月
9、航海                     ―アヴィニョン、1844年7月
10、ネヴァーモア               ―プナアウイア、1897年5月
11、アレキーバ                 ―マルセイユ、1844年7月
12、われわれは何者か             ―プナアウイア、1898年5月
13、修道女グティエレス                ―トゥーロン、1844年8月
14、天使との戦い                ―.パペエテ、1901年9月
15、カンガージョの戦闘              ―ニーム、1844年8月
16、愉しみの家              ―アトゥオナ、ヒヴァ・オア島、1902年7月
17、世界を変える言葉               ―モンペリエ、1844年8月
18、遅まきの道楽                 ―アトゥオナ、1902年12月
19、怪物都市            ―ベジエおよびカルカソンヌ、1844年8~9月
20、ヒヴァ・オアの呪術師         ―アトゥオナ、ヒヴァ・オア島、1903年3月
21、最後の戦い                ―ボルドー、1844年11月
22、薔薇色の馬           ―アトゥオナ、ヒヴァ・オア島、1903年5月

  解説
  年譜・主要著作リスト

  2008年/小説/河出書房新社/池澤夏樹=個人編集 世界文学全集/ⓒ2003
  <★★★△>

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すごく単純な発想で、ゴッホゴーギャンのことを、伝記じゃなくて、小説
で読んでみようと思ったのがきっかけです。これは本当です。
それでリョサかよ!といわれても答えようがない。この本は古本屋で気まぐ
れで買い込み、ずーっとホッタラカシだっただけなんですけどね。

1800年代半ば近くに、労働運動や女性解放に向かっていくフローラとい
う40過ぎの女と、タヒチに渡って志なんぞどこへやら、腑抜けた感じの画家
に成り下がっている(かのような)ポール・ゴーギャン・・・
交互に語られてゆくんで、いったいどないな接点があるんや、と思いながら
読み進んでいきました。奇数章がフローラ、偶数章がゴーギャン。「対位法」
というそうな。これって音楽でも使う言葉。
寝る前に時々一章づつ・・・

一時期(8-9ヶ月ほど)一緒にいたゴッホは、ゴーギャンからはまったくの
キ印だったことになってる。付き合った女が完全にぶっ飛んでた!みたいな。
ま、、、そんなイメージではありますね、もともと。もっとも、この本でだ
って十分に「どっちもどっち」じゃないかと分かったに過ぎない・・・
それでもやっぱり、ワタクシメの興味の対象は「その辺」にあったわけで、
「狂ったオランダ人」とのいきさつがところどころでほんの一言づつ出てく
るのに、けっこう反応しました。 もともとの知識がないので、その感じが
「歴史的事実」から匂うものをリョサが創作的に描き出したのかどうかはよ
くわからない。でも、ワタシには、「そんな感じ」だったんだなということ
でいい・・・。第16章「愉しみの家」にたっぷり書いて(代弁して)ありま

した。

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さて、フローラというのはゴーギャンの祖母。リョサはそもそもがこのフロ
ーラ・トリスタンを書こうとして、あとでゴーギャンも入れようかと考えた
らしい。フローラは伝記的に振り返りはいろいろとあるけれど、1844年が中
心。彼女が活躍したのは、広くヨーロッパと、もう一つ、母国ペルー。男の
経験が悪く、その反動として女性の解放という社会活動の方向に振れて突っ
走る。
でもとにかく、こんな時代に女性運動に身をささげる彼女を描く表現の細や
かさはゴーギャンとはかなり違っていて、危なっかしくも、密度が非常に濃
かった。
彼女は活動が少し実を結びそうな中で、壮絶な客死。
ジタバタした死なんだけれど、やはり丁寧に丁寧に描かれた感じでしたね。
ゴーギャンとほとんど同じ分量の文章で描かれるんですが、ワタシは結局
ゴーギャンのほうに注意が向いていたまんまだったか気がします。

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       (ゴーギャン 1893-94頃)

