休みには中古屋のはしごⅢ

基本音楽鑑賞のつもり。ほかに映画・本・日記的なもの・ペットなど。

藤倉 大/「どうしてこうなっちゃったか」

20251103(読了)

Dai Fujikura

/ Too Early for Autobiography

 2022年1月/幻冬舎/単行本/中古
 (2019/5~2021/7「小説幻冬」『どうしてこうなっちゃったか 早すぎる自伝』
   として連載)
  <★★★★△>

 

なんで帯が恩田陸さんなのかと思ったら、書いてある。映画『蜜蜂と遠雷』の中
の曲を藤倉大(1977~)が書いたという縁があったんやね。
この帯でこの本の解説として充分な気がするが、そうもいかないと思い直して適
当にメモをつないでみました。大量の各章のメモはほぼ無視・・・
 
去年コンサートで聴いた三味線の協奏曲は面白くなかったのですよ・・・
背表紙の色が完全に褪めていて、タダ同然。久々に中古屋に行った時手に入れた
もの。いずみシンフォニエッタ大阪の音楽監督になられた引っ張りだこの作曲家。
7月にはコンサートに顔ぐらい出されるのかと思っていたところ、自分の方が熱中
症でダウン。前音楽監督の追悼プログラムでした。残念でした。来年2月のコンサ
ートには行けますように・・・ 藤倉さんが来られるかどうかは知りません。
CDは去年だったか1枚だけ聴いたんでしたが、まあそんな関係で目についた本。
衝動買いしていたのを、手にとってみました。あきれるしかない方!!! 普通の日本
人とは思えない。40台半ばあたりまでの驚きの自叙伝。
おそらく、編集者が大変だったんじゃないかと想像します。どうでもいいことで
すけどね。以下、面白い目次・・・

小さい時も特異な子だったんだけど、要するにこの本、16歳やそこらで単身英国
にわたり、トリニティ(音楽)大学に入学してから、さらに二つの大学院を経て、
作曲家として有名になって行ったことを書いているが、ほんまにこの方、苦労し
はったんやろかって感じ。少しは書いてはるけどね。するっと。
音楽の才能のみならず、周りの人を嫌がられずに巻き込んで、問題という問題を
なんとか乗り越えてしまう特殊な才能に恵まれているとしか言いようがない。
早々に、師も友人も(実力者も有名人も多いが、そんなこと気にするのは始めだ
け、即突進)伴侶も得、人もうらやむ人気までも得てしまっている。
 
文才と言っていいのかどうかわからないんだけれど、結局そんな風であったと読
むしかない文章(磊落な、まるで自慢)による、おっかしな本でした。
そうですねぇ、現代音楽の作曲家なんですから、出てきそうな楽理や技術や演奏
にもとめられるもの、あるいは作曲中の苦労のことなどは、極力書かないで済ま
せて?います。だからいわば一面的だと思う。
それゆえ、かえって妬む人も怒り出す人もいるかもしれない。ワタシは始めにも
書きましたが、ずっとあきれっぱなしでしたね。「イギリス」という国のことの
ついちゃあ、あきれることもなく、ものすごく面白かった(ヘェー!の感じ)で
すけどね。要は人となり。ほんまかいな、こんな人、いてはるんや・・・ はじ
めボンボンと書いて、しまいにはそうではないんだとは分かったものの、あなが
ち間違ってはいないのかもしれない(あきれた人だ)と思い直しました。
 
現代音楽作曲家は、要するに儲からない、いくら忙しくしていても、生活環境向
上には一向に結びつかない、貧乏だという。
イギリスの階級意識はいまだに残る。上流階級の人(先生がそうだったりする)
には生活費を稼ぐなどということは、なかなか分かってもらえないことがある。
それが、アルバイトをしながら食いつないでいるうちに、徐々に演奏機会が増え、
徐々にというよりは早々に人脈が広がり、忙しい人間になってゆくのが、まるで
自慢話のように語られるようになってきます。
 
しかし、全体の三分の二あたりになると、どこが貧乏やねん!というくらい、目
の回るような忙しさ。有名人を含んだ多くの関係者とのコンタクト、初演や受賞
の打ち合わせなどに追われ、よくもまあちゃんとしたものが作曲できるもんやと、
やはりあきれざるを得ない。
 
英国の学校や(現代)音楽事情、ヨーロッパを中心にした現代音楽に関係した高
名な人名や団体名がぞろぞろ出てきます。
その最たる人物がブーレーズで、彼との色々にも驚いたけれど、例えばガキのこ
とから坂本龍一デヴィッド・シルヴィアンのファンで、彼らとの現実の結びつ
きが濃くなるあたりは、元々の守備範囲の広さがあったからだと合点が行く。イ
ギリス在住ならでは。映画『レヴェナント 蘇りし者』(ディカプリオ)の音楽につい
て坂本に喋ったら、それがサントラ盤の惹句になっちゃったんだって!
 
本当は大変だったはずなのに、そうは思わせない(いや実際そうは思っておられ
ないに違いない)。それはもう間違いなく、目次の最初の「最初から作曲家だっ
た」というやつ。間違いなくこれがすべてやね。
「作曲小僧」から大人の「作曲バカ」になっただけ。
作曲のための苦労は「苦労じゃない」。(犬にとって散歩散歩は単なる散歩じゃな
い、というのと同じような構造の文章ですかね)
大阪の摂津発・・・イギリスを根城に、世界へ、引く手あまたの作曲家に。
ハイハイ、わかりましたヨ。

下は、来年2月の、いずみシンフォニエッタ大阪のチラシ。この現代もの専門のオ
ケの責任者みたいなものになられたんだから、会場に来られるかもしれんね。
ともあれ、どうか、今度は行けますように。

 <いずみシンフォニエッタ大阪 第2章、始動!>
  音楽監督として最初のプログラムは、僕にとっても「いずみシンフォニエッ
  タ大阪とは何かを改めて考える機会になりました。革新的で、遊び心があっ
  て、世界とつながっていて、でも関西にしっかり根ざしている。そんな想い
  をこめて選んだプログラムです。
  まず、テキスト音楽という形式で音楽表現の地平を広げたオリヴェロスの 
   《The  Well and The Gentle》。そしてISOにとって大切な存在である川島素
  晴さんの作品。さらに、これから毎年必ず取り上げていきたいと考えている
  西村朗さんの音楽。対照的な世界観をもつフェルドマンの作品も加わります。
  加えて、まだ見ぬ才能との出会いを求めて実施した公募作品、そして僕自身
  の箏協奏曲を、大阪在住の箏奏者・片岡リサさんの演奏でお届けします。
  多様な響きが交差するこのコンサートを、どうぞお楽しみに。
            藤倉大(いずみシンフォニエッタ大阪音楽監督/作曲家)