休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

【新訳】チェーホフ短編集

 
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20161006(了)
【新訳】チェーホフ短編集沼野充義[訳]
       Anton Pavlovich Chekhov(1860-1904)
(女たち)
 
 ①かわいい
    ――「可愛い女」はかわいい?
 ②ジノーチカ
    ――「憎まれ初め」の物語
 ③いたずら
    ――ナッちゃん、すきだよ!あるいは人生が芸術を模倣する
       ことについて
 ④中二階のある家 ある画家の話
    ――ミシュス、君はいつまでもどこか手の届かないところにいる
 
(子供たち(と わんちゃん一匹))
 ⑤おおきなかぶ
    ――累積する不条理
 ⑥ワーニカ
    ――じいちゃんに手紙は届かない
 ⑦牡蠣
    ――未来の世界文学
 ⑧おでこの白い子犬
    ――子供のためのチェーホフ
 
(死について)
 ⑨役人の死
    ――アヴァンギャルドの一歩手前
 ⑩せつない
    ――ロシアの「トスカ」
 ⑪ねむい
    ――残酷な天使
 ⑫ロスチャイルドのバイオリン
    ――民族的偏見の脱構築
 
(愛について)
 ⑬奥さんは子犬を連れて
    ――小犬を連れた奥さん、それは私よ!
あとがき
    2010年/短編小説&エッセイ集/集英社/中古
    <★★★☆>
 
Amazon紹介文から) 今だからこそ読みたいロシア文豪の名作短篇。
”人間を描く天才”チェーホフの短篇13をロシア文学研究者であり名エッ
セイストの沼野充義氏が豊かな言葉を駆使して新しく訳した珠玉の作品
集。個性豊かな登場人物が濃密なドラマを繰り広げる。
・・・ 珠玉の短篇13と、エッセイとして楽しめる充実した解説を収録。 
なにかというと出てくる名前。何十年ぶりかで読んだチェーホフ。初めて
読むのと同じ。
堂々たる古典、なんていう感じじゃなく、いつだって視界の隅っこにある不
幸や奈落、不条理といったもので、確かにねぇ、古びないワ。
まあ、よけいなことは書くだけ恥ずかしいのでナンだけどね、自分としては
新鮮に読んだのだから、いいとしましょう。
きっかけはレイモンド・カーヴァーのアラカルト的な短編集「カーヴァーズ・
ダズン」。村上春樹はカーヴァーの大半を翻訳していて、その中から編集
した企画もの。その解説にほだされた。ほだされた、はないか。実際は
「なんか、おもしろいかも」ぐらいのこと。
ワタシとしては完全に古典のジャンルなんで、けっこう珍しい読書。
Amazonへの書き込みには、この訳に相当抵抗を感じたという記述もあっ
たけれど、ワタシには違和感なし。
むしろ、訳者が中で‘こう考えてこういう訳にした’としっかり説明している
通りだし、狙いは大当たりなんじゃないか。ただいま現在の感覚にぴった
り。それがそもそも違っている、というなら、原文で読みなさいとでもいうし
かない。翻訳論てのはなかなか難しいとは思うが、ともかく、昔のものと
いう感覚をまるで覚えなかった。内容込で!今そのもの。この訳の魅力
は絶大。‘意味’あると思うなぁ。人間の営みや感性なんて、数百年レベ
ルでは間違いなくほとんど変わりゃしないんだってこと。
多くは短編というよりも短いものが多く、‘ショートショート’のイメージに近
い。しかし、紡がれるお話のいろんな意味でのヒネクレ具合――というか、
不条理と言っていい話の進み具合や結末――は、ヘンテコリンな味わい
のものが多く、一筋縄ではない。なにもカーヴァーだけに好かれたわけで
はないだろうが、今や人気のカーヴァーだからね。で、彼が嵌ったというな
らわかる気がする。もちろん後世の多くの人々を嵌らせ続けているであろ
うことも分かる気がする。この短編の内容では概して世知辛くて(死語じ
ゃないよな)、なんか子供に読ませるのは抵抗あるけど。
(教養のなさは、今更恥ずかしがってもしょうがない。ジジイになったって
知らないものだらけなのは変わりゃしない。まだ体験した尻から忘れてい
くほどのボケは来ていないと思いたい。)
ほとんどが強いインパクトの作品だけれど、特にというなら①③⑥⑪あた
りか。