一方、ゴーギャンは20台の後半に入ってしばらくして、証券マンとしての
将来を棒に振った。突然貧乏絵かきになってから18年後の、1892年から死
1903年までの11年間ほどが描かれる。40代半ばから50代半ば。
祖母の祖国ペルーにも縁があって、二人のつながりにはこれがかなり大切
とある。(いやむしろペルー人たる作者にとって、かな) 金のためにフ
ランスへ戻ることもあるんだが、タヒチの女の子(複数)を妻のようなも
のにするいきさつなんかがこまごま語られたりしても、時々頑張ってみる
絵以外は、ほとんど生活の体をなさずだらしない。
パリの知り合いにまかせている絵が売れたら金が送られてくるんだが、そ
れがごくまれなのでみじめにじり貧、常に窮乏している。その貧乏具合が
どうしても印象に残るし、ああそういやゴーギャンて、確かそうだったよ
な、なんて、ちょっと思い出したりもしました。
黒いへんな帽子、どんよりした面構え、高いが曲がった鼻、たぶんかなり
大柄(?)・・・


狂ったオランダ人が自殺した後で起こったようなこと(異常に評価が上が
った!)が、自分が死んだ後に起きるものだろうか、と考えたりする。
「口にするのも憚られる病」という言い方でしか出てこない病のこともし
ょっちゅう出てきて、そのことは悔いている。梅毒のようなものだろうか。
一気に死のうとするも死ねない。でも途中からは明らかに死が遠くないこ
とを思わせる。ともあれ、高潔とは言い難く、かといって俗物という感じ
でもない。へんてこりんな(独特な)色の絵についてだけは割合真摯。
このタヒチはフランス人中心の入植地。ヨーロッパ的な価値観は持ち込ま
れているみたいなんだけれど、ご本人の価値観はまあはっきり言えばぐち
ゃぐちゃ、守っているのはわずかばかりの自尊心のみ。
タヒチから更に別の遠い島へ渡り、奇妙な友人たちに囲まれた環境で、く
だらない裁判で係争する中、視力もなくし、画家としての生命を失うと同
時に、本来の無頼のような生も返上する。でも、自分がもう死んでいるこ
とがわからないような(!)穏やかな死。


作者の筆のスタンスが変わっている。どちらに対しても、ストーリーを進
めた後は、それぞれに確認するように優しく語りかけ、話をまとめて行く
というスタイル。これが始終で、この作品の大きな特徴。
非常に独特で、読む側の背中を押し続けてはくれる。まあ作者の解釈的な
ものの表れでもあるんだろうけれど、愛情も感じました。
もっとも、フローラとゴーギャンの血の繋がり以外の繋がりのようなもの
はほとんど感じさせてくれずじまい。
フローラの死の4年後にゴーギャンが生まれているのだから、しょうがない
っちゃないんだけれど、並列する物語なんだもの、そのことは物足りなか
ったですね。

始めの3-4段で感想文は実質終わってますので、ここまで読んでもらった
としたら、こんなまとまっていないものを、誠に申し訳ないです。
ま、一応、ゴッホとの関係のイメージ(もちろんリョサのイメージ)につ
いちゃあ、少しわかった気がしたし、ゴーギャンタヒチって、こういう
感じだったんだ、こんなふうに楽園への道が楽なものではなかったんだと
いことについては、ある程度わかった気になったので、納得の読書でした。
二人の独特の手法に繋がる物事は結局よくわからなかった、という点は、
少なからず残念ですが、そんなもん、分かりっこないのかも。

 


リョサは、ノーベル文学賞の受賞者であることはうっすら記憶にあっても、
時の大統領選挙であのフジモリに負けたかただったなんてことはとうに忘
れてしまっていました。


近所のスーパー(イオン)の3階に、胸に有名画家の様々の知られた絵を
きれいにプリントしたTシャツが、父の日用にどうぞ、という感じで並べ
てありました。これから何か読もうという気になっているゴッホの自画像
は悪くなかったのですが、フェルメールの一枚が気に入りましたね。「真
珠の耳飾の少女」より、「牛乳を注ぐ女」のほう。誰もプレゼントなんか
してくれないんだから、自分で買うしかないな、なんて一瞬考えたんです
が、買わずに帰ってきてしまいました・・・多分それを着て外へ出る勇気
がない・・・ならば着る機会がないではないか!
ゴーギャンの絵はなかったみたいでした。カラヴァッジョがあればなぁ。

 (実は後日結局買ってしまいました、フェルメール


大阪の‘緊急事態’が解除、あべのハルカスの展望台が営業再開などとニュー
スでやってました。もっとも、中の各階が営業再開しても、あべのハルカ
ス美術館で4月末から予定されていた「安野光雅展」は中止が決まったま
んまでした。安野画伯、1926年生まれですから、もうお元気というわ
けでもないのでしょうな。
京都の丹後のほうにも美術館があるんですってね、最近知りました。
安藤忠雄さんの設計によるものなんで、ワタシはあまり好きではないので
すが、、、いつか行ってみたいと思います。

グラズノフ:管弦楽曲全集 第6集

20200515(了)
グラズノフ(1865-1936):管弦楽曲全集 第6集

 ①序曲「謝肉祭」 ヘ長調 Op. 45     10:29
 ②春 Op. 34               13:44
 ③演奏会用ワルツ第1番 Op. 47       9:05
 ④演奏会用ワルツ第2番 Op. 51       8:38
 サロメ Op. 90(オスカー・ワイルドの劇のための音楽)
  ⑤序奏                  9:02
  ⑥踊り                  8:41

   イゴール・ゴロフスチン指揮/モスクワ交響楽団
   録音:1996年2月/モスクワ/モスフィルム・スタジオ Tot.60:01
   CD/1998年/管弦楽曲/Ⓟ&ⓒ Naxos/輸入/中古
   <★★★☆>

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〈帯紹介文〉  チャイコフスキーの第4交響曲の出来の悪い弟のような序曲
「謝肉祭」に一笑いした後、すこぶる美しい「春」が始まります。油断して
いるとディーリアスの作品と見まごうばかりのこの曲は、グラズノフが「音
の風景画家」として並々ならぬ力量を持っていた証しです。続く2曲の演奏会
用ワルツは優雅そのもの。旋律の美しさもとびきりでグラズノフの人気作と
なっています。最後はR.シュトラウスでおなじみの「サロメ」。作曲はグラ
ズノフの方が後になりますが、あのストリップ音楽をどう書いたか、両者の
聴き比べは一興です。

 

帯の紹介文にしては笑える。

①「謝肉祭」; グラズノフは「チャイコフスキー命」って感じだからね、チャ
イコフスキーくさいのはともかく、4番の出来損ないとは思わないなぁ。にぎに
ぎしく祝祭的。とはいえ魅力たっぷりというわけでもなかった。

②「春」;他の演奏者による交響曲全集のフィルアップで聴きました。なるほ
どね、ディーリアスかぁ。『春を告げるカッコウ』。上記のチャイコフスキー
の4番よりはよほど近いかもしれないけれど・・・でも、いかにも田園風景の感
じではあるし、イギリスっぽさ、あるもんね。たとえばホルストの『惑星』の
中の音色にとても似たようなところがあったりもしたし。とにかくたいそう美
しい。それだけは確か。
一つ言わせていただくなら、ワーグナー(も)匂わない?(と書くと、やはり
サロメ」がどう聴こえるか、ってことになるなぁ)

③「ワルツ第1番」;曲としては『四季』というのがもっとも有名なんじゃな
いかと思いますが、メロディとしてはグラズノフの中でも『四季』と双璧かも
しれないですね。ほんわりロマンティックで、名曲だと思う。
いつの頃かは忘れましたが、NHK-FMのクラシックの音楽番組のテーマ音楽が

あるはずです。ただいま現在じゃあない・・・

④「ワルツ第2番」;こっちはウィンナ・ワルツを連想しました。それも、バ
レエ付きで観るウィーンのニュー・イヤー・コンサートやね。③ほど覚えやす
くはないものの、これはこれでいい雰囲気。
バレエ付きで観るなんて書いたけれど、まあどう聴いても、もろバレエ。

⑤⑥のサロメ
かのリヒャルト・シュトラウスサロメと比べてみろ、一興だ、などとそその
かす帯の惹句は良いと思います。
二人はなんと生年が同じ(!)ながら、グラズノフはチャイコクスキーのロマ
ン派からは出ず、歌劇には向かわずに実に様々な編成の曲を、まるでロマン派
の総まとめみたいに書き残した。(新音楽、例えばドビュッシーやストラヴィ
ンスキーなどを、何度も何度も聴き、スコアを見、理解しようとしたという点

は立派だと思う。)

一方のR・シュトラウスのほうは、ワーグナーから出て後期ロマン派という位
置づけの歌劇や交響詩マーラーやツェムリンスキ―とはまた違った世界観の
ユダヤ系が匂わないドイツ音楽を究め、現代のさまざまな潮流の一つのベース
になった。オペラもスゴイが、なんたってオーケストレーションの見事さは、
これが「クラシック」の最後って感じ。そして、映画音楽にもろに繋がりまし
た。ま、その違いです。けっこうたいへんな違い・・・
作曲技法の問題か感性の問題か、なんて言っても始まらない。
非常にたくさんの曲想がてんこ盛りの⑤はドラマチックな交響詩、それをエ
スニック風味が強いバレエにしたのが⑥でしょうか。ともにとても聴き映え
がします。目いっぱいがんばってます、ホントです。一瞬ハッとする音色だっ
ていろいろあります。が、やっぱり現代人には、ストリップのエロっぽさや
生首の凄惨さは連想しにくい。
もっとも、演奏会にはちょくちょく上るべき作品だとは思いました。絶対受
けると思う。むしろ「シェヘラザード」と並べたほうが面白いんじゃないか。

 

このCD、嬉しや、①以外は当たりです。

ただし・・・

②で書いた‘他の演奏者’(スヴェトラーノフ/ロシア国立SO.)の録音が、アンサンブルは
ともかくとして、長い残響でワンワンうるさいぐらいに鳴るのに対して、こ
の一連のNAXOS盤はこれまで聴いた大半が、演奏レベルはそんなに変わらな
いんだけれど、音がバーンと前に出てこず、引っ込んだ感じで、いかにも地
味、小音量だとまるで冴えない。車中などでヴォリュームを上げてやると、
だいぶんマシになる(≒鳴る)。演奏はけっしてスヴェトラーノフ盤より劣っ
ているというほどでもないんだけどな・・・
でも、やっぱり録音については気になりました。 

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(これはリヒャルト・シュトラウスのオペラ版初演のポスター、だそうです。

 特にアップした意味はありません。髭文字、読めないし)

死んだ桜の木

カミキリの仕業だと思います

昨日に続いて散歩のこと。

ある公園の階段の途中にある桜の木一本に気づいた。

かなりの量の木くず。

こりゃひどい。

クビアカでなく他のカミキリである可能性もあるだらうね、カミキリはもと

もと樹の大敵。

大きくない桜、去年は花が咲いていた気がする。でももうこの春には死んで

しまっていたようだ。

ほかの桜は若葉でいっぱいなんだが、これには葉っぱがない。

可哀そうに。

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        (無残な根元。手当してもらえなかったんだな)

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           (引いて上を見るとこんな感じ)

さて、昆虫もすでにたくさん見かけました。
蝶はナミアゲハ、名は知らないがクロアゲハ、アオスジアゲハ、2種ほどの
シジミチョウ、モンシロチョウ。
トンボは、今日、オオムギワラトンボ、コシアキトンボ。今日はたまたま池
の周りを歩かなかったのでわからないが、ひょっとするとギンもいたかもネ。
わからないけど。
甲虫系はまだ見かけていない。(花が咲いているのに、観察していないもん
ね。)

セミもまだ。この辺じゃハルゼミは鳴かないから。 しばらく前のテレビの
ニュースじゃあ、関東のほうで確かエゾハルゼミが鳴いていたっけ。鳴き声
が相当違う。5月も終盤に近付いて、夏近し。
緊急事態宣言がいよいよ解けそう。

 

〇補

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これは昨日紹介したもの。ムクドリの営巣場所。中央やや上に一羽の鳥の

姿が見えますが、そこから筒が繋がっています。その筒中に営巣している

のです。撮ってみました。